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 ジンきゅんの帰りを待つ間に焚き火を起こして鍋に油を引き、トマトを炒める。

 トマトの酸味が香って美味しそうだなぁ。


「うーん、いい香り」


 ゆうてわたしは五感がとんでもなく強いので、純人間にはわからんレベルの香りの変化だけども。


「パンがあれば良かったんだけどなー。サイッショの村は物々交換が基本だからちょっと機会がなかったなー」


 ぐつぐつ煮込みはじめると、ガサガサ音がしてきた。ジンきゅんだな。


「ご主人様、香草薬草と、これを獲ってきました!」


 手にしていたのは兎二羽。おお、肉が入るぞやっほい。


「へー、人間は殺せなくても動物は殺せるんだ」


「え、それは……悪い人間なら殺せますっ」


「悪い人間は殺せるのに善悪のない動物は殺せるの? 矛盾してない? 知性がないやつは殺せるってわけ? 悪い人間が命乞いしたら見逃しちゃうのかな?」


「そ、そ、それ、は……うわぁぁぁぁあぁん!」


 あーあー泣いちゃった。せーんせいに言ってやろ。


 まあ、同族に近い生物を殺すのは難しいよね。わずか2000歳しか生きていない龍神族じゃ無理がある。


「なんや人の泣き声がするで。きつね、なんかやらかしたんか」


 ジンきゅんの泣き声に反応したのか、スバルちゃんが起きてきた。


「はぁ? きつねは良い子だし。悪いことしないもん。ね、ジンきゅん」


「あぁんあぁん、ごしゅじんさまがいじめるよぉ」


「めっちゃ言われとるやん。おお、坊主肉獲ってきたのか、偉いぞ」


「ひぐっひぐっ、おねぇさぁーん!」


 スバルの方へ駆け出して泣きつくジンきゅん。

 ずるい、そこの場所は私の物だ。

 なぜだ、なぜ私に懐かん。

 どうしてなのよぉ! ジンきゅん!


 ションボリしつつもさっさと処理しないと内臓臭くなるんで、料理人の式神を呼び出して肉の処理をさせる。


「便利やねえジンちゃん」

「ですねぇスバルお姉さん」


 知らんうちに挨拶し終わってら。


「私が出来ないと式神も出来ないからね、これつまり私も料理上手って事よ、えっへん」


「うちのおっぱいをもみしだいていたようなエロきつねなのにようやるわぁ」

「え、え、え、おっp」

「もむ? 気持ちよいで」


「うちのジンきゅんに不埒な行為を誘わないでください!」


 そんなわけで出来たトマトと兎のスープは、香草が効いていて香り豊か、兎の肉も柔らかくジューシー、酸味のきいたトマトスープがマッチしてとても美味しいものであった。

 兎の肉を焼いてから投入したのがポイントかな。


「ふぅ、食べた食べた。香草が入っているから臭くなく食べられたで。ありがとうな、ジンちゃん」


「えへへでへへ」


「まあうちの弟子は腐っても龍神族だからね! えっへん」


 式神3匹に後片付けをさせたあと、テントに入って3人仲良く寝袋で……眠れない。

 寝袋が2つしかないのだ。


「警戒式神を2匹にして暖房式神でも呼ぶか」


「そういやきつね、うちを助けたような兵士は呼ばんのか? 空調の得意な妖怪とかいるんちゃうか?」


「あれ神将を呼んだり神将から借りてくるからね。屈服している神将やその配下でもそう毎回呼んでいると怒られちゃう、というか拗ねちゃう、というか」


「式神は自分の力だからそういう心配が要らん、と。なかなか難しいんやな」


 だけじゃないけどを動かすってのは大変なんですよ。


 次の日、兎の入っていないトマトスープを飲んで元気を付けてから出発!

 まだスバルはふらふらだけど、歩かないことには前に進めない。

 頑張れ、スバル。


「そういやジンきゅん、なんで竜神剣放ったの?」


「熊がでまして……」


「なるほど理解。でも全力は危なかったね。失神してたもん」


「失神せずとも操れるように修行します!」


 熊のサイズによるけど、私のフル武装式神なら身長六十センチでも槍投げで即死させられるんだけどな、という言葉を飲み込んで歩いて行った。


「お、少し先に休憩所がある。そこで休憩だね。スバルの息がかなりあがってる。トマトスープ作ろう」


「……やっぱりウチを置いていった方がええんとちゃうか」


「そんなことしたら死んじゃいますよ。捨て去るわけには絶対参りません」


 そんなことを言い合いながら休憩所に到着。雨風がしのげる半小屋みたいなところ。

 村と都市の境目にある休憩所だからこんな物でしょう。

 大きいところは普通の家になっているって村の長老が言っていたなあ。


「炭が残っているね。これに火を付けて焚き火にしていこう。ジンきゅん、枝や枯れ草、香草集め頼んだよ。香草はまずくても体力回復に効果があるものにして」


「わかりました!」


「今回は身長150センチの式神を付けるから、熊に遭遇したら式神に任せてね」


 動物の血と熊の臭いがするんだよね。

 2年間狩りしていたから動物の臭いは何となくわかる。

 式神には熊鈴付けたけど、そうすると動物も逃げちゃうからなあ。

 まずはジンきゅんに枝と枯れ草そして香草、次に式神と私で動物、かな。

 肉食わせないとなかなか体力が戻らない。トマトも健康に良いんだけどね。


 まあジンきゅん龍神族だから熊くらいの一撃じゃ死なないんだけどさ。

 ビビっちゃうからね。


 残っている炭に火を(おこ)してもらっていると。


「きつねは異世界ジャンプしたことあるんか?」


「あるよー、五万回は飛んでる。300万年生きてるからね」


「そんなにか!」


 びっくりした顔でそう言う。


「異世界と言っても接触近似多元宇宙のことだからね。異世界ジャンプするところって同じポイントがあるんだよ。行こうと思えば今でも行けるんだー」


「どこにあるん?」


「この世界だとなんていうかわからないけど、基本世界の地球の名前だと……」


 ロッキー山脈とエベレストの頂上。

 マリアナ海溝の最深部。

 ブラジルジャングルの奥地。

 南極大陸の湖の中。

 江戸城もしくは皇居の中。

 イギリスの王冠を被って合い言葉を唱える

 フランスのノートルダム大聖堂の隠し部屋。

 月の裏側のクレーター。

 火星の北極点。


「などなど。他にもかなりあるよ。神話の生物に飛ばしてもらうことも出来る」


「なるほどなあ。それで、元の世界にはまだもどらんのけ?」


「私はいつでもいいんだけど、ジンきゅんが幼すぎてパワーが足りずにランダムジャンプしちゃう。ここで力付けてから飛ぶことになりそうだね」


「なるほどなあ」


 そんなところでジンきゅんが大量に枝と枯れた下草を持ち帰り、私が動物を狩りに行くことになったのである。トマトは置いてきた。


 まあ私が狩りをするといってもね、臭いでどこにいるかわかりますからね。

 ちなみに術式は駄目だ、野生の勘で逃げてしまう。

 式神なら大丈夫なので、ケンタウロス系式神を二体、護衛用の式神を一体召喚。

 しっぽの毛を数本束ね、弓矢と槍にして渡す。


「火薬の銃でもいいんだけど、撃ったら音で逃げちゃうからね。魔導銃は魔法になれてないし。弓で頑張ろう! おー!」


 弓といっても金属製の滑車付き短弓と金属矢なので、破壊力はとんでもねえっす。


「私も弓矢を取り出しておくか。ただの短弓だけど引く力二十トンだぞ」


 長弓だと六十トンを超えます。六十トン耐えられる素材がある基本世界の地球技術すげえ。


 小物はケンタウロス式神に任せて、私は鹿や猪などの大物を狙う。


「ッ!」


 臭いを追って、発見したら頭部にズドン。

 引く力二十トンもあると矢が頭を貫通しすり抜けるので、後部に展開式の丸い板みたいなやつを付けている。

 ついでにそこから電流を発する。

 相手は死ぬ。


 着々と戦果を上げ帰還。

 猪二頭、鹿一頭。

 兎や狐が数匹。

 き、きつね殺さないでくださいガクブル。

 んで、全部空間術式に入れて帰った。



「帰ってきたよー! 猪獲ってきたから今日は猪スープだ! グリルもしよう!」


「わぁ、さすがご主人様! 体力がつきますね!」


 捌かないといけないのだけど、さすがに専門家にやってもらった方が良い。

 というわけで料理長のこっくりさんを呼び出したよ。


「なんで占術系統のこっくりさんが料理長やってるんですか、ご主人様」


「生前狐族の料理長をしていたこっくりさんの邪気を取り除いた。配下になった。というわけよ」


 私から包丁を借り、さぱぱぱっと捌いて内臓を取り出し部位ごとに切り分け、わたしのおきつね陰陽術熟成術式を使って熟成させるこっくりさん。

 女の子でかわいいんすよ。

 三つ叉でさ。


「あとは焚き火にくべるだけにゃ! にゃの分も取り分けたから四人前だにゃ」


「食いしん坊ねえ。こっちの香草まみれの猪はトマトスープに入れるのね?」


「にゃ!」



 肉が入ると全然違うわ。美味しいご飯となりました。次は一気に首都まで向かいたいところ。


高評価いただけると踊り回ります!

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