表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

第二話

僕は今、一種の不思議な高揚感に包まれていた。

——ウィンザード魔法学校。

第一志望に落ち、行きたくもない私立を回避し、なんかよくわからないが魔法学校なるものに入学が決まった。

冷静に考えると、ツッコミどころしかない。

魔法はない。ないはずなのに、魔法学校?

しかし、もう決まってしまった。

そして、後日。

学校からの正式な案内が届いた。

その中には、**「入学準備品を揃えるための特別な案内人が迎えに行く」**と書かれていた。

……うん、特別な案内人。

それだけでもう、色々と察するべきだったのかもしれない。

謎の男、現る

入学準備の日。

僕は自宅で待機していた。

そして約束の時間、ピンポーンとインターホンが鳴る。

「はーい」

ドアを開けると——そこにいたのは、全身黒尽くめのローブをまとい、杖を片手に持った妙な男だった。

「……君が、新入生の○○くんだね?」

すげえ。もう出オチ感がすごい。

というか、街中でその格好してるの?

通報されないの?

「えっと……あなたは?」

「私は、ウィンザード魔法学校の入学準備案内人だ。私のことは『マーリン』と呼んでくれたまえ」

マーリン。

マーリン!?

え、偽名がそれでいいと思ったの!?

「……あ、はい、よろしくお願いします」

「では行こう。これから魔法道具を調達する」

そう言うと、マーリンは大げさな仕草で杖を振る。

バシュッ!!

何か魔法的な現象が起きるのかと思いきや、ただのタクシーが曲がり角から普通に現れた。

「……」

「……乗れ」

うん、魔法使いならもっとこう、馬車とか箒とか用意できなかったの?

そして僕たちは、普通にタクシーに乗り込み、普通に市街地へ向かった。

魔法道具の準備

しばらくして、タクシーが停まった。

降りた先にあったのは、どう見てもただの商店街。

「えっと……マーリンさん、ここって……」

「さあ、着いたぞ!ここがウィンザード魔法学校指定の道具を揃えられる店だ!」

そう言って彼が指を指した先には——

『藤原呉服店』

藤原呉服店。

どう見ても、ただの和服屋だ。

「……いやいや、これ呉服屋ですよね?」

「違う、ここは制服を仕立てる店だ」

「いや、看板が藤原呉服店なんですが……」

「気にするな。ここではウィンザード魔法学校の制服をオーダーメイドできる」

……オーダーメイド!?

いや、公立高校なのに制服オーダーメイドってどういうこと?

そして案内されるがまま、店の中へ入る。

そこにあったのは、和服、和服、和服……

そして、なぜか奥の棚に黒いローブと金刺繍のマントが無造作に積まれていた。

「ほら、これが制服だ」

雑!!!!

「おばあちゃん、この子が新入生だよ」

店の奥から出てきたのは、優しそうなおばあちゃん。

……いや、どう見ても和裁職人だが、魔法学校とどういう関係が?

「あらまあ、今年の子は細身だねえ。ちょっと肩幅を測らせてもらうよ」

まるで当たり前のように採寸が始まる。

いや、普通にプロの技術でサイズを測るのやめてくれない?

なんか本当に制服としての説得力が増してきちゃうんだけど。

「じゃあ、来週取りに来てね」

……とんでもない魔法学校に足を踏み入れてしまった気がする。

次は杖を買いに行く

次に連れて行かれたのは、小さな木工店だった。

「ここで杖を選ぶんだ」

「……いや、これただのDIYショップでは?」

「杖の素材は大事だからな。しっかり選べよ」

いや、確かに木の杖って言われたら木工店なのかもしれないけど……。

「どれでも好きな枝を選んでくれ」

そう言われて見渡すと、どう見ても適当に切られた木の枝がカゴに大量に入っていた。

……。

「いや、これガチの木の枝では?」

「そうだ、何か問題でも?」

「……」

……うん、問題しかないけど、もう考えるのはやめよう。

適当に1本選ぶと、マーリンが頷く。

「よし、それがお前の杖だ」

適当すぎない?????

魔法薬セットも買う

最後に訪れたのは、薬局。

「ここで魔法薬セットを揃えるぞ」

いや、これはただの漢方薬店では???

中に入ると、妙に薬臭い店内と、壁に並ぶ“漢方の効能”ポスター。

「うん、これ絶対漢方だよね」

「君は魔法を信じていないのか?」

いや、信じてる信じてないの問題じゃなくて、これは魔法薬ではなくただの漢方では?

「ほら、これが回復のポーションだ」

そう言って渡されたのは——

乾燥カモミールの袋。

「……」

「あと、この赤い液体は『活力のポーション』だ」

……ただの栄養ドリンクだった。

——これ、完全に農業高校では???

買い物終了、僕は魔法使いになれるのか

こうして、僕は魔法の道具を手に入れた。

——いや、どう考えても普通の道具だろこれ。

だけど、マーリンは誇らしげに言った。

「これでお前も、立派な魔法使いの卵だ」

——ああ、僕は今、とんでもない場所に足を踏み入れてしまった。

次回、入学式。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ