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プラスチックへ愛を込めて  作者: 田中ドラゴン
ブルーリベリオン
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新天地の宝箱


 『こりゃいい!苦労した甲斐があったぜ!!』


 「おめえは飛び回ってただけでしょうが」


 「アハハ・・・、まあ結構頑張ってましたから・・・」


 

 壁一面を占めるモニターの中では〈ナパームスラッガー〉が軽快な挙動で動き回っている。

 そこから聞こえる〈ロボキチ〉の声は歓喜に満ちたものだ。

 

 俺は〈ブルー・シート〉の姿ではなく、白いスーツに帽子、サングラスのいつもの女ギャング姿に戻っている。

 隣には今さっき俺と一緒に〈ジードフリート〉で報酬の効果を確認し終えた〈ジーク〉。

 〈マザーブレイン〉は床から生える様に出てきた椅子に座っている。

 外した手足は着け直してもらい、俺が破壊した右腕はスペアがあったらしく、今は両手両足揃った状態だ。


 「当艦の有用性は認めていただけたでしょうか?」


 敵対の意思は本当に無いと示したいのか、それとも自身が優れた道具であることを自賛したいのか、(どっちもって感じはするけど)そこはかとなくドヤってる〈マザーブレイン〉。


 「ああ、正直想像以上だった」


 セーフゾーンと化した迎撃旗艦〈アイギス〉のブリッジで、俺達は報酬の確認をしていた。

 報酬とはつまり、俺達の移動拠点となった、この宇宙戦艦〈アイギス〉でできる機体の強化と調整のことだ。


 スキャンされた時点で性能が確定している〈リアルプラモ〉の何を強化し、調整するのか?と思っていたが、蓋を開けてみると強化とは〈ゲーム内機体〉のレベルシステム解放、調整とは〈リアルプラモ〉のスキル調整のことだった。


 まず、〈ジーク〉などアプデ前から遊んでいたゲーマー達にとって『バープラ』はちょっと風変わりな”ロボット対戦格闘ゲーム”だった。

 ほどほどに世界観設定ストーリーモンスター戦(アドベンチャー)要素があるだけのロボ格ゲーだ。

 パーツの組み合わせというカスタマイズ要素があり、自分の選んだパーツに対する理解が深まって熟練していくことはあっても、パーツの性能自体が変ることは無かった。

 使う機体にはどうあっても限界が存在し、しかもその天井は低く、己の腕を磨くのが戦力増強の近道だったのだ。

 それが〈アイギス〉に来れれば、パーツのレベルシステムが解放される様になったのである。

 〈ゲーム内機体〉のパーツ一つ一つにレベルが表記される様になり、使い込めば使い込むほど、そのパーツのレベルは上がり、性能が強化されていく。

 

 今までは同じパーツを使った機体であれば、勝敗を分けるのはプレーヤーの技量(PS)であったのが、今後はどれだけパーツのレベルを上げているか、言いかえれば、どれだけこのゲームをプレイしているか、が勝率へダイレクトに関わってくる様になったのだ。


 実際に〈ジーク〉の〈ジードフリート〉は性能を著しく向上した。

 構成するパーツの平均レベルは、さすがトッププレイヤーというべきか、何と80。

 さすがに〈スケルトン〉より早い、とまでは行かなかったが、追いかけっこ(レース)ができるくらいの性能は手に入れていた。


 一歩譲るとはいえ|機動力偏重〈リアルプラモ〉《スケルトン》に迫る機動力を身につけ、遠距離攻撃手段を選択でき、しかも乗り手が熟練のプレイヤー(ジーク)


 絶対に敵に回したくねえ・・・。

 

 それだけ聞くとこの〈アイギス〉は〈ゲーム内機体〉の復権施設だったわけで、実際そうではあるのだが、〈リアルプラモ〉の強化要素もしっかり存在していたので、やっとイーブンになったという感じだ。


 〈リアルプラモ〉の強化即ち、スキルの最適化。

 再選択と言った方が良いかもしれない。

 スキルはプラモをスキャンした時にシステムが決定するもの。

 大きな射撃武器を持つプラモなら射撃攻撃力に関するスキルが現われる様に、そのプラモに関連性のあるスキルが発現する。

 だが、”射撃に関連するスキル”というだけでも、射程に関するスキル、威力に関するスキル、装弾数に関するスキル、リロードに関するスキル……などなど、膨大な量のスキルが存在するだろう。


 どうやって決めているのかは不明だが、どうやらスキャンシステムはまずプラモのスキルスロット数(容量)を決定し、それより少し多いくらいの数のスキルをピックアップ(選出)する様なのだ。

 つまり、スキャンして最初に発現したスキル達はシステムによって”なんとなく”で選ばれたスキルであって、箱《容量》に収まらないから切り捨てられたスキル達が存在する。

 〈アイギス〉ではその切り落とされたスキルを再選択できるのだ。

 〈格納空間〉でスキルを設定していた時には見られなかった潤沢なスキル欄から最適なスキル構成が可能となる。


 原始生命体迎撃旗艦げんしせいめいたいげいげききかん〈アイギス〉は単なる移動拠点ではなく、機体の能力拡張施設のうりょくかくちょうしせつとして重要な役割を持つ艦だったわけだ。


 「超必殺ウルトスキルもここに到達して設定するのが運営の想定していたチャートだったんだろうな」


 「そうですね…発現率が以上に低いらしいですから」


 そりゃあ、検証班が苦労するわけだよ。

 ただでさえ、見よう見まねで同じ様な作品を仕上げなくちゃならないうえに、スキルガチャの要素まであったんだから。


 「〈フルカゲ〉さんもスキル構成弄らなくていいんですか?」


 「あー…」


 実は先程、強化された〈ジードフリート〉の性能試験に付き合って〈スケルトン〉で出撃することになった時、俺も当然スキル構成を見直して、新生〈スケルトン〉を試そう…と思ったのだ。

 結論から言うと、スキルの再構成はしなかった。

 

 「結構な時間が掛かりそうだから…時間がある時にやるよ…」


 まあ、面倒くさくなったのだ。

 スキル欄を開いた瞬間、閉じた。

 つい先程、俺はかなりシビアな集中力を求められる戦いを終えたばかりである。

 その直後にそこそこ量のあるスキルのテキストを読んで、選別する作業をする気になれなかったのだ。


 〈ロボキチ〉の奴は嬉々としてスキルを構成の見直しを繰返し、〈ナパーム・スラッガー〉で色々試しているが、今日の俺にその元気はもう無い。

 

 「まあ、でも〈スケルトン〉は大して弄るところないかなぁ…」


 〈スケルトン〉に関して言えば今のスキル構成でほとんど最適解だと思っている。

 ぶっちゃげ、これ以上どう弄れば良いのかわからないという感じだ。


 「強いて言うなら…超必殺ウルトスキルかなぁ…」


 「え?あれ変えちゃうんですか?」


 「使い所がねぇ…思ったよりムズくて…」


 あれ(反射)は強力だけど、如何せん使い所が難しすぎる。

 選べるなら近接攻撃系の超必殺スキルにした方が実用的な気がするくらいには。


 「まあ、なんにせよ今日はもう落ちるかなぁ…思ったよりも疲れた…」


 〈ロボキチ〉は当分帰ってきそうにないし、待たなくても良いだろう。

 〈宇宙戦艦〉討伐(鹵獲ろかくになったけど)のクリア報酬がどの程度かも確認出来たし…。

 

 「わかりました、じゃあここをどうするかは次に集まった時ということで…」


 「うん、悪いね、そうさせてくれ」


 どうするか、というのはつまりこの〈アイギス〉の情報を俺達三人で独占するか?それとも他のプレイヤーに流すか?流すとしたらどの様にして公表するのか?ということである。


 先駆者が必ずしも後続に道を示さ無ければならないという義務は無いが、先駆けて新天地に足を踏み入れた者がいるならば、自分もその地へ赴くために先駆者の言葉が欲されるのは世の常だ。


 それに、『バープラ』をこれからも遊ぶのなら、このことは感づかれる可能性が高い。

 特に〈ジードフリート〉は、既存の〈ゲーム内機体〉とは一目でわかる性能差ができてしまっている。

 情報を求めるプレイヤー達(ゾンビ共)に群がられるのは確実だろう。


 なので周知するなら俺達にとって被害の少ない方法で行なう必要があり、場合によっては周知せずに秘匿する(知らぬ存ぜぬで通す)つもりだ。


 俺は、チラリと椅子に座っている銀髪の少女を見て。


 「…まぁ〈アイギス(こいつ)〉の攻略が簡単にできる奴が何人いるんだって話ではあるけどな…」




 そう呟き、〈ジーク〉に「お疲れ」と告げて、俺は寝た。

 〈ゲーム内機体〉のレベルシステム解放時点で、これまで経験値データが反映される形なので、解放時点で〈ジードフリート〉のパーツ平均レベルは80でした。

 ちなみに普通のプレイヤーだと平均50くらい。

 〈ジーク〉の努力が数字になった感じですから内心メッチャ喜んでます。

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