ロボ式PVP術
「・・・今、何した・・・?」
「何で、あの早さで地面に激突して、無事なんだよ・・・」
「〈ガグル〉バラっバラじゃん・・・、あそこまでするか普通・・・」
〈ジャン〉&〈スルメ〉対〈ロボキチ〉&〈フルカゲ〉が2on2で試合をすると聞いて、観戦に来たプレイヤー達は戦慄いていた。
現在『バープラ』を騒がしている硝子の外装を纏う機体〈スケルトン〉。
その主たるプレイヤー〈フルカゲ〉。
あの衝撃的なレイドボス戦から、〈スケルトン〉の目撃情報は一切無かった。
それが、今日突然、姿を見せたのだ。
しかも、盗み見みたいな形ではなく、〈コロッセオ〉という正規の観戦の場で。
突然の出来事にも関わらず、多くのプレイヤーが〈スケルトン〉目的で〈コロッセオ〉に足を運んだ。
結果から言えば、〈スケルトン〉は期待通りの姿を魅せたと言って良いだろう。
天井のドームから飛び出し、目にも止まらぬ早さで〈ガグル〉を狩る。
そのまま、地獄の炎の中に飛び込む〈スケルトン〉。
あの速度で地面に激突したら、自滅は免れないだろう、誰もがそう考えた。
2on2なのだから、〈ナパーム・スラッガー〉が生存していれば勝ちとして、あれは自爆特攻だと、考えた者もいた。
しかし、予想に反して、地面への激突と共に土煙と衝撃をまき散らした〈スケルトン〉は、腕部の装甲が破損しただけで、立ち上がってきた。
〈スケルトン〉を中心に抉れてできたクレーター。
足下には、無残な姿となった〈ガグル〉。
控えめに言って、ドン引きだった。
歓声よりも疑問の呟きの方が多い。
上空のドーム、その観覧席で〈ジーク〉は試合を見ていた。
地上の席は出遅れたせいで入れなかったが、何とか、上空にあるドームの席には座れたのだ。
欲を言えばメインのバトルステージになることが多い、地上のドームで観戦したかったが、外のモニター越しに見るよりはマシだろう。
〈ジーク〉は〈スケルトン〉を最も間近で見たことがあるプレイヤーとして、比較的、落ちついてはいたし、〈スケルトン〉が生き残ったカラクリも推察することができた。
「!・・・・・・」
しかし、それは絶句するには十分な推察だった。
(・・・天と地の二つのドームには、接触した時点で重力の向きが変るステージギミックがある・・・)
疑似的な1対1を作りやすくするための、飾りみたいなステージギミック。
対人勢でさえ、そのように評価する、ほとんど使われない仕様。
下側のドームから飛び上がって上昇する場合、重力は最後に足を付けていた地面、下方向に作用する。
〈ナパーム・スラッガー〉を放した後、〈スケルトン〉は、天井側のドームに接触していた。
あの瞬間、〈スケルトン〉の重力が働く方向はあの時点で他と違っていたのだ。
四機の中で唯一、〈スケルトン〉だけが上方向に重力が働いていた。
重力に従って落ちる〈ガグル〉と重力に逆らい、《《天井》》に向って突進していた〈スケルトン〉。
あれはそういう構図だったのだ。
恐るべきはそれを感じさせない、〈スケルトン〉の性能。
しかし、それだけでは、不十分だ。
(腕の外装だけ破損している・・・衝突は腕から・・・拳は無事・・・〈ガグル〉をグローブ代わりにした・・・?あのクレーターは・・・!)
〈バスター・ゴリラ〉に止めをさした、あのブレードのスキルだ。
恐らく、あれは攻撃の威力を上げるものだと思われる。
あの時は斬撃だったが、今回は刺突。
効果の表出にバリエーションがある可能性。
そして、あのクレーターのできかた・・・着地点からヒビ割れが走っている。
考えられるのは、爆発。
推察だが、ブレードが地面に刺さった瞬間、スキルによって地面が爆ぜた。
直前までかかっていた上方向への重力+爆発の衝撃で、〈スケルトン〉の勢いは大きく減衰したのだろう。
そして、〈スケルトン〉を襲うはずだった衝撃は地面との間に挟んでいた〈ガグル〉で受け止めた。
接地と同時に〈スケルトン〉の重力方向が変ったことで、押しつけられた拳がメリこみ、〈ガグル〉は砕けちったのだろう。
グローブが無くなり、やむを得ず、自前の腕で残りの衝撃を受けるしかなかったが、その時点で衝撃は受け止めきれるくらいに減少していた、というわけだ。
「〈ロボキチ〉さん・・・!」
後半はアドリブだろうが、ステージギミックについては初心者の〈フルカゲ〉が知っていたはずがない。
間違いなく、この策の骨子を建てたのは、あの口の悪い軍服幼女だ。
恐らく、この電撃作戦も。
この試合は終始、プラモデルの性能差を押しつけ、プレイヤースキルでの競い合いを最小限にする展開だった。
〈スケルトン〉の機動性を活かした急上昇。
デザインを自作できるプラモデルの強みを活かした武装量。
変形によって唐突に向上させたスピードと巧妙に隠された近接武器による初見殺し。
もしも、試合が長引いていたら・・・
射撃や格闘戦の技術に秀でたゲーマーという人種の〈ジャン〉と〈スルメ〉に勝てる見込みは薄かった。
そう〈ジーク〉は考える。
だからこその速攻。
電撃作戦。
〈ロボキチ〉というプレイヤーはゲーマーとの戦い方・・・いや、〈リアルプラモ〉での勝ち方を完全に理解している。
(・・・これが、プラモデラー)
スキルという要素が一つ加わっただけで、こうも驚異的になるのか・・・?
だが、まだだ。
〈ジーク〉とて伊達に〈ナンバー・エイト〉、トッププレイヤーに名を連ねていない。
同時に〈ゲーム内機体〉の光明も見出すことができた。
プラモデラーの武器は自らが創造した機体の性能。
性能差で殴る。
その強みはボスキャラと一緒だ。
ならば、やれる。
やれるはずだ。
ゲーマーとは、研鑽によって腕を磨く修行者。
例え、機体の性能が負けていようと、プレイヤーの技術で、勝利を手繰り寄せる者。
ゲーマーにとって、〈ゲーム内機体〉は手に馴染む以上に、研鑽で培った技術を満遍なく表現できるバランスを持った機体だ。
PVPなら、まだ〈ジードフリート〉は死んでない。
そう確信できたことを嬉しく思うと同時に、もしも、自分が〈スケルトン〉の様な機体に乗ったとしたら・・・と想像して、作りかけで箱を閉じた〈ジーナス〉に思いを馳せるのだった。




