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プラスチックへ愛を込めて  作者: 田中ドラゴン
天剣を地に落とせ
55/85

ここはゲームだ

ラリホーを唱えた!

〈ロボキチ〉は眠っている!


 あれから、俺の戦いの場は『バープラ』ではなく現実へと舞台を移していた。


 「・・・うーん・・・・・・」


 机の上には素組のプラモデルや改造などに使用して余ったパーツ、以前作成した作品など・・・。

 床にはまだ組み立てていない、箱の中で眠っているプラモ達。


 「なーんも思いつかん・・・」


 俺が今、何をしているのかと言えば、至極シンプルだ。


 『バープラ』で使用する新作のプラモを考えている。


 ちょっと前に羽刈に譲って貰ったプラモと遠条さんの所で買ったレアプラモをミキシングした奴も制作中なのだが、今は一旦、そちらの作業を止めて別の新作の構想を練っている最中だ。




 ・・・あの後、俺達は〈アイギス〉へと戻り、軽く作戦会議の様なことをした。

 個人の〈格納エリア〉から〈アイギス(戦艦)〉へ移動し、銀髪の〈マザーブレイン〉改め〈アイギス(人型)〉を交えた三人で今後の方針を決めたのだ。

 

 ・・・ちなみに〈ロボキチ〉の奴は眠気が限界だったのもあって「今何を話しても頭に入らねえ・・・」と言って落ちた。

 まあ、徹夜で結構ハードなことやってるし、仕方ないだろう。

 

 そのため、ほとんど〈ジーク〉と1対1(サシ)で話した会話を思い出す。


 「私達が第一位に勝てる可能性があるとすれば、機体性能の差です・・・特に、〈リアルプラモ〉は確実に有効なはずです」


 「・・・〈アイギス〉を攻略したことによって俺達の機体が他のプレイヤーより強化されたから・・・確かにアドバンテージではあるけど、そのお前らが今朝、負けたばかりなんだろ?・・・勝機とまではいかないんじゃないか」


 「はい、〈スケルトン〉に迫る性能を獲得した私の〈ジード・フリート〉もスキルの再構成で選べる戦略の幅が広がった〈ロボキチ〉さんの〈ナパーム・スラッガー〉もまとめて、敗北しました」


 「だったら・・・」


 「だからこそです」


 〈ジーク〉は断言する。


 「戦ってみてわかりました・・・第一位はプレイヤー性能特化のプレイヤーです」


 「プレイヤー性能特化って・・・そりゃぁナンバー・ワンプレイヤーのプレイヤースキル(PS)が低いわけないだろ?」


 「プレイヤースキル《PS》ではなくプレイヤーの性能です・・・身近な例で言えば私と〈ロボキチ〉さんとのタイプの違いで考えればわかりやすいですかね」


 「というと?」


 「私の場合はゲーム内で積み重ねたプレイ時間で立ち回りや動きを最適化しています。要はゲームの熟練度ですね。その中にはどの機体パーツをチョイスするか?このパーツはどう動かすのが最適解なのか?という知識面も含まれます」


 〈ジーク〉が続ける。


「対して、〈ロボキチ〉さんの強みは戦略面にあります。リアルで作った機体をどの様に運用すれば最も効果的なのか?どうすればその状況を作れるのか?一言で言えば計画能力が高いんです。これはゲーム内で培われたモノじゃなく、プロのプラモデラーの羽刈さんとしての”能力”と言えます。リアルで得意なことをゲームで活かしている、と言えばいいんですかね・・・第一位はこのタイプです」


 「ゲーム内で磨いた腕とリアルで培った能力の応用・・・って感じか?・・・あんまり大差ない様に感じるけど・・・?」


 「ええ、普通ならこんな区分けに意味はありません。ですが、第一位は違う。一見、私と同じ様にゲームに順応した故の強さに見えますが、その実、動き方は全てリアルの技術・・・実際の身体の動きを重視している感じでした・・・察するにあの人、リアルでもかなり強い・・・武術とかやられているんじゃないでしょうか?」


 当たりだ。

 付け加えるとするなら、”かなり”では済まないくらい強い、達人と言って良い域にいる・・・ということくらいか。


 「恐らく、第一位はゲーム(ここ)現実リアルの延長線とみなして、アバター(身体)を動かしている。実際、それが一番強いやり方なんでしょう・・・だけど、その考え方は違う。ここは仮想の現実であって、現実と同じ法則の世界じゃない」


 仮想の現実は本物の現実とは全く別の世界で決して地続きなんかじゃない、と〈ジーク〉は言う。


 「第一位は現実の身体から抜けられていないんです。バーニアとか人体に無い部分を操れるくらいにはゲームできてますけど、それでも地面を蹴る自分の足の方が高く飛べると思っている。・・・私達が機体を動かしている時に感じる様な、現実の身体より身体が軽くなる感覚とか無いんじゃないですかね?」


 ・・・なんとなくだが、理解はできる。

 健堂 斬加の人間としての性能は規格外と言って良い。

 普通ならゲーム内で自身が操るアバターは現実の身体より優れたモノであるはずだ。

 しかし、健堂 斬加の場合だけは事情が違う。

 アバターが健堂 斬加のリアルの身体に性能で負けるのだ。


 「私の様なプレーヤースキル(PS)・・・ゲームに順応した故の強さではなく、個人の能力でゲームを凌駕しているのが第一位〈カロリッパー〉というプレイヤーなんだと思います」


 身体的にはゲームに来る方が健堂 斬加は弱くなっている・・・だが、そもそも身体の動かし方が卓越しすぎているのもあって、普通に最強、と・・・なるほど、やっぱりあいつ人間じゃねえ。

 人間の身体能力を想定して作られているゲームで、人間以上ってことだろ?

 

 リアルフィクション人間め・・・いや、そういうことか・・・。


 「・・・ここはゲームです。現実の武術・・・人間の身体の動かし方に拘る必要はありません。人間を想定した武術で宇宙戦艦を投げ飛ばしたりはできない・・・。アップデートと〈アイギス〉攻略によって十分な馬力を経た今の私達が、現実では実現不可能な、ゲームならではの戦いをできれば・・・今度こそ!」


 健堂の卓越した動き、最適化された動きとは、リアルの身体を標準としたものであるはずだ。

 つまり、人体の構造を無視できるゲーム内で、わざわざ人体の構造に縛られていると言って良い。


 そこを点ければ・・・もしかしたら!


 「もちろん、今のままでは勝てません。・・・私はこれから〈アイギス〉ちゃんに頼んで、〈宇宙〉エリアでパーツのレベル上げをします。お二人は・・・できれば新しい機体を・・・それも現実では不可能な戦略や攻撃ができる機体を用意するべきだと思います」


 相手はフィクションみたいなバカ性能の存在。

 だが『バープラ(ここ)』はそもそもフィクションの中だ。



 |古野 千景では健堂 斬加に《リアルでは》勝てないが、|〈フルカゲ〉なら〈カロリッパー〉には《ゲームなら》勝てるのかもしれない。



 つまるところ、〈ジーク〉の言い分はこれにつきる。


 ・・・思えば、健堂も同じ様なことを言っていた。


 『ここなら理想の身体を用意できる』。


 つまり対〈カロリッパー〉用の機体を作ることは俺達にとっても、健堂にとっても確定事項なわけだ。


 

 「つってもなぁ・・・」


 あてが全く無いワケじゃ無い。

 例えば、現実に縛られない、現実ではあり得ない、というのであればリアルロボット系ではなくスーパーロボット系の機体がまず思いつく。

 現実の科学ではシステムがわからない謎動力で動き、謎現象を引き起こすスーパーロボットは条件を満たしているだろう。


 敗北した〈ナパーム・スラッガー〉や〈ジード・フリート〉はジャンル分けするならリアルロボット系に属するのだから、逆説的にスーパーロボット系で責めるのは正しいはずだ。


 しかし・・・、これではダメだという気がしてならない。

 もちろんただの直感で、論理的な思考ではない。


 この直感が以前の経験からくる正しいものなのか・・・それともただ弱気になっているだけなのか、判断がつかない。

 

 「・・・うーん・・・・・・・・・」


 考えがまとまらない・・・決心がつかない。


 ピロン!


 目の前のプラモ達を眺めながら唸っていると、突然スマホが鳴った。

 この音はSNSからメッセージが来た音だ。


 あぁ・・・そういえば金剛さんにちょっと忙しくなったから、しばらく会えないって伝えとかないと・・・。


 スマホに意識が向いたことで、思考が中断される。

 もしかしたら、金剛さん本人かもしれないと思ってスマホを見たが、メッセージの送り主は剣道部とは関係無い中学の頃の友人。


 メッセージの本文を見て、背筋が凍った。


 『久しぶり、キッカちゃん(妹の方の健堂な)。が、お前と話がしたいんだと。何したか知らんが、キッカちゃんの連絡先送っとく。PS.今度何があったか聞かせろよ。』




 ・・・どうやら、過去との対峙はまだ終わっていないらしい。

 

 実を言うとジークがカロリッパーと対戦するのは始めてではありません。

 というのも、ジークが第八位の称号に甘んじている理由がカロリッパーだからです。

 トーナメント戦で運悪く、一番最初にカロリッパーと当ってしまってから、ジークはずっと、どうすればカロリッパーに勝てたのか考えていました。

 当のカロリッパーは覚えていません。


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