大いなる黒へ蒼による逆襲5
ジーク「うそぉ・・・(どん引き)」
ロボ「うわぁ・・・(どん引き)」
主人公「・・・(反動でひっくり返ってる)」
???「え?何これ???????????????????????????」
〈アッドスキル〉〈轟型機獣砲:劣化模像〉。
レイドボス、〈バスター・ゴリラ〉討伐時の報酬品であるメモリ型のアイテムを使用することでセットできる特殊なスキルだ。
『バープラ』はハック&スラッシュの要素が薄い。
しかし、全く無い訳ではなかった。
普通のハクスラゲーなら敵を倒したら敵の素材がドロップアイテムとなり、その素材を使って武器なり自身なりを強化していくわけだが、『バープラ』ではスキルがドロップするらしい。
このメモリを渡してきた受付嬢のNPCは「定められた基準を満たしましたのでこちらが生成されました」とか言ってたので何かしら特殊な条件があるのは確かだが、何となく簡単に得られる様なものでは無さそうだった。
「い・・・たくはないけど・・・反動やばぁ・・・」
劣化ゴリバスをぶっ放した俺は反動によって、背にしていた扉に身体を強く押し当てられ、破壊されまいと踏ん張ろうとした扉の抵抗も虚しく、扉をぶちぬいて〈宇宙戦艦〉の中へと侵入していた。
扉の先は見た目よりも広く、重力が普通にある。
外観の見た目よりも小綺麗で近未来的な印象の通路だ。
まあ、ワームホールだとか〈格納空間〉だとかがある世界観だからな。
デザインを損なわずとも実用性を増すインチキは『バープラ』では可能なのだろう。
見た目よりも中身が広いとかはもう気にしない方が良いのかもしれない。
尻餅をついた〈ブルー・シート〉の右腕からパキャっ!と割れる様な音が鳴る。
視線をやると、劣化ゴリバスが砕けて、破片が霧散した。
〈轟型機獣砲:劣化模像〉はレイドボスの持っていたスキルだけあって強力だった。
だが、どこかに長じればどこかが短じるのは世界の理り。
劣化ゴリバスの場合はまず、その大規模破壊力を放てるのは一発だけ。
次に打てるのは何と一週間後という驚異のリキャストタイムだ。
まあでも、これは妥当と言える。
こんなもんをバカスカぶっ放して良いはずがない。
良いはずがないんだぞ?クソゴリラ。
まずいのは、このスキルを使用する場合、自身の持つ一番火力の高い射撃武器が使用不可能となること。
そして、このスキルをセットするには、スキルスロットの超必殺スキルの枠と任意のスキル枠一つの合計二つを使用していることだ。
バズーカはともかく、任意スキルの枠が一つ潰れているのがメチャクチャ辛い。
ぶっ放した後のことを全く考えていない。
俺これからこの艦どうにかしなくちゃならないんだぜ?
そのうえ、〈ブルー・シート〉はスケールが小さいせいか、単純にプラモ作り初期の作品でクオリティが足りなかったのか、セット可能なスキル数が少ない。
その数は何と四つ。
劣化ゴリバスに二枠使ってしまっているので、残りはパッシブスキルと任意のスキルが一つずつだ。
「まあ、どうにかしてやるしかないな・・・」
扉を吹っ飛ばしながら侵入した衝撃で外れたサングラスを拾う。
良かった、割れてない。
装備している訳じゃ無いから普通に壊れてロストしちゃうかもだったからな。
それでもサングラスをしたおかげで、劣化ゴリバスの閃光から目が守れた。
即時行動に支障は無い。
「さて、さすがに今ので侵入してるってのはバレているはずだよな?」
扉壊してるし、現在地もバレているだろう。
しかし、ここで接敵時のラッキーが効いてくる。
本来の想定なら〈宇宙戦艦〉は三艦だった。
位置的に可能なら、二艦を貫く形で劣化ゴリバスを使うつもりだったが、それができるかは運任せだ。
だから最低でも一艦は劣化ゴリバスで排除し、俺は〈ブルー・シート〉で侵入した艦を制圧・破壊する。
なるべくなら制圧がベストだ。
時限爆弾なんて持っていないのだから内部からの破壊はイコールで自爆と同義だ。
もちろん、やむを得ない場合はその選択指を取るが、俺だって勝利の美酒は飲みたい。
そうなると、目的地はこの艦の頭脳部分。
ブリッジとなる。
ここまでが俺の役割。
残りの一艦は制圧した艦の武装が使えれば俺が、無理なら外の二人が混乱の隙をついて接近し、何とかする予定だった。
だが、実際に出てきた〈宇宙戦艦〉は二艦。
すでに一艦排除して、残るはこの艦のみ。
つまり、俺はこの艦の制圧・破壊に余力を残す必要が無い。
外の二人も畳みかけに来るだろう。
「そんじゃあ、温存しないで使っちまおうか」
劣化ゴリバスに続いて〈ブルー・シート〉の二枚目の反則カードを切らせてもらうぜ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〈フルカゲ〉が潜入した艦のメインコンピューター旗艦〈アイギス〉は選択を迫られていた。
おかしい。
護衛艦〈イジス〉を破壊した攻撃は当艦から放たれたことは確実だ。
そして、放たれたと思わしき場所から遠くない位置にある扉は破壊されている。
敵はすでに艦内に侵入しているはずだ。
だが、この艦は自分の身体も同然。
艦内にいるのなら、見つけられないはずが無い。
白兵戦用の迎撃ロボを出動させるか?
敵の位置もわからないのに?
防衛に出すにしてもロボットの動きから重要箇所の場所がバレる可能性がある。
エンジンブロックなど火器の使いづらい場所に向われた場合、艦に損傷を出さずに侵入者だけを排除するのは困難な可能性が高い。
隔壁を閉める?
いや、戦闘中だ。
外の敵より中の敵の排除を優先するべきだ。
隔壁で閉じ込めてしまっては、敵を抱え込むことになる。
なにより侵入者の姿は確認できていないのだ、本当に閉じ込められたか判断ができない。
様々な選択指を浮かべ、自問自答を繰返し・・・そして・・・
「・・・・・・ならば、とるべき選択は・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
外から見たらありえない程広い通路を進み、他の扉とは明らかに作りの違う、何かのマークが記された扉が自動で開く。
その部屋に椅子は見当たら無い。
壁際に恐らくこの艦を動かすためであろう、大きめのコンソールが並んでいる。
「待っていました、侵入者」
開いた扉の先には水晶の様な瞳の女の子がいた。
背中まで伸びている髪は銀髪で、ダイビングスーツの様な首から下を覆うボディスーツを着ている。
「扉が開いた、ということはいるんでしょう?姿を見せたらどうですか?」
感情が感じられない瞳だ。
「・・・どうやら、待っててくれたみたいだな」
そろそろスキルの時間も切れることだし、良いだろう。
喋ると同時にスキルを解除し、〈ブルー・シート〉の姿が現れる。
「・・・人間サイズでそれほどの隠密性能とは・・・」
「ブルーシートってのは見られたくない物を隠すのに使われるもんだぜ」
劣化ゴリバスを除けば、〈ブルー・シート〉唯一の任意発動スキル。
その名は〈ナイトベール〉。
その効果は夜などの暗所判定を持つフィールドにおいての《《完全不可知化》》。
このスキルを使えば暗所限定とはいえ、元から発見困難なスケールの〈ブルー・シート〉を知覚するのはほぼ不可能になる。
使用条件は暗所の判定があるフィールドであることと、マントの耐久値が破損していないこと。
スキルの稼働時間は7分で、一度使用したら再使用に24時間かかる。
もちろん攻撃をしたりダメージを受けたりしても解除されるが、それを差し引いてもイカレてる部類のスキルだろう。
スキルのテキストを開いて”不可視”ではなく”不可知”の文字を見た瞬間、意味がわからなくて固まってしまったほどだ。
そして、少し不安だったが〈宇宙〉は無事に暗所と判定された。
「太陽の光があるのを昼間と定義するなら、ここはそれが薄すぎたな」
このスキルが出た要因は恐らくマントに使用した塗料のおかげだ。
確か”ナイトブラックブルー”という偏光パール塗料で、見ようによっては濃紺の蒼や黒に見えることから、全体的に深みのある黒を表現できる・・・ちょっとお高めの塗料だったはず。
その塗料と全身を覆い隠すマントの造形が合わさって発現に至ったスキルだろう。
(うーん・・・でもここまでイカレたスキルが出るってことは完成度は一定ラインを超えてると思うんだよなぁ・・・なんでスキルスロットは少ないんだろう?やっぱスケール?)
スキルの数が四つということに心のどこかで不満があったのだろう、余計なことを考えていたら、銀髪の少女の機械的な声が部屋に響く。
「それでも誘導は成功しました。ここに来るまでスムーズだったとは思いませんか?」
・・・誘導。
つまりおびき出されたということだ。
時間《7分》ギリギリで到着出来たのは、この少女のお導きがあったかららしい。
「・・・まあ、少し順調過ぎるなとは思っていたさ」
嘘です。
たった7分でマップ無しの目的地に着けるとか今日の俺冴えてね?とか思ってました。
「ほう・・・さすが、ここまで来るだけはありますね」
銀髪の少女の両手に虚空から現れた武器が握られる。
右手に剣。
左手に拳銃。
随分と渋いスタイルじゃないか。
お喋りの時間は終わりらしい。
「当艦をこれほど追い詰めた相手・・・あなたの様な人ならば油断はしません。原始生命体迎撃旗艦〈アイギス〉。そのメインユニットたる〈マザーブレイン〉があなたを排除します」
高性能なのは確かだな。
随分と人間っぽい奴だ。
マザブレ「大規模破壊砲・・・完全ステルス・・・この人間ただ者ではない・・・!」
主人公「やべぇ・・・スキルねえ・・・」




