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プラスチックへ愛を込めて  作者: 田中ドラゴン
天剣を地に落とせ
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キック・オフ


 〈スケルトン〉よりも頭一つ分ほど小さい背丈の〈ガリバー〉を斬りつける。

 最速の座は〈ジード・フリート〉に譲ったとはいえ、〈スケルトン〉だって十分、電光石火だ。


 袈裟けさ斬り。

 〈ガリバー〉の左肩から切り込んで、そのまま刃を走らせ、腹の辺りから引く様に刃を抜く。

 まるで血が噴き出しているかの様に刃道から火花(エフェクト)を発生させる〈ガリバー〉。


 開始の合図と共に、決めたスタートダッシュは迎撃のタイミングを掴ませない完璧なものだった。


 だが、斬りつけた俺の心中は『しまった』だった。


 手ごたえがおかしい!!斬れた感じがしねえ!!


 その証拠に本来であれば、両断され、確実に致命傷クリティカルであったはずの〈ガリバー〉が掲げた拳を振り下ろしてきている。


 いかに電光石火を自称できる〈スケルトン〉であろうとも、攻撃の前後には必ず一瞬の硬直《隙》ができる。

 初めから迎撃のカウンターではなく、被弾後のこの一瞬が〈ロボキチ〉の狙いだったのだ。


 「オラァァァ!!!」


 〈ロボキチ〉の怒号と共に迫りくる鋼拳。


 このままでは頭を潰される。

 例え装甲があったとしても、この距離とタイミングは確実に致命傷クリティカルだろう。

 しかし、今の〈スケルトン〉は〈装甲パージ〉によってスピードが増した状態。

 加えて、ギリギリで違和感に気づいて、脇腹を抜けるまでブレードを下げなかったのも功を奏した。


 「く、ぉおおおおおおおっ!!!」


 左足に力を込め、地中に埋まっているカブを力任せに引っこ抜く様に上半身を持ち上げる。

 その勢いのまま下がった刃を跳ね上げる!!


 即興、燕返し!


 振り終わったブレードを無理矢理振り回しただけ…手首を返す様な小細工もできなかった、技とも呼べない悪あがきを”燕返し”などと宣う(のたまう)のは大変不本意ではあるが、形的にはそんな感じなのだから致し方ない。

 

 しかも、この試みは成否で言えば失敗であったし、この一合の勝敗で言えば完全に俺の負けだったのだから笑えない。


 ガァァン!!!


 硬い物同士がぶつかる金属音が響き、どうにか頭部を砕かれるのだけは回避した。

 慌ててバックステップで距離を取り、右腕のブレードを確認する。


 「っち!」

 

 思わず、舌打ちが口から洩れる。


 エネルギーブレードの噴射口がひしゃげている。

 意識を向けても、刃の形をとる光が出る気配がない。


 今の攻防の瞬間、なんとか拳を弾くことには成功したものの、弾くのに使った箇所は右腕の甲、つまり刃の射出口の部分に〈ガリバー〉の拳が命中したのだ。


 数少ない武装(ブレード)を潰された。

 ……幸先が良いとは言えないな。

 

 見ると、〈ガリバー〉の胴体にはブレードが通った道筋から煙の様なエフェクトが上がってはいるが、斬れるどころか、抉れてすらいない。

 ただちょっと焦げただけって感じだ。


 「…スキルか」


 「おうよ、〈防刃アンチ・ナイフ〉…斬撃に対する強耐性を得る《《パッシブスキル》》だ」


 「常時発動型パッシブだと?」


 ちょっと待て、防御系のスキルにしたって強すぎやしねえかそれ?

 普通にバランスブレイカーだろ……いや、


 「…強すぎるな、なんかデメリットがあるんだろ?」


 「ご名答、打撃攻撃に対しての防御力が落ちる。……実体剣が相手だと普通に切れ味が無くなるだけで、軽めの鈍器で殴られるのに変わるだけだからよぉ…どっちかっつーと弱い部類のスキルなんだが…非実態の剣(それ)には効果的メタいだろ」


 ……『バープラ』のスキルは、効果が強すぎるものにはデメリットとセットにすることでバランスをとる傾向がある。

 結果として、メリット部分はクソ強いのに、デメリット部分のせいで産廃化するスキルというのが結構あった。

 〈防刃アンチ・ナイフ〉は間違いなくその部類のスキルだろう。

 実体剣の場合は切れ味が無くなるだけで、殴打武器になる…そして打撃攻撃に対して弱くなるのなら、控えめに言って弱体化スキルだ。

 要は、斬られない”だけ”のスキル。


 だがそれは、実態剣が相手の場合であって、〈スケルトン〉のエネルギーブレードの様な非実態の剣の場合は話が変わって来る。

 溶断して斬るエネルギーブレードから切れ味を除くということは、熱の無い光を振り回しているだけ、ということであり、ちょっと光の強い懐中電灯になりさがるということだ。

 つまり、実体剣と違って鈍器にすらならない。


 しかも、自分ガリバーは明らかに殴り合いが得意な機体なのだ。

 武装を一つ完全に無効化し、自分の得意に無理矢理付き合わせる戦術コンセプト

 

 「悪辣だな…、俺が〈スケルトン〉以外で来たらどうするつもりだったんだ?」


 非実態剣エネルギーブレード狙い撃ちのスキルをセットしてるってことは、俺が〈スケルトン〉で来るってヤマ張ってたってことだろ。


 「そんときゃあ、そんときで殴り方を考えてたさ…ま、ほぼ確実に〈スケルトン〉だとは思ってたけどよ」


 「…理由は?」


 「準決勝ここ第一位用の機体(とっておき)は出さねえ。出したら、ここで勝てても次で確実に負けるからな。…で、〈スケルトン(そいつ)〉以上の次善の機体が、そうほいほいと作れるとも思えねえってだけだ」


 なるほど…考えてみれば当たり前か。

 観戦者にも会話が聞こえていることがあるから、若干言葉を濁してくれていたが、要は消去法だ。

 俺と〈ロボキチ〉は対〈カロリッパー(第一位)〉戦用の機体を新たに制作して、今日このトーナメントに望んでいるはずなのだ。

 その新機体の性能の最低目安は〈スケルトン〉以上。

 

 そんな機体を二週間で二機も作れるわけがない。


 そして一回戦で〈ブルー・シート〉は使用した。

 〈スケルトン〉より低い性能の機体をわざわざ使う理由もない。


 「なるほどな…じゃあ、〈ガリバー〉は〈スケルトン〉メタの機体ってことか」


 「…まあ、そういう想定でスキルは選んだぜ」


 …バツが悪そうだな。


 〈防刃アンチ・ナイフ〉のデメリットしかり、聞けば不都合なことでも構わず喋るのは、この場所リングでの戦いに付き合わせたことに対して、まだちょっと引け目を感じているのかもしれない。

 

 自分の得意なフィールドでのバトル。

 俺が自分の意志で受けたとはいえ、俺の性格に付け込んだ様なもんだからな。

 そのうえ、完全に〈スケルトン〉対策をしてきたってんだから、騙してハメた気分なんだろう。

 

 じゃあ、俺からも少し気持ちを軽くして(塩を送って)やろう。


 「いや、気にしなくていいぜ。別に悪いことじゃないしな、”対策”は怠った奴が一方的に悪いのであって、しっかりと用意した側は堂々として良いんだ」


 「……はっ!そうかよ…そう言ってくれると…」



 「その対策が《《合ってれば》》の話だがなぁ!!〈残骸レムナント〉!」



 〈ロボキチ〉の言葉を最後まで言わせず、スキルを起動。


 手を翳して、対象を選択。

 対象は〈ガリバー〉の背後。

 道を塞ぐために〈ロボキチ〉自身が崩した、落石の山だ。

 その一番上のサッカーボールくらいの岩が〈スケルトン〉に引き寄せられる様に向かって来る。


 スキル〈残骸レムナント〉。

 その名の通り、破壊され残骸となった物体オブジェクトを手元に引き寄せるスキル。

 

 「うぉおお!」


 あわよくば〈ガリバー〉の背中にブチ当てるつもりだったが、不意打ちだったのにも関わらず、〈ロボキチ〉は身をよじってギリギリで避けてみせた。


 だが、それだけで終わらせねえ!!

 

 さらにスキルを起動する。


 「〈シュート〉!!」


 〈スケルトン〉の目前に向かってきた、岩を思いっきり蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばされた岩は白いエフェクトを纏いながら、〈ガリバー〉を粉砕せんと空気を裂く勢いで〈スケルトン〉の足から発射された。


 〈シュート〉はその名から連想する通りのスキルだ。

 つまり、蹴り飛ばした物の威力が上がるスキル。

 

 「オオォォ!!舐めんなぁぁ!!!〈鉄拳〉!!」


 今度は避けられないと悟ったのか、〈ロボキチ〉もスキルを使用して、赤いエフェクトを纏った拳で岩を迎え撃つ。

 

 バガァ!と音を立てて岩を砕いた。


 「おぉ、さすがだなぁ!だが俺のことは視界に入ってるか!?」


 岩に気を取られている内に、〈スケルトン〉は〈ガリバー〉の真横へと踏み込んでいた。

 〈装甲パージ〉で素のスピードが上がっている〈スケルトン〉ならこのくらいの芸当はできる。


 「な!っガァっ!!!」


 〈スケルトン〉の右ストレートパンチが〈ガリバー〉の顔面を横からブっ叩き、小柄な〈ガリバー〉を宙に浮かせて吹っ飛ばす。




 せっかくの独占コンテンツ(アイギス)だぜ?

 〈スケルトン〉だってスキルを付け替えて、バージョンアップくらいするさ。

 

 


 ボクシングがやりたかったみたいだが、生憎と俺はサッカーがやりてえんだ。

 だがまあ、せっかくだ。

 ボクシングにも付き合ってやるよ。

 そのかわりお前にはゴールの無いPKのキーパーをやってもらうぜ。

 


 サドンデス(DEATH)だ。


 

ロボキチこと羽刈鋳造は幼馴染の女の子を甲子園に連れていくタイプの野球漫画が愛読者です。

その影響で、野球はもちろんボクシングも経験者だったりします。

ちなみに、フルカゲは剣道経験者ではあるけど、サッカーはオフサイドとかがない、なんなら11人いない草野球ならぬ野良サッカーしかやったことないです。

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