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プラスチックへ愛を込めて  作者: 田中ドラゴン
天剣を地に落とせ
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『END』

 〈トリプル・ホイール〉の超必殺ウルトであろう、あの天まで届く剣の光。

 そいつはこの鎧にも届くと仮定した場合、どうするのが正解だ?


 「正解?そんなもん知るか」


 自問自答を突っぱねる。


 ここまできたら、何が何でも100点満点にすんだよ!!

 俺の通った道が正解だ!!!



 「〈栄光の剣閃グローリー・ブレード・ロード〉ぉぉぉ!!!!!」



 今まで聞いたこともない〈カロリッパー〉の裂帛の気合と共に〈トリプル・ホイール〉が光の柱()を斜めに振り下ろす。

 思った通り、奴の得意な型——袈裟斬けさぎりだ。


 剣が振れ、届きさえすれば、狙った通りに斬れる——たった一振り許しただけで数多の剣士を必殺してきた”先手必中確殺の剣”。

 それが実質射程無限、破壊不能の刀剣で振るわれる。


 だが、俺はその剣の”振り始め”から”振り終わり”のわずかな”間”に迎撃を差し込むことができた唯一の剣士だ。

 かつての俺は、先の先——最速の攻撃——に対して後の先——完璧なカウンター——で応じることで対抗した。

 目の前の対戦相手いわく、”身体ができていなかった”せいで敗北を喫したが、今回は違う。

 

 今の機体《身体》はこれ以上ないもんだ。

 ブランクでいくらか技が劣化した感は否めないが、この一帯に吹き荒れる暴風が劣化した技を埋め合わせてくれる。

 

 今なら、”振り始め”に合わせられる!!!


 

 「〈アーマー・ブラスト〉ぉぉ!!!!」


 

 絶叫と共にスキルを使用した直後、〈スケルトン〉が鎧として纏う暴風と灼熱に指向性が生まれる。

 〈アーマー・ブラスト〉はリアクティブアーマーを含む、自身の纏う鎧を砲弾の様に撃ちだすスキル。

 〈アーマー・ブラスト〉自体は超必殺ウルトスキルではないが、砲弾として打ち出すのは超必殺ウルトスキル〈強敵と試練と恩恵ギフト・ギフト・ギフト〉で強化・拡張した〈スケルトン・アーマー〉によって固められた大気圏突入時のエネルギー。

 その無秩序に荒れ狂っていた灼熱と暴風が解き放たれ、津波の様に〈トリプル・ホイール〉を呑み込まんと、殺到する。

 土が焼けながらめくり上がり、空気が焼け、発散された大気圏のエネルギー(惑星の鎧)は大爆発を巻き起こす。



 十分に超必殺ウルトに匹敵する威力のはずだ。

 〈アーマー・ブラスト〉は確実に天を突く光の剣の動き始めにぶつかり——そしてそのまま、真っ二つにぶった切られた。


 その剣閃に一瞬たりとも揺らぎ無し。

 

 刃が俺の身体を通過する。





………………………………………







 斬った。

 手の内にある刀の手ごたえ。

 それは確実に、空以外の硬い何かを捉えたことを〈カロリッパー〉に伝える。

 〈アーマー・ブラスト〉による大気の爆発と、〈栄光の剣閃グローリー・ブレード・ロード〉を振り切り、剣速によって巻き起こった風圧で視界は土煙でいっぱいだ。


 「勝っ……」


 未だ、勝利を知らせる表示は出ていないのにも関わらず、勝利を確信し、思わず声が唇から洩れる。

 怪物故の慢心、その油断。

 

 それが一瞬、忘れさせる。


 対峙する相手は自分を人間に貶めようとしていたバケモノであったことを。


 〈トリプル・ホイール〉の右斜め上。

 土煙の尾を引いて、右腕の無い〈スケルトン〉が飛び出す。

 残った左手には自分の握っている物と同じ、愛妹の作ったブレード


 「あ……」


 左片手一本突き。


 胸を——一突き。


 〈トリプル・ホイール〉の流線形の胸部装甲に刃が差し込まれる。


 見れば、〈スケルトン〉のフレーム()の身体は所々溶け、ドロッとしていない箇所を探すのが難しいほどだ。

 刀を握る手に至っては溶接でもしたかのように、柄と手が一体化してしまっている。

 〈トリプル・ホイール〉の一振りで吹き散らしたとはいえ、土煙の中は高温だ。

 そこを全力で突っ切って来れば、装甲の無い〈スケルトン〉では無事で済むわけもない。

 当然、自立などできるはずもなく。

 突きに押されるままに、二人で倒れそうになる。

 そんなラストもありかな、とも思ったが、思い直し、足に力を入れて〈スケルトン〉を受け止めた。

 思った通り、〈トリプル・ホイール〉へ刺した刀に機体がぶら下がっているような状態で、〈スケルトン〉は静止する。

 


 「……〈ハイ・マニューバ〉(それ)、あったんだね」


  

 「……俺の勝ちだ、ざまあみやがれ」



 機体の損傷度合いで言えば圧倒的に〈スケルトン〉の方が酷いというのに、確かに勝者は〈フルカゲ〉だった。


 

 「ごめん、私は古野を怪物にしてしまった……止められなかった……、きっとこれから、辛い事がいっぱい襲い掛かって来る」



 これを言うために倒れず、踏みとどまった。

 怪物《自分》の役割を押し付けてしまった。

 それも割り増しで。

 自分は得たのに。

 それが、心苦しくてならない。


 しかし、目の前の男はそんな些事は眼中にないとでも言う様に不思議そうにするだけだった。

 

 

 「……?そんなの生きてりゃ大なり小なりあるだろ」


 

 たったそれだけ。

 言葉が続く。


 

 「そんなことより、こっちこそごめん。一方的に縁を切ったことも……気持ちに応えらんねえことも、ごめん」


 

 「お前に負けて、折れて逃げた……お前やキッカちゃんの気持ちなんて一ミリも頭に無かった」


 

 「義理に欠けた、男らしくなかった……本当にごめん」



 「……俺さ、今プラモ作り教えてる子がいるんだよ。その子、教えたことを本気でやってくれててさぁ……、それが結構嬉しいんだよね。俺は二つのことを同時に上手くできる性格タチじゃないからさ、請け負った役目が終わらない内は、そういうのは無しかなって」


 

 「だからごめん」



 謝ってばかりだ。

 放っておくと、このままずっと謝罪の言葉を吐き出し続けそうだったので、私も喋ることにした。

 一言だけ。

 中学の時のように。



 「ふふ、シバいてから謝らないでよ、夕暮れの河川敷じゃないんだよ?」



 「……はは、違いねえ」


 

 とりあえず、後でキッカちゃんの所にも謝りに行かないとな、俺も土下座やんなきゃ、〈フルカゲ〉はそう言って決着を示すウインドウが現れた。



 決勝戦はそんな細かい表示も特別仕様だ。


 

 『END』


 

 勝敗は言うまでもなく。


 トーナメントと共に、私の戦いも終わりを迎えた。





 

 

80話を越えました。

ですが、この辺で一旦『プラスチックへ愛を込めて』は一区切りとしたいと思っています。

完結マークは付けますが、またロボットのアイディアを思いついたら短編なり続編なりを書こうと思っていますので。

次は公募に出そうかなと考えているので、見かけたらよろしくお願いします。


とはいえ、もうちょっとだけ続くんじゃ。

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