表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プラスチックへ愛を込めて  作者: 田中ドラゴン
天剣を地に落とせ
82/85

トゥ・ビィ・コンテニュー


 トーナメントは終わった。

 俺は無事に過去の因縁と決着を付けたし、俺が勝ったことで〈ロボキチ〉と〈ジーク〉の溜飲も下がったことだろう。


 ただ……問題が全て解決したわけでもないし、新たな問題が発生していないわけでもない。


 まず〈ジーク〉の引退という問題が残っている……軽々しく口出しできる領域の話ではなく、内容もヘビーなので俺だけではどうにもならない。

 〈ジーク〉自身の意志がかなり固そうに見えるのだからなおさらだ。

 〈ロボキチ〉辺りと組んで何かしら考えるにしても、引き留められないんじゃないか……というのが正直なところだろう。

 そもそも、たかがゲームだ。

 続けるかどうかなんて個人の自由なのだから他人が口を出すこと自体ナンセンスを通り越してマナー違反、いやさなんらかのハラスメントに該当するかもしれない。

 なのでそこはもう〈ジーク〉の心変わりか、〈ロボキチ〉のナイスアイディアに期待するしかない。

 行き当たりばったりの未来に先送り、その場その場のアドリブコミュニケーションで上手いこと引き留める……無理ゲーでは?


 次に、俺の現状。

 この度、”最強”のプレイヤーこと、〈カロリッパー〉をシメた結果として、〈フルカゲ〉は新たな第一位ナンバー・ワンプレイヤーとなりました。

 ……いや、勘弁してくださいよ、ほんとにもう……。

 こちとらただでさえ町を歩くのにも変装しなくちゃなんだぜ?

 あ、〈ブルー・シート〉も大会で使っちゃったから変装に使えなくなったんだ……えー、新しいの作るのぉ?


 そのうえ、第一位ナンバー・ワンなんて称号を引っ下げちゃったら目立って目立ってしょうがないだろう……。

 忘れられがちだが俺ってまだまだ全然初心者(プレイ時間二か月未満)でしてぇ……町の中とかも探索できてなかったりしてる様な世捨て人(ニューピー)なんですけどぉ……社会復帰《一般プレイヤー》のハードル上げないでくれません?

 いや、勘違いしないでほしいのだが、称号が貰えたことに関しては素直に嬉しいのだ、大会優勝のトロフィーみたいなもんだし。

 ただ、だからこそこんなに厄介なのに適当な他人に譲るにはちょっと惜しい気持ちがでてしまう。


 〈カロリッパー〉の奴も負けるつもりなんて毛頭なかったから予想外の結果なんだろうが、この第一位ナンバー・ワン称号、かなり面倒ごとの匂いがする、つーか確実に厄ネタだ。

 軽く見ただけだが具体的に言うと、プレイヤー、エネミー問わず襲われるリスクが跳ね上がった。

 なにせ72時間の期間付きとはいえ、PKされるとこの称号は奪えちゃうのだ。

 公式仕様の派手なバトルを自分もやりたい、と、こんな派手な大会をやらかした後ならなおさら欲しがる奴は多いだろう。

 そうでなくとも名の売れたプレイヤーにちょっかいかけに来る輩は少なからずいるだろうし……。

 それに加えて、NPCも第一位称号持ちに対しては見る目が変わるらしい。

 『強者の証明を持っているが故』とか書いてあったが要は敵エネミーのヘイトを集めやすくなってしまうのだ。

 それを人は”悪目立ち”という。

 強制ヘイト誘因装置の完成だ、ナメてんのか?

 

 しかし、悪いことばかりでもないのだから喚き(わめき)ずらい。

 どうやら街中のNPCなら一目置かれる感じになるらしく、好感度というか”こいつに逆らってはいけない”的な扱いになることで、特別扱いを受けられるっぽいのだ。

 今回のトーナメントもてっきり俺は第一位称号が開催権的なチケットとして機能していたイメージだったが、実際は〈コロッセオ〉の受付NPCが忖度してくれた結果としてバトルの仕様を公式大会仕様へと変化させているという扱いだったらしい。


 逆に言えば、NPCの好感度を上げるなり、何らかの条件を満たせばこんな称号を持っていなくても公式大会仕様のバトルはできるということでもある。

 まあ、公式大会仕様なんてデフォルトで使える様にしとけよって話だし考えてみれば当然のことではあった。

 ……とりあえず、しばらくはこの情報を流して目くらましをするくらいしか思いつかないな。

 

 結論、どの問題も今すぐにできる対処は無い。

 悩みは尽きないが、人生とは得てしてそういうものだということだろう。

 とりあえず今は、無事に目的を達成できたことを友人達と喜ぼうじゃないか!

 今日だけは調子にノッても許される!

 アイアム・チャンピオン!!


 「残念ながら緊急クエストの時間です」


 「……へ?」


 両手をピンと伸ばして体全体で勝利のVのポーズを決めていた俺を出迎えたのは拍手でもなければ、スベッたことによる失笑でもなく、冷たい宣告だった。

 あれー、おかしいぞぉー?

 なんで俺は友人と悪友と後輩の待つ〈コロッセオ〉の控室じゃなくて見慣れた宇宙戦艦〈アイギス〉の中に転送されているんだい?

 

 この宇宙戦艦の頭脳である銀髪の少女〈アイギス〉が特に慌てた様子もなく通達する。


 「災害級エネミー〈ルドラズ・ホール〉の《《群れ》》が現在この惑星に到来しようとしています」


 「さ、さいがいきゅうエネミー……?」


 なにそれ……?聞いたこともない単語なんですけど……もしかしなくてもボスモンスターの大群的な話してる?


 「原因は恐らく〈ジーク〉が機体の強化のために〈ルドラズ・ホール〉を討伐したことと、その乗艦であった〈アイギス〉の大元たる当艦がこの宙域にいることと推察されます」


 へえー、〈ジーク〉のやつボスモンスでレベル上げしてたのかぁー……さすがというか、素でイカれてるというか……ん?待てよ?


 「……もしかしなくても、そいつら……〈ルドラズ・ホール〉とかいう奴らはこの星に降りようとしてます?」


 「そうですね、〈ルドラズ・ホール〉は”星食い”とも呼ばれるくらい種族的に大食らいな生態をしていますから……こんな新鮮な惑星《食料》が目の前にあったらほぼ間違いなく食いつくと思われます」


 「…………………………………」


 まずくね?

 その異名は確実に地面もぐもぐ系ですよね?

 いや、状況もかなりヤバイが、何よりヤベーのは……。


 「……もしかしなくても俺のせいじゃね?」


 「まあ、当艦をこの宙域に誘導し、留めたのは当艦の所有者(マイマスター)であるあなたですから、それを追ってきた〈ルドラズ・ホール〉をこの場に引き連れて来たのはマイマスターと言えなくもないですね」


 も、モンスター・トレイン……!

 

 それはゲームにおいて古来より伝わる迷惑行為。

 文字通り敵対エネミーのヘイトを背負ったまま移動し、そのヘイトを他のプレイヤーに誘導、敵をなすりつける行為だ。

 モンスターの数によってはターゲットのプレイヤーをモンスター・ハウスに強制入室させる様な状況にできるし、相性の悪いエネミーや単純に強個体のエネミーを複数狙ってぶつけることができる。

 なにより陰険とされるのはこの行為、他プレイヤーを害するのはあくまで敵エネミーであり、システム的にはPKとして認識されない。

 つまり、引き連れて来たプレイヤーの手を汚さないのだ。

 その手口の陰険さからかなり嫌われる行為であり、報復行為(PKK)もしづらいため割と手軽にSNSや掲示板で”晒し”が行われる。


 「ま、まぁずい……!!」


 もとはと言えば〈ルドラズ・ホール〉とやらにちょっかいをかけたのは〈ジーク〉だが〈ジーク〉もまさかエネミーがこんな所にまで報復に来るほど執念深いとは思わなかっただろうし、第一それはここよりも遠い場所での話だ。

 それよりも大気圏突破の目印として、報復相手マーカーである〈アイギス〉をわざわざこの場所に釘付けにしていた俺の方が責任は重いだろう。

 つーかこのイベントの発生条件が”〈アイギス〉が俺たちのいる惑星に近づいたから”って可能性がいっちゃん高い。

 たぶん最後に乗組員ジークがヘイトを買ったのが〈ルドラズ・ホール〉とかいう奴だっただけで。


 雰囲気的に〈ルドラズ・ホール〉を知らんぷりすれば地上はメチャクチャになることが確定だ。

 なにせ”宇宙から攻めて来たボスエネミーの群れ”なんていうイベントのパワー。

 フィールドの地形が変わるくらいなら安いもので、下手したら主要都市が壊滅するなんてこともありうる。

 

 かといって群れというからには〈ジーク〉や〈ロボキチ〉を引っ張ってきて〈アイギス〉三艦で迎撃に出ても防衛線は展開できないだろう。

 滞りなく地上侵攻はされるだろうし、なんなら迎撃に出た俺達が普通に死ねる。


 なによりヤヴァイのが俺達以外の誰かが〈宇宙〉ステージ関連のコンテンツの存在に気づいた瞬間にこの群れを呼び寄せたのが俺だとバレる可能性が高い。

 ただでさえ現状、悪目立ち待ったなしな俺だ。

 災害級のクソモンス引き連れてきて、地上を阿鼻叫喚に陥れたなんて大スキャンダル知られたら……!


 「……ええい!仕方ない!!」


 「どうしますか、マイマスター?」



 命令が来ることを確信していた銀髪の少女の問かけ。

 爆誕したばかりの新たな第一位ナンバー・ワンはほとんどやけっぱちで指示を飛ばす。



 「地上に降りる!大群で来るならこっちも大群で迎え撃つまでよ!!」

 


 なんの理由もなくいきなり襲撃イベントなんて始まるからウザったいのだ。

 だったら《《理由を用意すれば問題ない》》。

 例えば、新コンテンツのチュートリアルってことにしてしまうとか。

 

 

続きの導入が思ったより面白そうに書けて困る…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ