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プラスチックへ愛を込めて  作者: 田中ドラゴン
バーチャル・プラモデル・オンライン
4/85

白いギャングと鋼の骨


 アップデート当日。

 ロボ野郎は「その日は無理」と来やがった。

 慣れないオンラインゲームで、案内役が欲しかったのだが•••、しかたない。

 

 「さて、やるか・・・!」


 VRヘッドセットを頭に被る。

 ベッドへ横になり、側頭部にあるスイッチを入れると、ゆっくり眠るみたいに意識が落ちていく。

 そして、映像が流れ始める。


 『遙か昔・・・・・・・・・』


 ストーリーか。

 ネットサーフィンしてる時に見ちゃったんだよな・・・。

 

 スキップするのもなんだから、見るけど。


 大昔に存在した超古代文明が蘇って現行人類との戦争になり、超古代文明はその技術力と物量で現行人類を圧倒した。

 このままでは現行人類に未来は無い・・・、人類はその知恵の全てを使って、超古代文明の技術を解析する。

 その結果、空想の兵器を実体化する技術を人類も確立した。

 

 つまり、超古代文明は想像した兵器を実体化する技術で、戦争してたわけだ・・・そりゃ勝てんわ。


 で、その空想の兵器ってのがプレイヤーからしたらスキャンしたプラモデルってわけだ。

 

 まあ、時間があったらストーリーを進めてみるのもありかもしれない。

 

 映像が終わると、目の前にマネキンがでてきた。

 アバターのキャラメイクだ。


 「あー、そうだ・・・これがあった、どうすっかなぁ・・・」


 ハッキリ言ってこういうの面倒い。

 どうせゲームなのだから他人の目なんかどうでも良いや・・・と適当に作っても良いのだが、〈バープラ〉はオンラインゲーム。

 不特定多数の人間に俺と俺のプラモデルが見られるのだ。

 

 俺は、オンラインゲームという物をやったことが無い。

 人が集まる以上、オンラインゲーム特有のルールとかマナーみたいなモノもあるだろう。

 それを知らないことは仕方がないが、進んで破りたい訳でもない。


 では、知らない界隈で、ある程度ルールやマナーを守ためにはどうすれば良い?


 簡単だ、リアルでのルールやマナーを参考にすれば良い。

 ルールやマナーってのは大勢の人間が互いを害さないためのモノなんだからな。

 

 もちろんゲームであるってことを忘れて、こだわりすぎるのはナンセンスだが。

 

 この場合は外出するのと同じようなものと考えるべきろう。

 そう結論づける。


 それに俺の使うプラモデルは〈エンジョウ模型店〉にリアルで展示されていて、しかもちょっと特徴的だ。

 

 まあ、明らかに考えすぎではあるのだが、リアルの物をそのままゲームに持ち込む以上、リアルバレを恐れる気持ちが出てきてしまう。


 いっそリアルの俺とは、かけ離れた容姿にするか・・・。

 

 そう思い、性別を女性にして、身長を低くするのはコーディネートがしづらいので、逆に高くする。

 顔は・・・まあ、あんまり細かく弄るの面倒いから、目だけ猫目にして、髪型は背中まで伸ばした長髪。

 服は・・・ん?


 「やけに多いな?」


 アップデートの影響だろうか?

 まあ、課金の表示もでないし、多く選べるのは悪いことじゃない。


 長身だからー・・・シンプルにスーツとか似合うんじゃね?大人っぽいし。

 

 学生の俺からしたら着る機会が無いと同時に、普段から制服という似たような衣類を着ているから動きやすいかもしれない。

 

 あ、でもスカートはちょっと遠慮したいから、下はズボンのやつにして、と。

 そうして、できあがったのは目つきの悪いOLって感じのアバター。

 うーん・・・、余りにもゲーム感が無い。


 そう思って、小物を追加する。

 えーと・・・追加して合いそうなのは・・・。

 中折れ帽子とサングラスを追加。

 で、スーツの色を白に変えると・・・。


 うん、ギャングだなこれ。


 まあ、リアルっぽくは無いし、サングラスで表情もわかりづらいから・・・、うん、まあ、良いんじゃないか?

 人と会話したくない時は、無口なギャングのロールプレイすれば通りそうだし・・・。

 

 ・・・よし、キャラメイクは完了。

 プレイヤーネームは、プラモをスキャンした時に入れちゃってるから〈フルカゲ〉から変えられない、と・・・。


 これで、ゲームを始める準備は全て完了した。


 完了ボタンを選択肢、やり直しの猶予として10秒が終わると、アナウンスが流れる。


 『〈バーチャル・プラモデル・オンライン〉へようこそ!それではプラモデル世界をお楽しみください。』


 そして、目の前が暗転し、パッと明るくなると・・・、空港の様な場所のラウンジに立っていた。

 すぐ近くに鏡が飾られていて、そこに映る自分の姿は今しがた自分でデザインした白い女ギャング。


 周りにはアニメのパイロットスーツっぽいのを着ている男と、魔法使いみたいな格好をした女が談笑している。


 まるでコスプレ会場みたいだ。

 

 まあ、世界観の統一は完全にはできないよな。

 そう思いつつも、ゲームでしか味わえない非日常感というのは確かにあって、ワクワクしている自分がいる。


 ポンっと、音をたてて、目の前にウインドウが表示される。


『まずは、格納空間に行ってみましょう。そちらで、スキャンしたプラモデルの設定ができます!』


 チュートリアルか、まずは機体を拝ませてくれるってわけだ。


 指示に従ってメニューウインドウを開き、格納空間に移動する。


 移動した瞬間、視界に飛び込んできたのは巨大なロボット。

 一目でわかる。

 俺の作った〈アファム〉だ。


 「うおお!!こうなんのか!すげえな!!」


 思わず、声を上げてしまった。

 アバターの性別を女にしたから、普段よりちょっと声が高いのだが、そんなことが気にならないくらいの迫力だ。


 二足歩行の、人の形を模したロボット。

 この〈アファム〉の最大の特徴は全身の外装部分が透明度の高いクリアパーツでできていることだ。

 要は、普通は外装で隠れて見えなくなる内部フレームが見える使用。

 

 その姿はまるで、ガラスの外装を纏ったロボットだ。


 キャンペーン限定プラモだったので素組みでも良いかと思ったのだが、エンジョウさんがお店に展示してくれるということで、無駄に凝ってしまったのがこの〈アファム〉だ。


 内部フレームを微妙に違う鋼の色で色分け塗装し、パーツによってはグラデーションをかけ、合わせ目、スジ彫りなどディテールの調整をするなど、かなり手間をかけた。

 

 我ながら、必要以上に作り込んだという自負がある。


 なにせ、このクリア外装、簡単に脱着ができる。

 接続に磁石を使っていて、例えば右半身だけフレームを向きだしにするといった飾り方が簡単にできるのだ。

 

 クリアパーツで遮られることなくフレームの色をより正確に見ることができるから、実際に使った塗料の見本にもなるだろうと思ったのだが、「パーツ無くすと怖いから・・・」とエンジョウさんは外装はつけたままショーケースで展示していた。

 苦労して、作り込んだ意味ぃ・・・。

 

 〈アファム〉の足下にあるコンソールで、設定を確認する。

 

 「えーと、確か、アプデでスキルがセットできる様になったんだっけか?」

 

 アプデ前はスキャンした時点でプラモの性能が決まり、その性能で闘うしかなかった。

 それが今回のアップデートで、スキルという要素が追加された。

 これは、〈ゲーム内プラモ〉には無い要素であるため、スキルの恩恵を受けられるのは、〈リアルプラモ〉だけということだ。

 

 どういうスキルが使えるのかは、そのプラモデルの特徴や出典元の作品設定によるらしい。


 「おぉ、結構あるな、ん?これはレアスキルか?」


 作り込んだだけあって、俺の〈アファム〉は選べるスキルが10個くらいある。

 セットできる枠は7個だ。


 パッシブが3つに任意使用のが3つ。

 それと、超必殺技ウルトとでも言う様な、条件付きだが強力なものが1つで、7個だ。


 1つだけ、文字の色が金色のスキルがある。

 見た感じ超必殺のスキルだが・・・、これは名前からして明らかに、この全身クリア外装のせいで得たスキルだな。

 テキストを読んだ感じ、使うタイミングが難しそうだが文字の色が他と違うってことはレア度が高いってことで、優秀なんだろう。

 そう思ってとりあえず、それをセット。


 他はパッシブに、

 〈特注ブースター〉(機動力上昇、ブースターの使用時間の増加)

 〈近接力大〉(格闘攻撃の威力上昇)

 〈リアクティブアーマー〉(被弾時に確率でダメージ半減、被弾した箇所の装甲が分離し、装甲が少なくなるほど機動性は上昇し、防御力は低下する)

 

 任意発動に、

 〈ハイ・マニューバ〉(ブースターの機能全てを使用し限界速度で突進、:進路変更不可、距離の制限あり、使用後20秒間ブースター使用不可)

 〈一刀入魂〉(発動後、最初に繰り出した斬撃属性の攻撃に補正:武器を一つしか手に持っていない状態のみ使用可能)

 〈装甲パージ〉(装甲を排除し、機動性能を上げる:防御力の著しい低下、格納空間に戻らないと再装着不可)


 「こんなもんか・・・。」


 と、スキル欄を見直して・・・。


 「まあ、機体がそうだからしかたないけど・・・防御系のスキルがほぼ無いのはキツイな・・・。」


 武装が右腕部に内蔵されているエネルギーブレードと胸部バルカンだけだから、近接、機動力系のスキルばかりだ。


 「素立ちで飾る想定で作ったからなぁ・・・やっぱ、ライフルとシールドも作るべきだったか・・・。」


 どうやら、機体本体に内蔵された武器しか使用できないので、エネルギー効率やスピード、近接能力が高い機体としてスキャンされたようなのだ。


 装甲を脱着式にしたことで、リアクティブアーマーが貰えたのが救いだが、元々の耐久力が高くないのに、防御力がガンガン下がるから無いよりマシくらいだなぁ。


 作り込んだ甲斐もあって、性能自体は悪く無さそうなのだが・・・、初心者で使いこなせるだろうか?


 「まあ、やってみるしかないか。」


 そう言って最後に、機体名称の欄を変える。

 要は作品名だ。

 今は、頭の上に〈ヒルカゲ〉とプレイヤーネームが表示されているが、この機体に乗っている間は機体名が頭の上に表示される。


 そして機体名はすでに決まっている。

 見たまんまだけど。


 「機体名は・・・〈スケルトン〉!」


・・・厳密には装甲って、服にあたるんだろうけど、ロボットの内装は骨組みみたいなもんだし・・・、まあ、骨ということで・・・。


〈透けるトン〉とかかけてない。

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