1.あずかる
つぎにのせるA班で、ジョー・ジュニアを出すので、短編に移動したのを、また分割で一度あげなおします。
― Ⅰ ―
1.あずかる
こどもが嫌いだというのは、わかっている。
いや、それ以前に、こどものほうがこの男をうけいれるか、疑問だ。
「 ―― で? その、いっけんガキにみえるのは、なんだ?」
ひどくつまらなそうにきくのに、すぐにこたえをかえせない。
なぜかというと、この『いっけんガキにみえる』ものを、これからこの男の家につれてゆくつもりだからだ。
「『なんだ』というのは、ぼくも正直しらなくて・・・えっと・・・まあ、ぼくじゃなくて、ジョーが、この子を、レイのところにちょっと預かってもらう、だんどりをつけてて 、」
「ああ?おれはきいてねえ」
「だろうね」だって、きいてた話じゃ、この男はここにはいないはずだった。
―――――
自分の知り合いというか、身内というか、とにかくよく知ってるジョー・コーネルという男は、父親の持つ農場に住み込み、聖堂教という宗教の、正規ではない聖父という聖職(?)もこなしているのだが、その関係で『面倒をみることになったこども』を、なにを血迷ったのか、ウィルのところへつれてきたのだ。
もちろん、はっきりと断った。
ホテルの最上階にすむウィルのところに、早朝六時過ぎにいきなりこどもを抱えてあらわれたジョーの顔を確認して、すぐにドアをしめたのだ。
ところが、ドアをしめて再度寝室へゆこうとしたら、ながめのいいリビングに、こどもをかかえたジョーがいた。
金色の髪に青い目をして、バラ色の頬のこども。 ―― 背中には、黒いちいさな羽。
五歳くらいだろうか?いや、もうすこしちいさいのか?
女性の歳はだいたいあてられるが、こどもの年齢は、わからない。
こどもはぷっくりした頬をジョーの肩におしつけながら、ウィルをじっとみた。
「 《 おい 聖父 このガキに おれの面倒をみさせようって気か? 》 」
明確な発音でおしつぶしたような低い声が、その小さな口から、でたように聞こえた。
「 ―― 幻聴か、いやな予兆か・・・」
ウィルの渋面からでた言葉を無視し、こどもを片腕で抱えた男が、一歩まえにでる。
「なあウィル、じつは、こちらの、」
「きかないよ! それの正体が何かなんて知りたくもないし、ぼくには関係ない」
腕をふって、はらう。
「 《 関係はある。 おれはてめえの先祖の ・・・あれ?あいつ名前なんだっけ? 》 」
こどもがかわいく首をかしげるが、ウィルは寒気がした。
「 ―― でていけ。 そうしないと」
「 《 そうしないと? この弾でおれを撃つってか? 》 」
ちいさなかわいい手には、銀色の弾がにぎられている。
丸い手の中にあるそれは、なにかのおもちゃにしかみえない。
こどもは、ジョーが用意したものか、Tシャツにハーフパンツ姿で、そこからでている手足は、とてもこどもらしく、ふっくらしてる。小さなサイズの靴をはいた足をばたばたさせ、楽しそうにウィルを見た。
「 《 ほかの弾の在庫も この聖父のポケットにうつしておいたからな 》 」
だから引き出しにある骨董品の銃は、これでただの骨董品だ、と汚い、鳥のなきごえのような笑い声をあげた。
「ジョー!いいかげんそいつをつれて出ていってくれ!」
耳をふさいで叫ぶと、眉をよせて抱えたこどもをみた聖父は、シっ、といって指をたててみせた。
するとこどもは、とたんにわらいをとめ、固まったようになる。