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プラスチックへ愛を込めて  作者: 田中ドラゴン
ブルーリベリオン
31/85

未知への挑戦、人はそれを冒険と呼ぶ


 「面白そうだ」、なんて言っておきながら、内心では、『どうせ大したことじゃないんだろうな』、と思っていなかったと言えば嘘になる。


 なぜなら、ここ〈廃都〉とその直前にある〈荒野〉エリアは『バープラ』を始めたプレイヤーが最初に赴くエリアであり、基本的に人がいない期間がなく、探索の類がしやすい初心者エリアだからである。


 興味はあったが大してワクワクはしていなかった。


 そんな場所に今さら大発見があるわけない。


 トッププレイヤーである〈ジーク〉が一目見れば『ああ、なんだこれのことか・・・』と、少し残念な気持ちとやっぱりね、っていう気持ちの混ざった説明が聞けるんだろうと、そう考えていた。


 「え?なにコレ・・・?」


 だから、そんな〈ジーク〉の不思議そうな呟きを聞いて、驚いた。


 「え?〈ジーク〉にもわからないのか?」


 「マジかよ・・・、トッププレイヤーがわかんねえ様な物が初級のエリアにあるモンなのか・・・?」


 俺達がいるのは〈廃都〉エリアに無数に建っているビルの屋上。

 その床に空いた、否、開いた大穴だ。


 本来なら、下の階が見えるはずなのだが、その大穴の先は完全な闇だった。


 「どいいう経緯で、見つけたんですか?」


 「・・・ドローンの設置ポイントに向うのに、結構なスピードでビルの上を移動してたんだよ。・・・で、このビルに飛び移った時、着地をミスってな・・・、落ちこそしなかったが、派手に転んだ。そしたら、その衝撃で床が崩れたってわけだ」


 「マヌケぇ」


 「ビルからつき落とされてえのか?」


 やつてみろ、お前も道連れにしてやる。

 その場合、先に地面に抱擁されるのはお前だぜ。


 「やっぱり、バグでしょうか・・・?」


 「だよなぁ・・・真っ黒だし・・・」


 ゲームの表層テクスチャが剥がれて、デジタルな部分(中身)が見えてしまっている状態なのでは?

 俺と〈ジーク〉はそう思った。


 「いや、そうは思えねえんだよな」

 

 しかしロボキチはそうは思わなかった。


 「この穴の形よお、やけにキレイだと思わねえか?何つーか崩れるべくして崩れたっつーか、デザインされた崩れ方に見えんだよな」


 「これで正常な状態ってことですか?」


 ・・・〈ロボキチ〉は雑誌に載れる位のミキシング・プラモデラーだ。

 その加工・表現の技術が確かなのは前提だが、そういう商業向けの雑誌に載るには一定のデザインセンスが求められる。


 自分が満足すればそれで良いとする俺と違い、自分が満足する物を作りながらも大多数に認められるほどのデザインセンス。


 それを持ち合わせている〈ロボキチ〉が「これはデザインされたものだ」と判断したならば、それはそうなのだろうと、俺は思う。


 「じゃあ、とりあえず飛び込んでみるか?」


 「ちょっ!ダメですよ!!もしバグだったら、データが破損とかするかもしれないんですよ!?」


 「ロボ、この崩れ方は想定された崩れ方なんだよな?」


 「・・・ああ、間違いねえ。俺がスっ転んだ衝撃だけで、この崩れ方はありえねえ」


 「いやいや!偶然そういう崩れ方をするかもしれないじゃないですか!」


 バグか、それとも正常なシステムか。

 どちらかわからない微妙なライン。

 

 そう思うと、ますます、この真っ暗な穴は怪しく見える。


 繰返しになるが、ここは初級のエリアだ。

 もし、これが正常なシステムだとしたら、第一発見者が俺達とは限らない。

 俺達より前にこの穴を発見したプレイヤーはバグと判断した、と見るべきだろう。


 それに・・・このゲームの運営は変っている。

 

 どういう意図があるのか知らないが、直近でアプデがあったのに、レイドボスのモーション変更をサイレントで隠す様な運営だ。

 俺は、他にもサイレントで追加された要素があるんじゃないか、と疑っている。

 

 公式発表されたアップデート情報にこんな穴のことはなかったが、もしかすると・・・・・・。


 ・・・ワクワクしてくるじゃないか。


 「よし、飛び込んでみるか。〈ジーク〉はここに残ってくれ、・・・ロボはどうする?」


 「・・・おいおい、割り込むんじゃねえよ。この穴見つけたのは俺だぜ?飛び込むなら俺が一番乗りに決まってんだろうが」


 やっぱり乗り気かよ。


 「ダメですよ!!最悪、機体が使えなくなっちゃうかもしれないんですよ!?」


 「〈フルカゲ(こいつ)〉は始めたばっかだし、俺は引退してた身だからな。今さら、初めからになったところで大して痛くねえ、ってことだろ?」


 「わかってるじゃねえか。・・・だけど口に出したのはマイナスだな・・・」


 「あ?」


 「なら、僕も行きます!!」


 ほらな?

 〈ジーク〉が、俺達を見捨てる様なことを許容するとは思えない。

 俺達が行くなら僕も行く、だから止めてくれ。

 そういう流れになるんじゃないかと危惧していた。


 だからセリフも用意してたよ。

 ギャングっぽくな。


 「〈ジーク〉・・・これはバカな奴等のくだらない興味だ。この穴に飛び込んだらどうなるんだろう?ってな。これがあんたの言う通りただのバグだったなら、あんたの方が失う物が大きいんだぜ?こんな行きずりの奴等の思いつきで、今まで積上げた物をドブに捨てても良いのか?」


 「・・・ここで、あなた達を見捨てる様な奴なら、どっちみち僕は終わりです。それなら、友達を信じる選択の方が良い」


 「・・・こっから先はあんた自身の選択だ。どうなっても責任は取れねえぞ?」


 「くどい」


 脅す様な物言いに、〈ジーク〉もノってくる。

 

 「・・・それに、冒険ってそういうモノでしょう?」


 

 ・・・本当に刺さるセリフを言ってくれる。


 そう言うなら、もはや止める言葉は無い。

 こりゃぁ、ただのバグでした、じゃあカッコがつかないぜ、ロボ?

 

 「クククっ・・・まあ大丈夫だと思うぜ。今、思い出した」


 今のやりとりを良い、と思ったのか笑いながら〈ロボキチ〉が言った。


 「・・・何を?」


 〈ジーク〉が知らないこのゲームの物をお前が知っているはずないと思うのだが?


 「なんか、どっかで見た感じがすると思ったら、アレだ。お前らがぶっ倒した〈バスゴリ〉(バスターゴリラ)のテナガサル。あいつらが出てきたワームホールに雰囲気が似てると思わねえか?」


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