死者の休日祭り
「念のため、こっちにくるにあたって、おれと『契約』を交わしてるから、おかしなことはできないし、いうことはきく」
そう言う聖父の片腕のなかで、ぶるりと身をふるわせたこどもが、オエっ、とえずくようにした。
「 《 くっそ あんなくそったれな『契約』よく、おもいつくな 》 」
「それぐらいしないと、おもてに出せない。 だいいち、おまえの『希望』をかなえようとするなら、我慢が必要だってことぐらいわかるだろう?」
ジョーは本当のこどもにいいきかせるようにこどもの小さな顔をのぞきこんでいる。
眉をよせたこどもの顔は、たしかにかわいい。 ―― だろう、たぶん。
「 なあ、ウィル、こちらの、あー ・・・この、ジョー・ジュニアは、ここでおこなわれてる『死者の休日』祭りに、とても興味があって、 ―― 見学して、体験したいと、おもってる」
「・・・・・・見学して、体験?・・・」
こどもをだく聖父と、その腕におさまる『こども』が、同時にうなずいた。
「・・・・なにか、勘違いしてるんじゃないの?その、 ―― ジョー・ジュニアは・・・」
この国の夏の終わり近くにある『死者の休日』とよばれる祝日は、もとはこの大陸の先住民族たちが、なくなった人たちも墓の中ばかりではきゅうくつだから休日をつくって、墓のそとにだして(魂的な意味で)やろう、という気持ちでつくった日で、聖堂教にとってみれば、異教徒の祭りだった。
だがいまでは、その日はどこの墓地も盛大にかざりつけられ、子供たちは亡くなった身内の人の形見を身に着けたり、先住民の習慣にならって、死者の格好をしたりして、近所の家をたずね、『よい休日をおくってる?』と決まり文句をいって、お菓子をもらう。
そう。たしかに死者をおもいだし、懐かしむための日でもあるが、いまでは基本的に、こどもが楽しむためのお祭りになっているのだ。