飛んで火に入ってくれないなら
S覚醒・サイ○サリス、核ミサイル連射の動画、良いですよね!(地雷)
〈対戦エリア〉の中でも純粋で公平な殴り合い・・・PVPをするための施設〈コロッセオ〉。
その外観は〈コロッセオ〉というイメージその物ではある。
石造りのドーム状。
ドームの中心を観戦するため、階段状になっている観客席。
しかし、イメージ通りなのは地上から生えている建物だけだ。
異質なのはその上空。
そこには近未来的な外観の、もう一つのドームが逆さに浮いている。
ドーム天井の空洞を向かい合わせているこの二つのドームが『バープラ』における〈コロッセオ〉である。
「んじゃ、手はず通りに頼むぜ」
「任せろ、仕事はキッチリこなすさ」
〈対戦エリア〉への移動中に大体の作戦は詰めた。
驚くべきことに、この作戦の主軸は俺の〈スケルトン〉ではなく〈ロボキチ〉の〈ナパーム・スラッガー〉だ。
「行くぜ!!」
「おうよ!!」
〈スケルトン〉と飛行形態の〈ナパーム・スラッガー〉がカタパルトからドームの中へと発進する。
〈コロッセオ〉に来た時確認した。
先に〈コロッセオ〉に来て、対戦の受付を任せた〈ジャン〉と〈スルメ〉が設定したバトルステージはランダム。
試合が始まらないと、バトルステージはわからない。
俺にとっては全てのステージは初見のため大差ないが、作戦を考えると・・・ここは運だな。
「ステージは!?」
「密林!!」
悪くない!
機体のエントリー・ゲートから飛び出すと、背の高い木が生い茂るジャングルが飛び込んで来る。
上空にある、もう一つのドームの中心からも緑が見えることを確認した。
「作戦通り上げるぞ!!」
「頼むぜ、殺し屋!!」
〈スケルトン〉が飛行形態の〈ナパーム・スラッガー〉を掴み、そのまま上昇する。
〈ナパーム・スラッガー〉の飛行能力は見たまんまで、かなり低い。
落ちこそしないが、その機動力はハッキリ言って産廃扱いを受けても仕方ないほどだ。
だからこそ、その機動力を〈スケルトン〉がカバーする。
〈スケルトン〉は機動力偏重の機体。
その機動力はスキルを使わなくても、〈ジーク〉の駆る〈ジードフリート〉を置き去りにするほどだ。
荷物を抱えた、真上への上昇。
それなりにスピードは落ちるが、それでも十分な速度は出ている。
「本当に狙撃は無いんだろうな!!」
「ああ!!多分な!!お前の〈反射〉を見てるなら、プレイヤースキルに任せた格闘戦で決めたいはずだ!!」
この作戦最大の不安要素は、上昇中の狙撃だ。
思い出されるのは、〈バスター・ゴリラ〉戦で俺を助けたあの狙撃。
超必殺スキル〈リアクティブ・クリア・ミラー〉は被弾していない状態、つまり開幕から使用可能なスキルではあるが、攻撃に対してタイミングを合わせる必要がある。
どこから撃ってくるかわからず、弾速の早い狙撃はミスる可能性が高い。
しかも〈反射〉るのはビーム系の攻撃限定なので、実弾系の狙撃ならマジで打つ手なしだ。
「奴等も来やがった!そろそろ、良いぞ!!」
「しっかりやれよ!!爆撃魔!!」
現在位置は上空にあるドームの天井付近。
空中で〈ナパーム・スラッガー〉を手放すことで、〈スケルトン〉の上昇スピードが上がる。
〈スケルトン〉はそのまま、上空ドームの緑の中へと突っ込んで、後方から迫る敵機から姿を隠す。
機体名〈ナパーム・スラッガー〉
どう見ても火力重視で、機動力など皆無な機体。
下位のエネミーならともかく、対人戦《PVP》においてはさほど手強いとは思えない機体。
それでも、もし運用するならば・・・しなくてはならないなら、開幕直後の全弾ブッパだろう、と〈ジャン〉と〈スルメ〉は予想していた。
「早い!あれが〈スケルトン〉か!!」
「まずい、上空から爆撃する気だ!!」
二人の予想自体は当っていた。
想定外だったのは、そのスピードと位置。
二人はステージに出た瞬間、もしくは自分達の姿を確認した瞬間、放射状に目の前を爆撃すると考えていた。
それが上空に飛んだ。
あの位置からの爆撃。
それは炎の雨を意味する。
「追うぞ!!地面から離れちまえば爆撃の威力は半減だ!!ミサイルとして使うにしても俺が迎撃できる!!後ろから着いて来い!!」
そう言って〈ジャン〉が飛び上がる。
「任せる!だが警戒しろ!!何かやるつもりだぞ!!」
〈ジャン〉の駆る〈ゲーム内機体〉〈ガグル〉は二丁のライフルを武器とする中距離火力機体。
〈スルメ〉は二振りの実体剣を装備した〈ジード〉。
共に、機動力を重視したカスタムに変更している。
理由は明確。
〈ナパーム・スラッガー〉は初撃に気を付けさえすれば大した脅威ではない。
無視しても良いし、片手間でも落とせる。
それよりも、手に負えないのは〈スケルトン〉の機動力と、あの〈反射〉のスキル。
そう考えたためだ。
聞くところによれば、〈スケルトン〉の〈フルカゲ〉は『バープラ』始めたての初心者で明らかにプラモデラー。
HPではなく、急所の破壊を『撃破』と判定する『バープラ』において、特に初見殺し性能の高い『狙撃』を使う、というのも考えた。
しかし、あのスピードに加えて、配信で見たテナガサルの攻撃を避けたマニューバ、何より〈反射〉のスキルがチラつく。
それならばゲーマーとしての経験で培ったプレイヤースキルによる格闘戦で差をつけ、圧倒する・・・そういう計画だった。
〈スケルトン〉が〈ナパーム・スラッガー〉を切り離した。
炎の雨が降り注ぐ。
「いくぜぇぇぇぇぇ!!!ミサイル全弾発射ぁぁぁぁ!!!!」
〈ナパーム・スラッガー〉の全身から猛烈な数のミサイルが発射される。
このミサイルの弾頭は全てナパーム弾としての設定があるキットからミキシングしたもの。
ナパーム弾。
要するに、着弾したら激しく燃える弾。
ガソリンをぶっかけて、火を付ける様な・・・そんな凶悪な性質をもつ弾。
この機体は、そんな弾をあろうことかミサイルに搭載した。
さらに、筋彫りで情報量を増やすことで、威力を限界まで引き上げることに成功している。
〈ナパーム・スラッガー〉は、このミサイル軍に一番時間をかけて制作した。
そこに二丁拳銃でミサイルを迎撃しながら迫る〈ガルグ〉と、その後ろにつく〈ジード〉が迫る。
「爆風に気をつけろ!!ナパームだ!燃えるぞ!!」
「わかってる!!集中しろ!!」
ミサイルを二丁の拳銃で撃ち、起爆。
爆風の薄い所を狙って通過しながら、こちらに迫るゲーマー二人。
「・・・さすがのプレイヤースキルだな!だが、これはどうだ!?」
〈ナパーム・スラッガー〉が装備しているのはミサイルだけではない。
大砲が火を噴く。
狙いは、自らが発射したミサイル。
「ちぃっ!!野郎!!!」
「ぐっぉぉぉぉぉぉ!!!!」
予期せぬ場所から突如発生した爆風で、機体の各所が燃える。
しかし、距離はもう十分縮まっている。
「耐えろぉ!!もうすぐだ!!」
「まずはあいつを叩き落とす!!」
銃が、剣が、あと数秒で届く距離。
一機落とせば、後は二対一。
勝ちを確信したその瞬間・・・
・・・名は体を表すという言葉がある。
〈スケルトン〉が透明な外装を纏い、骨子たるフレームを可視化している様に。
〈ナパーム・スラッガー〉
『ナパーム』はもう示された。
では『スラッガー』とは何か?
答えが今、示される。




