二軒目
―― 二軒目 ――
次についた家は、玄関のまわりの花がさき、庭もきれいに手入れされた家だった。
ドアをあけてでてきたのは、花柄のひじまである手袋をはめた、男だった。
「よお・・・、 ―― ついに産んだか?」
「だれが?もう、先に連絡したでしょ?ジョー・ジュニアだよ」
ああ、と手袋をとりながら中にまねく男は、だけどおまえに似てるからさ、といちどふりむいて、こどもにわらいかけた。
レイが困ったような怒ったような声で、ジュニアに失礼だよ、というのにわらって片手をあげた男は、座ってまっててくれ、と二階へきえた。
リビングにゆくと、テーブルの上にリボンをかけられた箱がある。
わあ、もしかしてジュニアへのプレゼントかな?とレイがいうと、子どもはなぜか、ぶるっとふるえた。
家の中はどこも、シンプルでととのっていて、なんの印象もない。
その空間に、ソファにおかれたクッションがまとうカバーの、花模様の刺繍の真ん中に、『愛をこめて』という文字の主張が強い。
「そのクッション気にいった?それはね、ジャンのママのマリアがつくったんだよ」
レイが、こどもがじっとみつめるクッションをもちあげた。
こどもの顔に不似合いなほどに、眉がしかめられているのには気づかないようだ。
なにか飲むか?と二階からもどった男は片手に小さなトートバッグを持っていた。
「ジュニアはニコル特製のジュースを飲んだよ」
「でも暑いから、なんか飲んだほうがいいだろ?」
冷蔵庫をのぞいた男がびんビールをとりだし、レイにものむかときく。断られると、炭酸のジュース缶をとりだし、氷をいれたふたつのコップに注いだ。
パチパチと音のするそれを、レイが飲むのをみとどけたこどもは、自分のぶんだとおもえるコップをゆびさした。
口元にだされたそれに、おそるおそる口をつけ、それからコップをもつレイの手ごとつかんでのみほすと、からだをふるわせて、げっぷをだした。
わらいながらも、背中にある羽を、じっくりながめた男は、「はじめて飲んだだろう?」とためすようにこどもにきいた。