カラスと交流
「 《 とうぜんだ おれは悪鬼なんかとは格がちがうんだ 》 」
「そうみたいだな。カラスがわざわざ見にくるくらいだ。 ほら、あっちみて。あいつがカメラもってるだろ?おれとおまえがいっしょのところを写真に撮って、マスターにみせるんだってはりきって来たんだ。ほら、いい笑顔して」
頬をつつかれ、こどもはとびきりの笑顔をむけてやる。
何度かシャッターをきったタキシード男が、親指を立てて、フェンスの上に立ち上がると、白くて大きなカラスの姿となり、とんでいった。
「ふたりとも、まだ?どうしたの?」
上の部屋の窓からレイが顔をだした。
「ジュニアにカラスと交流させてたんだ」
「もう、ルイったらあぶないことさせないでよ?」
「してないよ~」
こどもの小さな手をとってふってみせると、レイが声をあげてわらった。
「 《 あの男 なんであんなに 光をもってるんだ? 》 」
カメラのフラッシュより目がやられたぜ、と小さな手で目をこするこどもに、おまえ今日だけでモデル気分満喫だな、と階段をあがりながら男がわらう。
はっとしたようにこどもは顔をあげた。
「 《 そういえば 聖父との契約に 『他の特別体験あり』 ってあったな 》 」
それが、その『モデル気分満喫』ってやつだな、とこどもはルイにきく
「・・・そう、・・・だと、楽しいねえ」
「 《 そういや おまえにはまだ言ってなかったな 『 良い休日をおくってる? 』 》 」
「そこだけかわいい声とか、ずるくていいね」
男の骨董品だらけの家の中で、ザックという男にレイが電話したが、こちらにはこられないということで、こどもはその器械にむかって『良い休日をおくってる?』という言葉をさけぶことになった。とたんにそれをみていた男たちと、機械のむこうの男も、大笑いした。
「ジュニア、その受話器は、話す方と聞く方にわかれてて、そっちは聞くほうなんだ」
レイにやさしく持ち直されたその器械に、二度めにさけんだ声は、小さくなってしまった。
信じられるか?とのちのジョー・ジュニアはなんども繰り返した。
『あの魔法使いが、このおれのことをおそれて、下僕であるカラスに偵察にこさせてたんだ。 だが、カラスはまったくおれに近づけず、声もだせずに戻っていったさ。そのあとおれに謁見を申し出た男は、おれの声だけきくと、顔もみせずに逃げちまった。 じつは、そんときに会った男ってのは、《この世界》じゃあちょいと有名なやつなんだが、《そいつ》のことをはなすと《契約違反》でおれは裁判にかけられちまうんで、これいじょうははなせねえんだ』
だったら最初から話すなよ、というヤジがとんでも、ジョー・ジュニアは余裕で首をふってみせる。
『 おまえらにはわからねえだろうが、《そいつ》はそんとき、おれのことを、《ずるくて》最高だとほめそやした。あいつはわかってるヤツだった』
遠くをみるようにうなずくのを、毎度このはなしのシメとしている。