大いなる黒へ蒼による逆襲6
某海賊ガン○ムのマント
ガシャァン!!!!
これからここで起る戦闘に巻き込まれてコンソールやモニターが破損しない様にだろう。
シャッターが床を叩く甲高い音が響いた。
「うぉ!!」
唐突な騒音に驚きの声が漏れてしまったが、それどころではない。
銀髪の―〈マザーブレイン〉と名乗った―少女の左腕が閃く。
ドドドゥ!!!
左手に握った銃。
早撃ちによる三点バースト。
シャッターを落としたのは開戦のドラ代わりというより、意識を逸らすための陽動。
要は不意打ちだ。
俺はわずかに身をよじることしかできなかったが、それで十分だ。
バスバズバス!!
放たれた銃弾は三発ともマントの右腕を包んでいる辺りに着弾する。
しかし、ダメージはおろかノックバックも無い。
「!!」
危険を感じたのだろう銀髪の少女はその場から飛び退く。
マントで隠れていた左腕が姿を見せ、その手にはショットガンが握られていたからだ。
ドガァ!!ドガァ!!
銃を撃った場所に一発。
移動した場所を追ってもう一発。
散弾の範囲攻撃を機敏な動きで回避する〈マザーブレイン〉。
「ブルーシートは弾丸《雨》を弾く素材でできてるんだぜ?・・・にしても不意打ちとは卑怯な」
「そんなものを着こんでおいてよく言います」
〈ブルー・シート〉のマントは銃弾の着弾点を中心にして蜘蛛の巣状の亀裂が入っていた。
パッシブスキル〈六枚の布〉。
このスキルは単発系の射撃攻撃をガードしてくれる。
発動している間は全身を覆い隠すマントの形状も相まって、全方位に盾を構えている様なものだ。
だが、もちろん限度はある。
(亀裂を見る感じ、右腕の布は後一発でオシャカだな)
このマント、実を言うと本物の布製ではない。
『バープラ』のシステムによって本物の布同然に出力されているが、リアルでは布の造形をした硬いプラスチックパーツだ。
首から胸までを覆う基部のパーツから六枚の板状のパーツを垂れ伸ばす形で構成されている。
〈六枚の布〉はこの布の造形を施された六枚の板《布》を盾と見なすのだろう。
(一枚につき大体四発だから・・・二十四発で残り二十一発か)
六枚の布パーツの耐久値はそれぞれ独立しており、攻撃を受けて耐久値が0になったマントは消滅してしまう。
つまり奴奴の攻撃を受ける度に俺は盾が無くなるわけだ。
「おらぁ!!」
マントの中から取りだした手榴弾を右手でぶん投げ、奴が回避行動に出る前に起爆させるためにショットガンを向ける。
「空中起爆と推定」
ドガァ!!ボォォン!!!
早い!回避された。
「逃がすか!!」
ドガァ!!ドガァ!!
続けざまにショットガンを撃ちながら、マントからマシンガンを取り出す。
「その下にどれだけの武装を隠しているのです?」
パァン!!
〈マザーブレイン〉が回避に足を動かしながら、発砲し、右腕を覆い隠していた布パーツに命中する。
着弾した瞬間、布パーツが弾けて、右腕が露わになると同時にマントの内側が少し覗けたのだろう。
「ふむ、一人で乗り込んで来ているのですから、その位の装備は当然と考えるべきですね」
「結構スゴイだろ?マントの下は?」
この六枚の布パーツの内側にはそれぞれ、武装を懸下している。
前面の二枚にはマシンガン二丁と手榴弾六個。
背面の二枚には刀にハンドガンとショットガン。
腕を覆い隠す側面の二枚は分割式のバズーカ。
その内、バズーカと手榴弾一個は消費してしまい、手の内にマシンガンとショットガンがあるので、今の中身ではそれほどインパクトは無いことに言ってから気づくが、それでも多武装な方だろう。
〈ブルー・シート〉のマントはプラパーツ。
これが本物の布製であったなら、ただのマントで終わっていただろうが、プラスチックならばプラモデラーの腕の見せ所だ。
マントなんてロマンしかないパーツ、当然改造するよ。
「そうですね、ですがそれを使うあなたの性能はそこまで高くはない」
「・・・・・・」
その通りだ。
〈ブルー・シート〉は〈スケルトン〉とは真逆のスタイルをしている。
〈スケルトン〉は本体の性能が高い代わりに、武装が少ない。
対して、〈ブルー・シート〉は多武装の代わりに、本体の性能が大したことないのだ。
ぶっちゃげ、マントが本体と言っても過言じゃ無い。
それも有限だ。
〈ゲーム内機体〉なら〈ジードフリート〉の様にリロード様のマガジンを装備できるが、〈リアルプラモ〉の〈ブルー・シート〉にリロードは無い。
―俺の勝ち筋は〈六枚の布〉が活きている内に連射力にモノを言わせて、弾丸をぶち込む!
「そのショットガン、あと何発撃てるんですか?」
俺に都合の悪い考察を、わざわざ口に出す〈マザーブレイン〉。
「リロードはできるので?弾数の少なそうなショットガンで手榴弾を起爆したのは射撃に自信が無いからでは?マントの一部が消失しましたね、四発ですか?あと二十発ですね。マントが消失したらそこに収納していた武装も消えるのでしょうか?」
堰を切った様に、とはまさにこのこと。
意識しているのか知らないが、これは揺さぶりだ。
不安を煽って、思考を狭めようとしている。
確信する。
こいつは性格が悪い。
「射撃武器では四発でしたが・・・斬撃ではどうなんでしょう?」
「ちぃ!」
ドガァ!!ドガァ!!
ガガガガガガガガガガガガ!!!
ショットガンの弾数は六発今ので最後だ。
打ち尽くした左手のショットガンを放り捨て、間髪入れずに右手のマシンガンをぶっ放す。
すぐ様、空いた左手にもう一丁のマシンガンをマントから取り出して引き金を絞る。
「|バトルキャルキュレイト《戦闘時高速演算》、バレットルート」
「嘘だろ!?」
ガガガガガガガガガガガガガガガ!!!
ガガガガガガガガガガガガ!!!
両手のマシンガンは絶え間なく弾丸を吐き出し続けている。
〈マザーブレイン〉は横殴りの弾丸の雨を潜り抜けて、こちらに駆けてくる。
「シッ!」
「クッ!!」
下から掬い上げる様な片手斬り。
〈マザーブレイン〉の持つ日本刀と言うよりは、ブレードと言った方がイメージに合う片刃の剣が〈ブルー・シート〉の左側を隠していた前面のマントを二つに分かち、そのまま側面のマントごと左手のマシンガンも切り裂かれた。
シャァ!!
鋭い物が通り過ぎた風切り音が耳を抜ける。
ブレードの殺傷圏内に入った瞬間、咄嗟にマシンガンの斉射を止めて後ろに飛び下がったことでダメージは免れたが、盾が一気に半分に減らされてしまった。
「コナクソォ!!」
ガガガガガガガ!!
二の太刀を放たれる前に、床に落ちていく最中の、斬り飛ばされた布を残った右手のマシンガンで撃つ。
斬られた前面のマントパーツの内側には手榴弾が懸下してある。
ボボボォォン!!!
斬られた布ごと、完全に消失する前に手榴弾の起爆に成功したことで、後ろに飛んでいた俺は吹っ飛んで、床に這いつくばり、〈マザーブレイン〉もバックステップで下がった。
「どうやら、二十発も打たなくて良さそうですね」
「クソ・・・このスケベ野郎め・・・」
今や〈ブルー・シート〉を守る盾は背中の布二枚と正面の半分ほどを隠す布の一枚。
美プラの素体なんてほとんどビキニアーマーみたいな物なので、ほぼ裸だ。
肩と腹は丸出しだし、太ももは―ストッキングに見せる塗装表現をやって見たかったのだ―光沢のあるストッキング一枚だ。
強いて言うなら肘から手の甲までと、太ももから下はアーマーで覆われているが、気休めにすらならないだろう。
六枚の布を垂らしている基部パーツのおかげで胸までは見えていないが、時間の問題だ。
立ち上がりながら考える。
今ので、手榴弾が全部逝ったので、残りの武装は、〈六枚の布〉三枚(前一、背二)マシンガン(右手、残弾少)ハンドガン、刀。
「おや?裸体が恥ずかしいのですか?・・・では頭を狙うとしましょう」
「!!」
先程よりも早い踏み込み。
やはり、〈マザーブレイン〉本体の性能はかなり高めだ。
―〈スケルトン〉と戦ったプレイヤーの気持ちが少しわかりそうな気がする。
駆けてくる〈マザーブレイン〉にバックステップで後退しながら、もう残弾の少ないマシンガンを投げつけ、左手で背中のマントを掴んで盾を構える様に前に持ってくる。
そのまま、右手でハンドガンを抜き様に撃つ。
引き撃ちで二発。
パパン!
苦し紛れの足掻きに過ぎない。
それすらも無下にあしらわれる。
首を傾け、身体を半身ズラしただけで、弾丸は銀髪の少女の背中へ抜けていく。
引き金を引けたのは二回が限界だった。
水晶の瞳はもう目の前に迫っている。
ガチャ!
眉間からわずか三センチの距離に銃口が現われる。
首を思いっきり振って、銃口から逃れようと頭を動かした所で、気づいた。
―しまった!
動いた俺の眉間を銃口が追って来ない。
その代わり、右手に握られたブレードの切っ先が水平にこちらを捉えていた。
銃を構える左腕が引き始めている。
―刺突、致命傷だ。
銃は初めから撃つ気が無くて、避けさせることで体を崩すことが目的。
切っ先は俺の身体の中心に向って加速を始めている。
―キレイにハマっちまった。
斬撃に対して、〈六枚の布〉は無力。
文字通り、布を裂く様にマントは貫かれるだろう。
「チェックメイトです」
温度が感じられない声と共に
片刃の剣が重ねられた残る三枚のマントを
貫いた。
眉間に銃を構えてからの、牙○零式




