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第一話

第一志望の不合格と、行きたくない私立

僕は今、人生の瀬戸際に立たされていた。

——と言うと少し大げさかもしれないが、当事者としては結構切実な問題だ。

第一志望の高校に落ちた。

そこそこ勉強していたし、いけると思っていたのに、結果は不合格。

試験当日に頭が真っ白になったわけでもなく、手応えはそこそこあったのに、なぜか落ちた。

まぁ、落ちたものは仕方ない。

問題は、次に進学することになるであろう私立高校が最悪の環境だということだ。

あの私立、なんかこう、全体的にヤバい。

まず、学校全体の雰囲気が荒れている。

ヤンキーはヤンキーで「無理に絡んでくるほどでもないが、とにかく数が多い」。

一方で、学力が微妙に高い奴らが妙に捻くれたインテリカーストを築いており、「不良でもないけど付き合いたくない層」も一定数存在する。

まさに玉石混淆。

正直、行きたくない。

しかし、親は「公立に行ってくれ」と言っていたので、ここに入学するとなると、僕の財布どころか家庭の財政にまでダメージが及ぶ。

詰んだ。

「……くそっ、漫画みたいに頭でも抱えてウワーッて叫びたい」

と思った、その時。

プルルルルルル……

家の電話が鳴った。

嫌な予感がする。

いや、家の電話が鳴る時って、大体どうでもいい時か、ものすごく大事な時かのどっちかだ。

そして今この状況で鳴るってことは……どう考えても後者であってほしい。

「もしもし?」

「あ、○○くん? 良かった、今大丈夫?」

中学の先生の声だった。

「大丈夫です。何かありましたか?」

僕は淡々と答えながら、心の中で高速で計算する。

——採点ミスか?

——繰り上げ合格か?

——奇跡の合格通知か!?

しかし、先生の言葉は違った。

「実はね、特別な二次募集の話があって」

「二次募集……?」

何それ、そんなの聞いたことないんだけど。

「話を聞くに、湖のほとりにある立派なホテルを改装した、まるで城のような学校で、完全無料の全寮制の公立高校らしいの」

「……いや、そんな夢みたいな話あるんですか?」

無料!?

寮付きで!?

しかも公立!?!?

どう考えても怪しい。

だが、公立で学費がかからないなら親も文句は言わない。

選択肢としては悪くない。むしろ、願ってもない話だ。

「でもね、その学校……」

先生が、やけに言葉を選びながら続ける。

「ちょっと普通じゃないのよ」

……普通じゃない?

そもそも、普通の学校なら辞退者の穴埋めなんて先生経由で個人的に連絡してこない。

普通じゃない、という言葉の重みが増していく。

「○○くんって、魔法が得意だったよね?」

「…………は?」

思考がフリーズした。

耳を疑うとはこのことだ。

「えっ、先生、魔法ってあの、ハリポタとか指輪物語みたいなやつですか?」

「うん、そういうの」

「いやいやいやいや、魔法とか前提としてない世界なので、それは無いと思います」

「本当に? 一度、よく考えてみて?」

何を???

先生のトーンが急に変わる。

妙に真剣というか……探るような雰囲気だ。

僕は戸惑いながらも、ある可能性に気づく。

——もしかして、これは試されているのか?

土壇場で現れた公立高校入学のチャンス。

そして、唐突に出てきた「魔法」というワード。

これは……。

「……先生、つまりそういう事ですか?」

「そうなの。その高校とは——洞爺公立ウィンザード魔法学校」

「洞爺公立ウィンザード魔法学校……!?」

僕は反射的に繰り返していた。

声に出してみると……うん、もう意味が分からない。

先生は続ける。

「学校の趣旨としては、概ね有名な魔法学校と同様よ」

「……なるほど(いや、なるほどじゃない)」

「ただね、一つ違うのは……本当にどう転んでも魔法が無い現代日本で魔法学校を大真面目にやっているところなの」

「……。」

「その前提が覆るとしたらどうする……?」

先生が、やけに真剣な声色で言った。

……いや、そもそも前提が覆るとかいう話ではない。

現実は、魔法なんか存在しない。

でも。

「……そうですね、僕は魔法が得意かもしれません」

「分かってるじゃない、とりあえず説明をしたいから学校まで来てくれる?」

——こうして僕は、魔法学校へ行くことになった。

帰宅後、冷静になって気づく重大な事実

説明を受けた後、僕は家に帰り、布団に寝転がった。

「……ちょっと待てよ」

先生の勢いに流されて決めてしまったが、冷静に考えるととんでもないことに気づく。

——一般人の僕が、魔法が使えないことを隠して魔法学校に入ることになった件。

わかりやすく言うとこうだ。

「本当にこういう事ってあるんだ?」と、ある種感動してすらいる。

でも、もう決まったことだ。

両親には**「公立で無料」**という情報だけを伝えたら、めちゃくちゃ喜んでいたし、詳細は伏せておいた。

問題ない。

「……よし、私立入学を回避したから、全てヨシ!」

後のことは知らん。

あとは、ただ座して待つのみである。

そして、数日後。

僕の元に、「入学前の準備リスト」が送られてきた——。

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