4.移動先
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そうしてやっとついた おとどけ先の家、出てきたレイは歓声をあげてウィルとジョー・ジュニアをむかえいれ、こどもの顔をのぞきこむと、おいで、と両手をだした。
いや無理でしょ、とウィルがいいかけたとき、こどもはおそるおそる手をのばし、それをさらうようにレイがだきあげた。
「 好きな食べ物はなに?あ、その前になにか飲む?そとは暑かった?この背中の羽、すごくよくできてて、かわいいね」
それをながめていたウィルは、自分がむかし祖母にでむかえられた夏の場面を思い出した。
愛にあふれ、優しさのつたわる、あたたかい出迎え。
「 ―― じゃあ、ぼくはこれで帰るよ」デートにようやくいける、とドアにむかう男を、こどもをかかえたままレイが見送る。
ウィルをみるジュニアの目は、不安でいっぱい、という感じだった。
「あー・・・ちなみにそのこどもこと、レイはなんてきいてるの?」
「ジョーの知り合いのお子さんでしょ?でも、ジョー・ジュニアってよんでくれって」
「いや、えっと、どう扱ってほしいとか、いわれてる?」
ああ、とおもいだしたようにレイはうなずく。
「しゃべれないっていうのは聞いてるよ。で、ぼくのとこで、《死者の休日祭り》を、体験させてほしいって」こどもにとっては楽しいおまつりだもんね、とだきあげたこどもの顔をのぞき、その頬をつついた。
「だから、 みんなの家をまわってくるよ」
「・・・・・えっと、それ、A班のみんなの家・・・?」
「うん。あ、ウィルのとこは行かないよ。デート楽しんできて」
「 ―― そうするよ。うん。じゃあ ―― よい 休日を 」
最後を、ジョー・ジュニアにむけて贈る言葉とした。
バタン、とドアがしまったとたん、家の奥から楽し気な声が響いてきた。
「 そのガキが、ジョーがおくりこんできたやつか? 」
「あのね、ケン。この子は、ジョー・ジュニアだよ。いい?泣かせたりしたら、しばらくうちの出入り禁止だからね」
「ああ、わかってるって。 ―― なかよくしようぜ?ジュニア?」
レイの首にしがみつき、顔をふせて首をふるこどもの頭をなでてレイはわらう。
「ジョー・ジュニアはすごく恥ずかしがり屋さんなんだね。だいじょぶだよ。みんなすごくいい人たちだから、きっとお菓子をいっぱいくれるよ」
ジョー・ジュニアの『試練』という名の、『死者の休日祭り体験』が、ここからはじまった。