大いなる黒へ蒼による逆襲1
「うーん、手詰まり・・・」
〈格納空間〉で〈スケルトン〉のスキル一覧を眺めながら独り言が漏れる。
約束の時間まで後30分を切ってしまった。
今日はあの憎き〈宇宙戦艦〉を撃滅するためにもう一度3人で集まる日。
正攻法の突撃では攻略は難しいため、何かしらのアイディアや作戦を考えてこよう、ということになっている。
しかし、何も思いつかない。
「・・・この機体、そもそものスタイルが、力押しなんだよなぁ」
〈スケルトン〉の全体的なコンセプトがスピードでゴリ押し、である。
唯一搦め手と呼べる〈リアクティブ・クリア・ミラー〉による反射は一発屋だ。
それも長距離砲撃にタイミングを合わせるとなると難しいし、近づくにしても奴は実弾属性の攻撃も搭載している様だった。
〈リアクティブ・クリア・ミラー〉による反射が可能なのはビーム属性の射撃攻撃だけだ。
セットしていないスキルも今付けているスキルの下位互換でしかない。
スキルを付け替えたとして、特に変ることは無いだろう。
だが、〈スケルトン〉以外に選択肢が無いのも事実だ。
「・・・〈ジーク〉にはプレイヤースキルと経験がある・・・・・・〈ロボキチ〉はプラモのスキャンをしてたから新しく得たスキルを軸にアイディアを練るだろう・・・」
そう、このままでは自分だけノープランで行くことになってしまう。
それはまずい。
「クソぉ・・・〈ジーク〉はともかくロボ野郎は絶対、煽って来る・・・」
一人だけ、何の案も無しに集まれば軍服幼女のムカつく顔を見ることになるのは確実だ。
だって逆の立場なら俺もそうするもん。
普段は俺が煽ることが多いからこそ、ここぞという時を逃す〈ロボキチ〉では無いはずだ。
なんて性格の悪い奴なんだ。
これはもう背中から刺した方が世界のためなのでは?
「いかんいかん、思考が邪悪な方へと・・・おのれロボ野郎め・・・」
わかっていることをまとめよう。
〈宇宙戦艦〉は・・・
・戦艦の数はプレイヤー数に比例する(俺達の場合は3艦)。
・開幕は長距離砲撃とそれによる弾幕形成で接近を妨害される。
・攻撃はビームメインだが実弾系もある。
・狙撃によるヘイトの誘導は可能。
・後退はほぼ無意味。
・・・・・・・・・・・・・・・ダメだな、やっぱり何も思いつかん。
「はぁ・・・、もう二人に丸投げするかなぁ・・・ 」
ていうか、ロボ野郎に関しては新しいスキルがあるんだからアイディア出て当たり前じゃね?
作戦やらを考えるにしてもあいつの機体性能がわからなくちゃ現実的かどうかわからんし。
こんなことなら、俺も押し入れから昔作ったプラモデル漁ってスキャンしてくれば良かった・・・〈エンジョウ模型店〉には行ってるわけだし・・・。
約束の時間まであと20分。
待ち合わせ場所に向かうには少し早い。
そういえば待ち合わせ場所には、今の白いパンツスーツの女ギャングの姿と変装のために用意した〈ブルー・シート〉のどちらの姿で行くべきだろうか?
先日のPVPのせいで〈スケルトン〉のクリア外装が〈リアクティブ・アーマー〉であることは露見した様だから、以前ほど話しかけてくる輩はいなくなったはずだ。
まあ、まだ〈リアクティブ・クリア・ミラー〉は再現されていないらしいが・・・。
正直、もう変装が必要というほどでは無いのだから、〈ブルー・シート〉で行く必要はない。
ふと、〈スケルトン〉の隣の区画を見る。
スペースの真ん中で椅子に座っている深い黒色のマントで全身を隠した少女。
水色のツインテールの毛先にピンク色でグラデーションをかけてあり、毛先に火が付いている様にも見える。
「・・・そういえば、スキルのセットしてなかったな」
〈ブルー・シート〉にもスキルは発現しているはずだが、確か時間がなかったのと変装用なので特に重視していなかったので、セットしていなかった。
「時間もあるし、ついでにセットしていくか」
まあ、〈スケルトン〉ほど変わり種のプラモデルではないし、大したスキルは無いだろう。
場合によっては〈バスター・ゴリラ〉の討伐報酬で手に入れた《《アレ》》を使うのも良いかもしれない・・・。
「・・・・・・・!!」
閃めいた。
もし今、頭の上に電球があったら太陽の様に光っていたかもしれない。
さっきまで何も思いつかなかった脳みそはキッカケを見つけた瞬間、次々と考えを連想させる。
「いや、まて、まずは可能かどうか調べないと・・・」
俺はまだ『バープラ』のシステムを熟知しているとは言えない。
コンソールを操作し、ネットで『バープラ』の攻略サイトを表示しながら、〈ブルー・シート〉のスキル一覧を表示する。
時間が差し迫っているので同時作業だ。
といっても攻略サイトの方は検索をかけて、表示するだけなのでそこまで脳の容量は使わない。
なので、スキルの方に注力するつもりだったが・・・
「なんだコレ?」
スキルを見て思わず思考を止めてしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「遅っせえな・・・あいつ」
「何かあったんでしょうか?」
〈工場〉エリアにある酒場で落ち合った〈ジーク〉と〈ロボキチ〉は〈フルカゲ〉を待っていた。
すでに待ち合わせ時間を30分オーバーしている。
「いや、ログインはしてるっぽいんだよな」
コンソールでフレンド欄を表示して見ると確かに〈フルカゲ〉はインしていた。
「ホントですね・・・あ、もしかしてまた他のプレイヤーの人達に詰め寄られているんでしょうか?」
「あー、かもしれねえなぁ・・・無駄に有名になってるから・・・」
あなたも十分有名人ですよ、とは口に出さなかった。
先日のPVP騒ぎでこの軍服幼女もまた、〈スケルトン〉の〈フルカゲ〉同様、頻繁に名前が上がる様になっている。
〈フルカゲ〉の名前に乗っかって、というわけではなく、こっちはリアルが羽刈鋳造という名の知れたプラモデラーであることが原因だ。
そのせいで羽刈鋳造と同様に〈フルカゲ〉もリアルで有名なモデラーなのではないかとネットで騒がれている。
「反射のスキルが未だに再現できてねえって話だしな。本人の話を聞きたい奴はまだ多いだろうよ」
「皆クリア外装とリアクティブ・アーマーの合わせ技だって思いましたもんね・・・」
再現ができていない、ということはまだ足りない要素があるのだろう。
葉美として実際に〈スケルトン〉を観ることができた〈ジーク〉はおろか〈ロボキチ〉でさえ、他に何の要素があってあの反射のスキルが発現したのかわかっていない。
一体、古野 千景はどんな風に〈スケルトン〉を作ったのだろう?
それとも、まさかオンリーワンの要素だとでもいうのだろうか・・・?
他に使えるプレイヤーがいなければ実質そうだ。
再現が可能になるまではユニークスキル扱いだと言っても過言じゃない。
(・・・この羽刈って人も有名なプラモデラーらしいし・・・もしかして自分はとんでもない人に師事してしまったんじゃないだろうか?)
「お、来やがった」
「え?」
向かいに座った〈ロボキチ〉が入り口をの方を見て呟くが白い女ギャングは視界に映らない。
代わりに深い黒のマントで全身を隠した水色のツインテールの女の子がこちらに近づいて来る。
毛先だけが燃えている様なのが目に付く。
「いやー、すまんすまん、遅れた」
「遅えよ!何してたんだよ」
「え?・・・え?・・・?」
軍服幼女と全身マント少女の顔を交互に見る。
「秘策を持って来たのさ」
ニヤリと笑ったその顔はかつてレイドボスを討伐する時にも見たことがあった。




