表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プラスチックへ愛を込めて  作者: 田中ドラゴン
硝子の巨人と白い殺し屋
27/85

ロボ式PVP術


 「・・・今、何した・・・?」


 「何で、あの早さで地面に激突して、無事なんだよ・・・」


 「〈ガグル〉バラっバラじゃん・・・、あそこまでするか普通・・・」


 

 〈ジャン〉&〈スルメ〉対〈ロボキチ〉&〈フルカゲ〉が2on2で試合をすると聞いて、観戦に来たプレイヤー達は戦慄いていた。


 現在『バープラ』を騒がしている硝子の外装を纏う機体〈スケルトン〉。

 その主たるプレイヤー〈フルカゲ〉。


 あの衝撃的なレイドボス戦から、〈スケルトン〉の目撃情報は一切無かった。

 それが、今日突然、姿を見せたのだ。


 しかも、盗み見みたいな形(配信)ではなく、〈コロッセオ〉という正規の観戦の場で。

 突然の出来事にも関わらず、多くのプレイヤーが〈スケルトン〉目的で〈コロッセオ〉に足を運んだ。


 結果から言えば、〈スケルトン〉は期待通りの姿を魅せたと言って良いだろう。



 天井のドームから飛び出し、目にも止まらぬ早さで〈ガグル〉を狩る。

 そのまま、地獄の炎の中に飛び込む〈スケルトン〉。


 あの速度で地面に激突したら、自滅は免れないだろう、誰もがそう考えた。


 2on2なのだから、〈ナパーム・スラッガー〉が生存していれば勝ちとして、あれは自爆特攻カミカゼだと、考えた者もいた。


 しかし、予想に反して、地面への激突と共に土煙と衝撃をまき散らした〈スケルトン〉は、腕部の装甲が破損しただけで、立ち上がってきた。


 〈スケルトン〉を中心に抉れてできたクレーター。

 足下には、無残な姿となった〈ガグル〉。

 


 控えめに言って、ドン引きだった。


 

 歓声よりも疑問の呟きの方が多い。



 上空のドーム、その観覧席で〈ジーク〉は試合を見ていた。

 地上の席は出遅れたせいで入れなかったが、何とか、上空にあるドームの席には座れたのだ。

 欲を言えばメインのバトルステージになることが多い、地上のドームで観戦したかったが、外のモニター越しに見るよりはマシだろう。



 〈ジーク〉は〈スケルトン〉を最も間近で見たことがあるプレイヤーとして、比較的、落ちついてはいたし、〈スケルトン〉が生き残ったカラクリも推察することができた。


 「!・・・・・・」


 しかし、それは絶句するには十分な推察だった。


 (・・・天と地の二つのドームには、接触した時点で重力の向きが変るステージギミックがある・・・)


 疑似的な1対1(疑似タイ)を作りやすくするための、飾りみたいなステージギミック。

 対人勢でさえ、そのように評価する、ほとんど使われない仕様。

 


 下側のドームから飛び上がって上昇する場合、重力は最後に足を付けていた地面、下方向に作用する。

 〈ナパーム・スラッガー〉を放した後、〈スケルトン〉は、天井側のドームに接触していた。

 あの瞬間、〈スケルトン〉の重力が働く方向はあの時点で他と違っていたのだ。

 四機の中で唯一、〈スケルトン〉だけが上方向に重力が働いていた。


 

 重力に従って落ちる〈ガグル〉と重力に逆らい、《《天井》》に向って突進していた〈スケルトン〉。


 あれはそういう構図だったのだ。


 恐るべきはそれを感じさせない、〈スケルトン〉の性能。

 

 しかし、それだけでは、不十分だ。


 (腕の外装だけ破損している・・・衝突は腕から・・・拳は無事・・・〈ガグル〉をグローブ代わりにした・・・?あのクレーターは・・・!)


 〈バスター・ゴリラ〉に止めをさした、あのブレードのスキルだ。

 恐らく、あれは攻撃の威力を上げるものだと思われる。


 あの時は斬撃だったが、今回は刺突。

 効果の表出にバリエーションがある可能性。


 そして、あのクレーターのできかた・・・着地点からヒビ割れが走っている。


 考えられるのは、爆発。

 

 推察だが、ブレードが地面に刺さった瞬間、スキルによって地面が爆ぜた。

 直前までかかっていた上方向への重力+爆発の衝撃で、〈スケルトン〉の勢いは大きく減衰したのだろう。

 そして、〈スケルトン〉を襲うはずだった衝撃は地面との間に挟んでいた〈ガグル〉で受け止めた。

 接地と同時に〈スケルトン〉の重力方向が変ったことで、押しつけられた拳がメリこみ、〈ガグル〉は砕けちったのだろう。

 グローブ(ガグル)が無くなり、やむを得ず、自前の腕で残りの衝撃を受けるしかなかったが、その時点で衝撃は受け止めきれるくらいに減少していた、というわけだ。


 

 「〈ロボキチ〉さん・・・!」


 後半はアドリブだろうが、ステージギミックについては初心者の〈フルカゲ〉が知っていたはずがない。


 間違いなく、この策の骨子を建てたのは、あの口の悪い軍服幼女だ。


 恐らく、この電撃作戦も。


 この試合は終始、プラモデル(機体)の性能差を押しつけ、プレイヤースキル(PS)での競い合いを最小限にする展開だった。


 〈スケルトン〉の機動性を活かした急上昇。


 デザインを自作できるプラモデルの強みを活かした武装量。

 

 変形によって唐突に向上させたスピードと巧妙に隠された近接武器バットによる初見殺し。


 もしも、試合が長引いていたら・・・

 射撃や格闘戦の技術(プレイヤースキル)に秀でたゲーマーという人種の〈ジャン〉と〈スルメ〉に勝てる見込みは薄かった。


 そう〈ジーク〉は考える。


 だからこその速攻。

 電撃作戦。


 〈ロボキチ〉というプレイヤーはゲーマーとの戦い方・・・いや、〈リアルプラモ〉での勝ち方を完全に理解している。


 (・・・これが、プラモデラー)

 

 スキルという要素が一つ加わっただけで、こうも驚異的になるのか・・・?

 


 だが、まだだ。

 〈ジーク〉とて伊達に〈ナンバー・エイト〉、トッププレイヤーに名を連ねていない。


 同時に〈ゲーム内機体〉の光明も見出すことができた。

 

 プラモデラーの武器は自らが創造した機体の性能。

 

 性能差で殴る。

 その強みはボスキャラと一緒だ。


 

 ならば、やれる。

 やれるはずだ。



 ゲーマーとは、研鑽によって腕を磨く修行者。



 例え、機体ガワの性能が負けていようと、プレイヤー(中身)の技術で、勝利を手繰り寄せる者。

 

 ゲーマーにとって、〈ゲーム内機体〉は手に馴染む以上に、研鑽で培った技術を満遍なく表現できるバランスを持った機体だ。



 PVPなら、まだ〈ジードフリート(ゲーム内機体)〉は死んでない。





 そう確信できたことを嬉しく思うと同時に、もしも、自分が〈スケルトン〉の様な機体に乗ったとしたら・・・と想像して、作りかけで箱を閉じた〈ジーナス〉に思いを馳せるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ