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プラスチックへ愛を込めて  作者: 田中ドラゴン
硝子の巨人と白い殺し屋
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ここは異世界なればこそ


 〈展示館〉内のエントランスには中央に巨大なホログラムで、恐らく〈展示館〉で展示されている作品なのだろう、様々なロボットやキャラクターが投映され、ボーッと眺めているだけでも、それなりに楽しむことができた。

 壁に架けられた額縁の中には、有名なロボットアニメの監督やデザイナーのインタビュー記事が飾られている。


 「おう・・・待たせたな・・・」


 一定間隔で変る変る作品が切り替わる、巨大なホログラムを眺めていた俺の所に、展示に出していたプラモデルを回収しに行っていた〈ロボキチ〉が歩いてくる。


 んん?何か・・・ちょっと不機嫌になってない?


 「随分かかったな?作品の引き出しってそんなに面倒なのか?」


 「ああ、回収自体は大したことねぇんだけどよ」


 「どうしたんだよ?」


 「・・・追加されてるはずのスキルをついでにセットしちまおうと思ってたんだけどよぉ・・・無かったんだ・・・」


 「はぁ?」


 どうやら、こういうことらしい。


 〈ロボキチ(このマヌケ)〉は、機体の回収ついでにスキルのセッティングもやってしまおうと考え、それなら時間がかかるだろう、ということで俺をこのエントランスで待たせていた。

 そして、自分の作品達(愛機)を受け取り、〈格納空間〉でスキルのセッティングをしようとした所で、アップデートによって新しく付与されているはずのスキルが存在しないことに気づいたのだという。

 で、調べた所、アップデート前にスキャンしていたプラモデルは再スキャンしなければ、スキルを獲得することができないらしい。

 

 「あー・・・そう言えば、スキャン装置触った時〈再スキャン〉の項目があったような・・・」


 「はぁー・・・面倒くせぇ、店まで出向かなきゃいけねえのかよ・・・」


 「じゃあ、結局プラモの回収はどうしたんだよ?」


 「今日使う一機だけ引き出した。再スキャンは〈格納空間〉《手元》にプラモが無いとダメらしくてな・・・もういっそ最近作った奴を新しくスキャンしようかと思ってよぉ」


 あぁ、〈格納空間〉にも一応プラモの格納数に上限があるんだっけか。


 どうせスキャン装置のある店まで足を運ばなくちゃいけないなら、過去作を大量に持って行くより、新作のプラモを新しく『バープラ』で使おうと考えたわけだ。


 〈格納空間〉が一杯の状態だと、新しいプラモデルの受け入れようとした時、不可能ではないが、すごく面倒クサいことになるらしい。

 〈展示館〉は、そういう大量の作品を抱えたプレイヤーが〈格納空間〉の整理のために利用する施設でもあるのだ。


 「まあ、その内引き出すけど、今んところはって感じだなぁ。展示中の閲覧数もそこそこあったから、いきなり下げるのも忍びねえし・・・」


 「ふーん・・・、じゃあ今日は足手まとい決定だな!」


 「てめぇ!まともな武装付けてから言えや!!」


 まともにスキル付けてから言ってくれますぅー?




 

 

 「まあ、取りあえずフィールド行こうぜ、なんかミッション受けてもいいしよぉ」


 目論見がハズレたとはいえ、久しぶりにログインしたからには自分の愛機を早く動かしたいらしい。

 だが、お前のプラモの回収という目的は達成されても俺の目的はまだなのだ。


 「いや、せっかく来たんだから、もう少し見て回ろうぜ」


 観光だ。

 VR世界は現実と違って、地球のルールにしばられない。

 土地は無限だし、物理的に不可能な建築物だって立てられる。

 

 今も作品を投映しているあの巨大なホログラム映像が良い例だ。

 現実なら、例え技術的に可能だったとしても、コストや精度の問題であんなに派手に実行できないだろう。


 だが、ここならできる。

 日常では見れないモノが見れる。


 要は、旅行みたいな気分なのだ。

 来ようと思えば再び来れないことは無いけれど、足を運んだからには普段目にしないモノを見たいという衝動。


 「・・・何か見たいモノでもあんのか?」


 「そうだなぁ・・・あ、『ドッグ・ファイティング』シリーズの作品ってどこで見れる?」


 特に決めていなかったのだが、ふと、頭に浮かんだのは、昼間知り合った女の子が作りたいと言っていたプラモデル。


 ぶっちゃげ何でも良いのだが、金剛さんに作り方を教えて欲しい、と頼まれているし、どんな作品が世にあるのか見ておいて損は無いだろう。


 「『ドッグ・ファイティング』か・・・良いとこいくじゃねえか。それなら、太めのシリーズだから大部屋があったはずだ」


 「大部屋?」


 「シアタールームみたいなモンだ。こう・・・、円形にぐるっと席があってよぉ、中心で作品がいくつかポージングをキメんだよ。動きがビシっとしてるから見応えあるぜぇ!」


 へえ、いいね。

 ファッションショーみたいなイメージだが、題材は服でも人間でもなくロボットのプラモデル。

 現実ではなかなか見られない、まさに電脳世界ここならではの展示って感じだ。


 「おし、じゃあ行こうぜ!案内ヨロシクー!」






 そう言って、〈ロボキチ〉の案内の元、歩き出したのだが・・・、結果から言うと、大部屋のシアタールームとやらには入れなかった。

 

 席が埋まっていたとか、そういう平和なアクシデントだったら良かったのだが、残念ながらマジもんの厄介なトラブルに巻き込まれてしまった。


 まあ、アホ(ロボキチ)が自分から首突っ込んだのだが・・・


 

 「テメェ!!俺の作ったモンに何か文句あんのかぁ!!!」


 目の前には、鬼の形相でブチ切れている軍服の幼女(ツレ)

 

 「な、なんだぁ!いきなり!」


 「関係ねえだろ!!引っ込んでろ!」


 それと、突然、幼女に後ろから怒鳴りつけられて、飛び上がった二人組。


 「ああっ・・・!?マジかぁ・・・!」


 そして、状況を四人の中でいち早く理解した〈ナンバー・エイト〉の称号を持つ、イケメンの男。

 人呼んで〈お人好しのジークフリート〉こと、〈ジーク〉。



 ・・・俺は他人のフリをしてその場を離れた。

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