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プラスチックへ愛を込めて  作者: 田中ドラゴン
天剣を地に落とせ
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英雄とは怪物の別名である


 第一位ナンバー・ワンプレイヤー〈カロリッパー〉こと、健堂 斬加(けんどう きりか)は驚愕していた。

 

 二週間ほど前に戦った〈ジーク〉というプレイヤーは確かにプレイヤースキル(PS)に秀でた優秀な使い手だった。

 しかし、その”優秀”という評価はあくまでも、常人の中では、というくくりだったはずだ。


 たった二週間。


 かつて神童・権堂 斬加に初めて敗北を予感させた古野 千景(ふるの ちかげ)でさえ、三年の月日を費やしたのに、だ。


 〈お人好しのジークフリート〉。


 竜殺しの逸話を持つ大英雄。

 不遜にも、その名を二つ名とする《《一般人》》。


 わかってはいる。

 多少の連想はあったのだろうがジークフリートというのは〈ジーク〉の愛機の名称から来ている…英雄の逸話とは全く関係の無い、ただの《《あだ名》》だと。


 だけど、やっぱり気に入らなかった。


 怪物《竜》を殺していないくせに、大英雄ジークフリートを気取るのか?

 かの豪傑はきっと私と同じ特別製だったはずだ、それを一般人あなたごときが名乗る?

 分を弁えろ。

 

 …そう、思っていた。


 自分の目が節穴だったと認めざるを得ない。

 

 事実、〈ジーク〉は〈カロリッパー〉を追い詰めている。

 反撃を許さぬ距離を常に作り、一方的に必殺の攻撃を押し付けて来る。

 こんなことは、あの時の古野 千景でもできなかった。


 認めるまでもなく明らかだった。


 《《彼女は一般人なんかじゃなかった》》。

 〈竜殺しのジークフリート〉ではなく〈お人好しのジークフリート〉。

 

 竜は(私を)これから殺すのだ。


 英雄には今、なっている渦中。


 そしてジークフリートは死闘のすえに竜の血を浴びて不死身《怪物》となる。

 

 その血を今、彼女は浴びている最中なのだ。


 

 爆撃の雨が止み、爆炎を引き裂いて〈トリプル・ホイール〉を走らせる。

 被弾は無い。

 

 狙撃なら相手の狙い所を読めば対処はたやすい。

 無差別な爆撃なら反射神経で動けば良いだけなのだから、もっとたやすい。


 空を見ると先ほど空に昇って行った流れ星よりも遅い流れ星が見えた。

 今度はちゃんと落ちて来ている。


 「逃がさないよぉ!」


 こちらが見えたということは、あちらも見えたということ。

 深淵を覗くものは…理論で私を確認したはずだ。


 〈トリプル・ホイール〉から離れる様に、バトルステージの最端へと方向を変える流れ星(〈ジーク〉)

 このままでは、追いつけない。


 着地、狙撃、上空へ逃走、また距離を作る…イタチごっこのなぶり殺しだ。

 もちろん、やろうと思えば弾切れまで凌いで見せる自信はある。

 だが、相手は本気で殺そうとしてくれているのだ、こちらも本気でやるのが礼儀というもの。


 「〈ニトロ〉!〈グローリーロード〉!」

 

 〈リアルプラモ〉にのみ許された特殊能力スキルを使用すると同時に、〈トリプル・ホイール〉が加速し、タイヤが宙を掴んで走り始める。


 〈ニトロ〉は瞬間的に加速するスキル。

 加速の持続時間は3秒と短いが、再使用時間リキャストタイムが短いため連続使用が期待できる優秀な加速装置。

 〈グローリーロード〉は空中を走るためのスキル。

 このスキルのおかげで、基本的には地上を疾走する〈トリプル・ホイール〉で空中戦をやるのがたやすくなる。


 「〈ニトロ〉…!〈ニトロ〉…!…」


 リキャストタイムが終わるたびに〈ニトロ〉を使用し、どんどん加速していく。

 地面の影響を受けないので、本来の走行能力を取り戻したのも大きい。

 スピードスケートのフォームで、空中を滑る〈トリプル・ホイール〉の姿はまさに”韋駄天いだてん”と呼ぶに相応しかった。


 「…見えた!射程距離ぃ!!」


 先ほどと同じ様に、岩場に着地した〈ジードフリート〉を目視。

 想定外の速さで接近した〈トリプル・ホイール〉を確認した〈ジーク〉は慌てて、膝立ちになり、二丁の狙撃銃を構える。


 しかし、それより早く〈トリプル・ホイール〉の狙撃銃による早打ち(クイックドロウ)が、一射目を放とうとしていた右の狙撃銃を撃ち抜く。


 バガァァンン!!、と撃ち砕かれた狙撃銃が持ち主の手から弾け飛び、虚空へと消える。

 すぐさま、残った左の狙撃銃で反撃する〈ジーク〉。

 〈トリプル・ホイール〉の頭部を狙った弾丸は首を少し傾けるだけで背後へ通り過ぎていった。

 

 ブレードの届く距離は目前。


 振らば、斬る。


 それを理解しているからこそ、〈ジーク〉は再び逃走を選択する。

 そして、その程度の読みと対応は瞬時にできるからこその第一位。


 再び、空へ昇る流れ星と化す〈ジードフリート〉が〈トリプル・ホイール〉の頭上ですれ違う。


 一秒後には手の届かない遥か彼方(はるかかなた)だろう。


 しかし、その一秒後を〈カロリッパー(怪物)〉は許さない。


 反撃の弾丸を素通りした時点で、〈トリプル・ホイール〉の持つ狙撃銃の銃口には紫色の淡い光が灯っている。

 

 スキル。


 〈ジーク〉は飛び立ってから、そのスキルエフェクト()に気づいた。

 慌てて軌道を変えようとするが、もう遅い。


 「〈バースト・バースト〉」

 

 振り向き様の抜き打ち。

 

 流れ星と呼ぶに相応しい速度の〈ジードフリート〉はその数舜ですでに〈トリプル・ホイール〉の射程距離から逃れていた。


 弾丸は届かない。

 

 そのはずだった。


 ガァァンンンン!!!


 しかし、届かないはずの弾丸、その足りない加速力をスキルが力任せに上乗せする。


 減速という概念を知らない弾丸が、〈ジード・フリート〉の翼を撃ち貫き、そのまま、彼方へと消えていく。

 片翼を失いバランスを崩した〈ジード・フリート〉が砂の地面へ墜落するのを確認し、ちょうど〈グローリーロード〉の効果時間も切れたので砂の地面を滑りながら着地する。


 同時に、〈トリプル・ホイール〉の手の中で狙撃銃が砕け散る。


 射撃攻撃強化スキル〈バースト・バースト〉。

 

 超威力、超射程の射撃を一発だけ撃つことができるスキル。

 その威力は破格だが、発射と同時に使用した射撃武器が自壊してしまうリスキーなスキルだが、大抵の相手なら引き金を一度引くだけで勝負をつけられる〈カロリッパー〉ならば大したリスクでは無い。


 そう、大抵の相手なら。

 

 「…唯一の射撃武器引き換えにして片翼だけかぁ…ちょっと割に合わなかったかもなぁ…」


 〈ジード・フリート〉はもう天に昇る流れ星にはなれないだろう。

 しかし、飛行能力を完全に失ったわけではない。

 

 対して、こちらはブレードで(近づいて)決めるしかなくなった。

 まぁ、それは可能だろう。

 スピードの落ちた〈ジード・フリート〉ならば〈トリプル・ホイール〉のスキルと〈カロリッパー〉の読みで、十分捕まえられる。

 イタチごっこからは抜け出せたはずだ。


 ただ…。

 崩れた狙撃銃を見て、残念そうな声が漏れる。


 「あーあ…、ノーダメで余裕を見せたかったんだけどなぁ…初陣で武器壊しちゃうなんて…こりゃぁ妹ポイントは諦めるしかないかな?」



 竜《強者》は目の前の敵だけを見ない。

 常に当たり前の勝利と、その先にあるお宝だけを見つめる。






 …………………





 「…んだぁ…今の…?」


 第一位〈カロリッパー〉の分析に努めていた〈ロボキチ〉が目を見開き、驚愕の声を漏らす。


 「スキル…だよな…?〈ジーク〉は完全に狙撃銃の射程外まで離れてた…威力アップ?いや、ホーミング系でもねえと、あんな雑な振り向き撃ちが当たるわけねえ…にしては弾速が早すぎる…!」


 モニターの中では〈トリプル・ホイール〉の狙撃銃から放たれた弾丸が紫色のエフェクトで線を描き、〈ジード・フリート〉が右のウイングを破壊されて墜落しているところだった。


 「スキルの効果は威力アップで間違いないだろうな。当てたのは〈カロリッパー〉本人の技術だ」


 『あり得ない』、と否定したことを俺が『そうだ』、と断言したことで、〈ロボキチ〉の口が塞がる。


 まあ、普通に考えたらあり得ん。

 体勢の崩れた状態で射程外の標的を片手狙撃銃で撃って当てるなんてことは不可能だ。

 しかし、それを何でもないことの様にできるからこそ、十代の少女にして健堂 斬加は人ではない呼称で呼ばれ続けたのだ。


 「…スキルに関しちゃ、お前の情報に載って無かったよな?」


 責める様なニュアンス。

 知ってて教えなかったのか?って言いたいわけか。


 「使ってるスキルまでは俺もわかんねぇよ。俺が知り得たのは〈トリプル・ホイール〉ってプラモ作品の情報だけだ。ゲーム内で何を付け加えられたのかまではわかんねぇ…断言ができるのは、単純にどっちが必要か?って話だ」


 「あぁ?」


 「”威力”と”命中率”なら、〈カロリッパー〉は”威力”を選ぶんだよ。命中率は自分でどうとでもできるからな。特に銃の威力はゲーム側で決まった数値が設定されてるだろ?スキル(システム)に頼る以外に銃の威力を高める方法はねえんだから」

 

 「…道理…なのか…?」


 「安心しろ、お前はおかしくない。相手がちょっとイカれてるだけだ」


 「お、おぉ…なんか悪りい」


 うん、普通に命中率を自分でどうとでもできるっておかしいからな。

 

 「…あんなのを当然の様にやられちゃ、やっぱ…厳しいな…」


 〈ロボキチ〉は言わなかったが、『厳しい』の前にはきっと『〈ジーク〉の勝ちは』という言葉が入ったのだろう。


 「ああ、だが…〈ジーク〉の《《仕掛け》》がそろそろ来る頃だ」


 〈ジード・フリート〉は片翼を失い、早く飛べなくなったが、〈トリプル・ホイール〉の射撃攻撃を封じることに成功したとも言える。


 近づくしかない第一位に待ち構える〈ジーク〉。

 



 追い詰めているのはいったいどちらだ?

 

Q,〈トリプル・ホイール〉の武器はなんで狙撃銃なの?


A,引き金引いたら終わるんだから、威力や連射性よりも射程あった方が良いでしょ。 by妹


上記の様に、基本的に健堂 斬加こと〈カロリッパー〉の攻撃は一撃必殺というか、スパロボでいう常時”必中”コマンド使ってる終盤の敵みたいなもん。


聖杯戦争で例えると通常攻撃でゲイボルグ。

命中という結果は確定。

槍ニキですら宝具の突きでしかやらねえからな、それ。


なお、剣での攻撃に比べて、銃での攻撃は回避なり防御なりの余地がある。

赤い弓兵が防せいでたのも、投擲だったし。

じゃあ、いいか…とはならねえからな。

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