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【現代/怪奇】冬を撒く者

迫る冬の中、芸術家と少女、そして名前もないどこかの誰かに起きた小さな村での悲劇。

 彼女にとってその村は、山と森と雪に閉ざされた美しい楽園だった。住人すべてが顔見知りで、今日は昨日のくり返し、明日は今日の延長で、代わり()えのしない人々と共に代わり映えしない日々を送る――退屈だからこそ平和で穏やかなそれが、彼女の小さな世界のすべてだ。

 村の北側にある山々は険しく切り立ち、天然の要塞(ようさい)となって古の侵略者たちから村を守ったという。対する南側には深い森がひろがっており、その中心部にある小さな湖は何十年、何百年と村の生活を支え続けてきた。

 二十一世紀に入って四半世紀も近いというのに、村には(いま)だ携帯電話もなければインターネットもなく、外界の情報を伝える主な媒体(ばいたい)はラジオであり、交通手段として車を使う者よりも馬を使う者の方が多い。

 森の中に一本だけ引かれた道は馬車や小型車が一台通れるだけの幅しかなく、そこからよそ者がやって来ることはまれだ。村から出て行くためにその道を通る者にいたっては、最寄(もより)の町の市場まで行く日帰りの馬車に乗り込む人々を(のぞ)けば皆無(かいむ)に等しい。近年で村を去ったのは彼女の兄である画家くらいのものだろう。

 その頃の彼女はまだ幼く、走るのも危なっかしいような幼児だったが、一人で村の中を自由に歩き回れるくらいの歳としになった今でも兄のことはよく覚えていた。彼女が赤ん坊の頃に亡くなった両親との思い出は残念ながら一つもないが、年の離れた兄のことは鮮明に記憶に残っている。

 月明かりがまぶしい夜、窓から差し込む月光の下で毛布にくるまり、うとうとしていた彼女のそばにやってきた兄は小さな妹の手を握って二言三言(ふたことみこと)何かを(つぶや)くと、その額に口づけをして名残惜(なごりお)しそうな面持ちで部屋を――村を出て行った。町に出て画家として絵を売るためだったが、彼女はそれを知らない。

 少し背が伸び、幼子(おさなご)から少女になったが、彼女が兄の言葉を理解することもなければ自ら言葉を発することもなかった。何故なら彼女の世界には音がなく、どれほど大人が言葉を教えようとしてもそれが彼女の耳に届くことはなかったからだ。

 その原因について、村の医者はただ「わからない」と首を振る。音が聞こえていない以外は体のどこにも異常はなく、聴覚を失うような病気や怪我も生まれてから一度もなかったため、彼女のそれは生まれつきであり、「そのように生まれた」のだとしか言えなかった。

 そのことでこの小さなやせっぽちの少女が苦労したことは一度もない。彼女の世界には音がないのが当たり前だったし、それを(あわ)れむ声も冷やかす声も彼女には何の意味もなかったからだ。それがかわいそうだと(なげ)かれる状態であることを知らなかったし、バカにされる理由を与えることだとも気付いていなかった。

 だから彼女はいつもにこにこと笑顔を浮かべ、穏やかに日々を過ごしている。

 幸いにも、そんな彼女をいじめる者は村にいなかった。時々彼女の静かな世界の外側で「頭の悪い役立たず」呼ばわりをする者はいたが、せいぜいそれくらいのものだ。嘲笑(ちょうしょう)を投げかけても彼女は嬉しそうな笑顔で(こた)え、ちょっと小突けば何かの遊びだと思って楽しそうにステップを踏む。誰もそれ以上彼女を侮辱(ぶじょく)する気にはなれなかった。

 そればかりか、小さな少女は村の人気者であったとさえ言える。村は貧しく、彼女の面倒をみている叔母(おば)夫婦は町に出た画家からの仕送りを彼女のために充分に使ったわけではなかったが、村人の大半からかわいがられ、少女には何の不満もなく、自然に囲まれた世界は美しく平和だった。

 そんな彼女の静かな世界に兄が帰ってきたのは、馬のように駆け去る短い秋が終わる頃のことだ。

 事前の便りもなく、わずかな身の回りのものとたった一枚の絵だけを持って彼が帰郷(ききょう)すると、それを追うように例年よりも早く雪が舞い始め、町に続く一本しかない道をひと月足らずで遮断(しゃだん)すると、一度天からはがれ落ちた小さな氷の粒たちはとどまることも知らず降りしきり、村一帯を冷たくも(きら)びやかな白一色で支配した。

 少女の楽園がとびきり輝く季節がやって来る。

 目の焼けるような純白と、耳が痛むほどの静寂(せいじゃく)だけが存在を許される狭小(きょうしょう)な世界、彼女のすべて――そこに兄が帰還(きかん)したのがすべてのはじまりだった。


「何故村に帰ってきたのか」

「何があったのか」

 村人たちから投げかけられたそれらの問いに、画家が明確な答えを返すことはなかった。ただ暗い表情を浮かべ、「放っておいてくれ」とくり返すばかりだ。

「こんな小さな村にくすぶっていたくない。町に出て絵を売って暮らすんだ」

 そう豪語(ごうご)して村を立ち去った高慢(こうまん)な若者の見る影は今やなく、彼は大事な宝物を誰かに盗まれやしないかと警戒するように常にびくびくし、神経質で不安そうに見える。

 彼は村での仕事を探したが、看板書きやペンキ塗ぬりの仕事は受けても絵を描く仕事は一切受けようとしなかった。子供たちに教えやすいように教材用の絵を描いて欲しいという依頼すら彼は断り、またその理由を話そうともしない。

 昔の彼を知る者たちは「偏屈(へんくつ)になった」と言い、友人たちはそんな彼を心配した。特に親しかった楽器工房の息子は画家の家を訪ね、「仕事としてでなくても、趣味で好きな絵を描けばいい」と提案したが、返ってきたのは「もう絵を描くつもりはない」という冷めた言葉だけだ。

「絵が嫌いになったのか、それとも描けなくなったのか」と問うても返事はない。

 画家はまるで老人になったかのように背を丸め、持ち帰った絵を抱えてうつむくばかりだった。

「なるほど、ならばそれが君の画家としての最後の仕事か? せめてそれを見せてくれよ。僕が最初で一番の君のファンだったのは知っているだろう?」

 そう言って絵に手を伸ばした友人に詰め寄るように画家は振り返り、にらみつけた。その目には嫉妬(しっと)歓喜(かんき)の色が混じりあい、どこか狂気めいて見える。

「あいつは気でも狂ったのか?」

 画家の家の前を通り過ぎる者たちはそんなことを言って顔を寄せ合い、眉をひそめた。

「少なくとも、すっかり変わってしまったようだ」

「何があったと思う?」

「町に出た若者を変えるものなんて、花のように(うるわ)しい女性と相場(そうば)が決まっているだろう」

「女に心を奪われたというわけだ」

 誰かがそう言うと、別の誰かが首を振ってささやくように応えた。

「俺にはどちらかというと、幽霊にとりつかれたように見えたけどな」

 幽霊――その言葉を知っていれば、そして口を()けたなら、少女もあの存在をそう呼んだかもしれない。兄について村にやって来た白いドレスの誰かのことを。

 それはまるで満月の光のようなまばゆい輝きを放つ、白く美しい服をまとっていた。その長い(すそ)(ほこり)っぽい床の上を()っても(ちり)一つ付かず、木々の間を抜けても枝や葉を揺らすこともない。深い雪の上には兄の靴跡しか残らず、彼のあとを静かについていく者の痕跡(こんせき)はどこにも見当たらなかった。

 少女は兄の背を指差し、あれは誰かと尋ねるように叔母を見上げたが、彼女は小さく肩をすくめて少女の柔らかな髪をなでるだけ。まるで触れてはいけない花の(とげ)から守るように少女と兄の間に立ち、目を伏せた。

 楽器工房の息子が死んだのはそれから数日後のことだ。

 画家の家から帰った彼は上機嫌で、その日以来、ずっと友人の描いた絵のことを熱心に話していたという。あの絵がどれほど素晴らしく、美しいか。いかに前衛的(ぜんえいてき)で挑戦的か。あらゆる芸術における「芸術を芸術たらしめる美」を描いていると語り、考えつく限りの陳腐(ちんぷ)賛辞(さんじ)を並べ立てた。

 砕けたガラス片のような鋭い風が吹きすさび、肌を裂くほどの寒さと狂ったように舞い散る雪の中、湖の展示室に飾られた彼の遺体(いたい)を見つけたのは村の猟師(りょうし)の一人だ。湖面に薄く張ったこの冬最初の氷の下で、朝日を浴びてただよう若き楽器職人の姿は美術館のガラスの向こうに展示された人形のように見える。その表情はどこか恍惚(こうこつ)として晴れ晴れしく、ある種の神々しさや美しさが感じられた。

 村には警察署がなく、管轄(かんかつ)の警官は雪が溶けて道ができるまで来られないという。それはつまり、春までなすすべがないことを意味していた。

 楽器工房のせがれは何故死んだのか。

 事故なのか殺人なのか、それとも自殺なのかもわからない。

 村長が画家の家を訪ねて「何か事情を知らないか」と()いてはみたが、彼は暗い目で宙を見つめたまま首を振っただけだった。

 この冬は何だかいつもと違う――そう感じたのは村長だけではない。村人全員が同じように思い、町から帰った画家を不審(ふしん)そうに見やる。

 だが、誰も彼がやったとは言わなかったし、実際のところ何の証拠も手がかりも見付からなかった。村で一番気のいい楽器職人が最後に家族以外で会ったのは画家だけであるため、多くの者が彼を怪しみはしたが。

 居丈高(いたけだか)に村人たちの暮らしをみじめと(ひょう)し、意気揚々(いきようよう)と村を出て行ったにもかかわらず背を丸めて戻った末、筆まで折った画家のことを村人たちはバカにし始めていた。

 故郷に逃げ帰ったばかりか、夢まで捨てた男だと。

 彼をバカにしなかったのも、冬をいつものように歓迎したのも彼の小さな妹だけだ。

 誰の目から見ても彼女の兄は昔と違って見えたが、少女には彼だとわかっていた。

 顔を覚えていたわけではない。ただ、あのひやりと()え渡る月明かりを背負い、小さい自分をのぞき込んで優しいキスを残し去っていった人影と同じ空気を彼女は正確に感じ取っていた。自分と彼との関係性――兄妹(けいまい)というのがどういうことかを正確に理解していたわけではないが、自分にとって大切な存在であることだけは確信できる。彼女にとってはそれで充分だ。

 少女は数年間空き家だった兄の冷たい家におもむき、友人を()くした彼を抱きしめてその背を優しく何度もなでた。

 彼女の耳に音は聞こえないが、それでもなお兄の泣き声は彼女の胸に届き、二人の心を同じ悲しみでうずめていく。楽器工房の息子は少女にとっても一番仲のいい友人だった。涙の色は等しく、思い出と感情の間にできた空虚(くうきょ)の深さもまた等しい。

 彼女は死についてもあまり理解していなかったが、二人の共通の友人が二度と戻ることはないのだということだけは漠然(ばくぜん)とわかっていた。

 湖から引き上げられ、わらのむしろに横たえられた彼の青白い顔や手に舞い落ちた雪が溶けもせず、ただ積もっていくのを遠目に見た時のことを思い出し、少女は目を閉じる。

 その目尻からあふれた哀惜(あいせき)のしずくが頬を伝い、暗い闇に飛び込むのを細く長い指がすくった。

 目を開き、わずかに顔を上げた少女の視界に白くしなやかな手と、輝くような服の(そで)が映る。膝をついて少女を抱えている兄のかたわらに立つそれは、兄の頬にも触れると親しげに彼の肩に手を置いた。

 それに(はげ)まされたかのように画家は一つ大きく息をこぼし、小さな妹から身を離す。そして彼女を見やり、その視線を追うように背後に目を向けた。そこには寒々しく誰もいない部屋があるだけだ。

 しかし、画家は薄闇の中の宙に目を止めたあと、驚いたように妹を見下ろした。

 まるで天使のように無邪気な微笑(ほほえ)みを浮かべ、少女が首をかしげる。そんな彼女を兄はもう一度抱きしめた。


 分厚い雲の冠をかぶった静謐(せいひつ)な冬の軍の歩みは遅い。例年よりも早く侵攻を始めた冷淡(れいたん)なる白銀の騎士たちは、まだ数か月はここに居座るつもりのようだと村人たちはささやきあった。

 昔からこの村の冬は長く厳しい。そのため、日頃から食料や燃料の備蓄を行ってきたが、今年はそれらを使い果たしても乗り切れるか(さだ)かではなかった。元々、決して豊かではない村だ。この年に限らず、毎年一人か二人は春を迎えられずに土に(かえ)る者がいる。

 だが、老衰(ろうすい)、病、馬にけられて運悪く死んだ子供と冬を越えられなかった者以外、近年村で死んだ者はいない。

 何の前触(まえぶ)れもなく突然帰ってきた画家、それを追うように早く訪れた冬、変死した画家の友人――そのどれもが「いつも」とは違い、村人たちを不安にさせた。

「あいつは水が大の苦手なんだ。泳げなかったし、湖の底に住む魔物のおとぎ話を信じていた。なのに湖で死ぬなんて考えられない」

 死んだ楽器職人の両親はそう言ったが、彼らも村の誰も納得のいく手がかりをつかむことができなかった。

 もはや警察の調査に期待するしかないが、その頼みの綱は春まで動けず、彼らが調べに来るまで遺体は雪や氷と共に村の近くの洞穴に保管されることになっている。

 埋葬(まいそう)されていない死者と共に冬を過ごすのも、村にとって初めてのことだ。

「寝ている間に動き出したらどうしよう」

 そう不安がる者も少なくなく、村には雪と共に(うれ)いと緊張ばかりが積もっていく。

 それに輪をかけたのは、楽器工房の息子の死からひと月半ほど()った頃に目に見えて深刻化し始めた燃料不足だった。

 村の主な暖房器具は昔ながらの暖炉と石油ストーブだが、後者の燃料である灯油の備蓄が底をついたのだ。その原因は、記録的な寒さが続いたせいだった。

(たきぎ)は森に入ればどうにかなるが、森に入るのも一苦労だ。今年は雪が深い」

救援要請(きゅうえんようせい)はできないだろうか? 車は無理でも、ヘリや小型の飛行機なら……」

「死人が出ても調査に来ないような奴らだぞ。それに最近、電波の調子も悪い」

「誰か電波塔を見に行った方がいいんじゃないか」

「食料はこのまま耐えればまだしばらくもちそうだが、燃料の方は早く手を打った方がいい」

 村の大人たちが集まり、さまざまな意見を交わして話し合った結果、電波塔を見に行く者の選出、村の命綱(いのちづな)である湖の水をくみ上げ貯めている給水タンクの整備・管理を強化すること、毎日薪を集めに出ること、不要な書類、木製の家具や道具を当面の燃料とすることなどが決まった。話し合いに参加した者にも参加しなかった者にも、反対意見を出した者はない。誰もが危機感と必要性を感じており、古くなった小屋を一つ(つぶ)して材木を分配することも決定した。

 各々(おのおの)が燃料に使えそうなものを提案・申告し、それがまたたく間にリスト化されていく。

 その中で「不要な可燃物」の一つとして村人の誰かが指摘したものの中に画家の持ち帰った絵があった。

「生きるか死ぬかの切羽(せっぱ)詰まった状況でもっとも必要ないのは、芸術なんていう腹の()しにもならない道楽だ」

 そんな意見に多くが賛成したが、「切羽詰まった状況だからこそ、なぐさめとなるものは必要だ」と言う者もおり、さらにそれに対して「そうだとしても、あいつの描く絵ではなぐさめになどならない」と反論する者が現れ、意見がまとまらない。

 結局、画家本人が呼び出されて意見を求められたが、彼は当然ながら絵を燃やすことには反対した。

 しかし、その理由は芸術家の言葉としては違和感があるものだったと言える。

「あれを燃やしたら、解き放ってしまうかもしれない。村が全滅するかもしれない危険はおかせない」

 それを聞いて「やはり彼は気が狂ったようだ」と感じる者もいれば、「芸術家が自分の作品を燃やされると言われたのだから、拒否(きょひ)するのは当たり前だ」とかばう者もいた。

 画家の口にした反論は不可解で説得力に欠けるが、芸術作品を「不要なもの」と切り捨てるのもいささか乱暴だ。

 いつまでも結論が出ないため、(ごう)()やした村長は画家の絵を見てから決めることを宣言した。複数人で一度絵を見てみて、それに価値があると思う者が多ければ残そうという判断だ。

 それは非常に公平な提案だと思われたため、皆がそれに賛成した。

 村人たちが険しい顔で列をなし、画家の家へと向かう。その先頭に立つ画家はいつも以上に暗い表情を浮かべ、不安そうで緊張している風だった。そのそばに彼の連れてきた白いドレスの者はいない。色()せて古びた服をまとう村人たちだけが怖い顔で歩いていた。

 それを叔母の家の窓から見ていた少女は、叔母に教えてもらったばかりの編み物の手を止め、じっと見送る。

 みんなピリピリして不機嫌そうだ、と彼女は感じた。今日は久しぶりによく晴れ、空は青く鮮明で日差しは目を焼くほどに輝かしい。それに煌々(こうこう)と照らされた白一色の村は精巧(せいこう)な氷細工のように美しく、冷たい空気は嫌なことなどすべて凍らせ、流し去ってしまうほどに澄み渡っているというのに。

 少女が悲しそうに窓の外を見つめていると、叔母が彼女の手をつつき、編み棒を動かすようにとにらみつけた。

 少女はそれに従い、小さなその手に余りがちな木の棒をせっせと動かし始める。それに合わせて規則正しく編み込まれた毛糸が列になり、少しずつ、少しずつ形をなしていくのが彼女には面白かった。

 編み方を教えてくれた叔母の顔を見上げ、にこりと笑顔を向ける。叔母はそれに疲労混じりではあるが微笑(びしょう)を返し、椅子の背もたれに背を預けてため息をついた。

 画家の絵を見に行った者たちが帰ってきたのは、それから小一時間経ってからのことだ。

 彼らはまた少女の叔母の家の前を通ったが、そのうちの半分ほどはにこやかで機嫌良さそうに見えた。それは喜びに満ちた興奮にも近い。残りの半数は疑うような目でその者たちを見ていたが、少なくとも行きのような攻撃的な感情はうかがえなかった。

 きっと何かいいことがあったのだろうと少女は思い、窓越しに彼らに手を振る。それに気付いた者のうち、上機嫌な者たちだけが彼女に笑顔で手を振り返した。

 その者たちの顔を少女は忘れたことがない。楽器工房の息子もそうだ。名前は知らないが、誰一人間違えることなく顔を覚えている。

 彼らは小さな少女の記憶に面影だけを残し、楽器工房のせがれのように次々死んだ。その死に方はさまざまで、暖炉(だんろ)に飛び込んだ者もいれば猟銃(りょうじゅう)で頭を()ち抜かれた者もいる。彼らはみんな夜に死に、時には一晩で二人死んだこともあった。

 死んだ者たちと共に画家の絵を見に行った少女の叔父(おじ)が遺体で見付かったのも、前日の夜から降り出した雪がまだちらつく朝方のことだ。彼のそばには愛用したフィドルと切れた弓、そして切断された彼の腕が転がっていた。腕からあふれた血は凍り付き、真っ白な雪の上にまかれた赤はまるで不格好な楽譜のように線や記号を描いている。

 たとえ酔っていたとしても、自分の腕を弾いて切り落とす奏者はいないだろう。

 だが、先に死んだ他の村人たち同様、誰かに殺されたのかどうかさえもわからない。昨夜は雪が降り、夜に外を出歩く者はいなかった。フィドルを弾いたり叫び声をあげていたとしても、その音は深い雪に吸い込まれて聞こえなかったに違いない。村中の者が少女のように音を失い、家の中に閉じこもって寒さに震えていただけだった。

 誰かが「これは異常だ」と言う。こんなことは今まで起きなかったと。すべてが変わったのは画家が帰って来てからだ。しかも死んだのは画家の絵を見に行った者ばかり。彼らは最初に死んだ楽器職人同様、こぞって何かにとりつかれたように画家の絵を賛美(さんび)していた。

 だが、画家が彼らを殺す理由は見当たらず、また、たった一人で立て続けにこれほどの数の人間を殺せると信じた者もいない。

 ただ、呪いのようなものを画家が持ち込んだのだと疑い、行き場のない不安や恐怖、怒りや憎しみを彼に向け始めた。

 この村では未だに伝説が生きている。村の外には大きな通信塔がそびえ立ち、ラジオや発電機もあるが、村人の一部は湖の底に住むと言われるおとぎ話の魔物の存在を信じていたし、魔女や呪いやドラゴンといったものが村を包む空気の中に今でも息を殺してひそんでいた。

 それを吸って生きている彼らには、格好の的となった画家に八つ当たりする以外に心の平穏を得る方法がなかったのだ。


 特にその日は一段と寒く、夜のうちに凍死してしまった子供を腕に抱えた親が画家の家の前で朝から騒いでいた。その嘆きはあまりにも痛々しく、激しく、理性を焼き切るほどに熱かったため、その熱にあてられて他の村人たちも画家の非難(ひなん)に加わり、もはや一触即発(いっしょくそくはつ)の状態だ。知らせを聞いた村長が駆けつけ、その場をおさめなければ画家の家には火が放たれていたことだろう。

 しかしその騒動の中でも画家は家から顔も出さず、仕事がない時は閉じこもっている。

 大きな暖炉のある我が家で過ごしてはどうかという叔母の申し出も断り、彼は小さな家の薄い扉を心と共に(かた)く閉ざした。まるで何かに(おび)えるように。

 そんな彼のことを村長は案じ、妻と共にその日の夕方に画家の家を訪れた。村人たちからの反感を一身に受け、それに恐れを抱いているのだと思ったからだ。妻も画家を励まし、元気づけたいと言って夫について行った。

「怖い思いをしただろう」

 村長がそう言うと、画家は相変(あいか)わらず暗い表情のまま(うわ)の空といった様子で「怖いのは彼らではありません」と応えた。

「私が怖いのは芸術という名の魔物です」

 その意味を何度尋ねても画家は答えを返さず、早く帰るようにとうながすばかりだ。

 村人たちが噂するようにすっかり偏屈になった彼に村長はあきれ、望み通り早々に暇乞(いとまご)いをしようと妻をうながしたが、彼女は帰る前に画家の持ち帰った絵を見たいと言った。

 それを見た者ばかりが死んでいるという話を知らないわけがないのに、妻はそんなものはただの偶然にすぎないと突っぱねる。隣町から嫁入りした彼女は伝説に屈しない人間だった。

 多くの村人が絵を絶賛していたのだから自分もぜひ一度見てみたいと、(しぶ)る画家を()き伏せる。

 村長は先の「審判(しんぱん)」の時にすでに目にしていたため、あんな不気味でよくわからない絵のどこがいいのかと心の中でぼやきながら、先に玄関まで行って妻が満足するのを辛抱強く待った。

 やがて彼の下に戻ってきた妻はやけに興奮し、上機嫌で満足そうに見えるばかりか、まるで一足早く春を迎えたかのように(ほが)らかに笑いながらはしゃいでいる。

 彼女のそんな明るい顔を見たのは久方(ひさかた)ぶりのように思え、村長は当惑(とうわく)しながら奥の部屋の画家を振り返った。

 しかし彼は相変わらず暗鬱(あんうつ)な面持ちであらぬ方を向いたまま、彼らのことなどまったく気にしていないようだ。

 村長は浮かれる妻の腕を引き、そそくさと家路(いえじ)についた。自分の妻が心だけでなく、命まであの絵に奪われないことを祈りながら。

 その夜、画家の小さな妹は眠りにつく前に窓から外を眺めていた。

 兄が村を出たあの日のように月の明かりがまばゆくきらめき、分厚い白のドレスをまとった村を(あで)やかに照らし出している。太陽の輝きにはない、凍えるほどに清麗(せいれい)静穏(せいおん)な光の粒子が見せる彼女の世界は、いつもの冬と変わることなく美しかった。

 まるで絵本で見た劇場の舞台のようだ、と少女は思う。村から出たことがない彼女は本物の劇場を知らないが、それが物語を現実に呼び起こす魔法の空間であることは知っている。観客は少女一人で俳優はなし。音楽もなければナレーションもないが、彼女はいつまでもその演目を見ていたいと思った。特に演者を望んだこともない。

 だが、この日初めて彼女の見下ろす舞台に人影が現れた。

 それは闇に沈む雪よりも白く、スポットライトのように鮮やかに夜を()く月光よりも輝かしいドレスを身にまとい、彼女の舞台を横切っていく。

 少女はその姿を目にした途端(とたん)、反射的に靴を()き、上着を引っかぶるように着込むと部屋を飛び出した。玄関を開けて足跡を探すが、目に映るのは数時間前まで降っていた無垢(むく)な新雪ばかりだ。

 少女は人影が歩いて行った方角――村長の家がある方へと向かった。

 今この村で村長を務めている男は近くの町――と言っても距離はかなりあるが――との交易で稼いだ商人だ。町に出入りしている際に生涯(しょうがい)伴侶(はんりょ)となる女性を見付け、結婚した。

 自然に埋もれる寒村の村長や商人の暮らしなど、町に住む者たちから見ればうらやむほどのものではないだろうが、彼は村で唯一の自動車の所持者であり、それ専用の車庫代わりとなる納屋(なや)も持っている。

 彼の納屋の扉を開き、中におさめられた時代遅れの中古車を見ることが村の子供たちの一つの楽しみだった。

 少女も一度それを見せてもらったことがある。村長は車をとても大事にしていてそう簡単には見せてくれなかったため、彼女は幸運だった。納屋はいつも閉まったままなのだから。

 しかし、彼女が白い人影を探して村長の家のそばまで来ると、(くだん)の納屋の扉が細く開いているのが見えた。中からは煌々とした明かりがもれている。

 少女は子供らしい無邪気な好奇心から、誘われるようにその光の下へと歩み寄った。

 納屋の中には車のヘッドライトを受けて(たたず)む、白いドレスをまとった誰かの後ろ姿が見える。

 少女が中に足を踏み入れると、白い人影がゆっくりと振り返った。その形なりを形容するのなら、少女の愛する冬が一番近いだろうか。雄々(おお)しく荒々しい男性のようにも、たおやかで物静かな女性のようにも見える。

 「それ」は彼女の方を見やり、片方の腕をそっと上げた。その細くしなやかな指が少女の背後を指し示す。

 それにつられるように少女が振り返ると、そこには呆然(ぼうぜん)とした様子で村長が立ちつくしていた。その視線を追い、再び少女は納屋の中へと顔を向ける。

 彼女の視界に飛び込んできたのはまばゆい光と白ではなく、炎よりも深く色鮮やかな赤だ。本来は体の中を駆け回っているはずの命の水。

 その水面に顔をつけ、寝衣の長い裾をドレスのように広げて誰かが倒れていた。まるで優雅な踊りの一場面を切り取ったかのような光景に少女は息を飲む。

 うつ伏せなので顔は見えなかったが、彼女にはそれが村長の妻であることがすぐにわかった。

 明るく活発で、何もない小さな村には不釣り合いなほど魅力的な良妻だと言われた彼女は、立派な大人の女性でありながらもどこか年若い少女のような無邪気さを持ち合わせている。そんな彼女の足取りはいつも軽やかな踊りのようであり、今少女の目に映る姿もまた優雅なステップの瞬間を切り取ったかのように見えた。

 その華やかな場面に少女は知らず微笑を浮かべる。 

 村長は足元の小さな子供を一度見やり、それから納屋の壁際(かべぎわ)にしつらえられた(たな)の方へ腕を伸ばすと、そこに立てかけてあった薪を割るための(おの)を手に取った。

 何故この娘は私の妻の死体の前で微笑んでいるのかと、怒り混じりの疑問が胸に浮かぶ。そしてそれは冷たい冬の空気の塊のように彼の肺を押しつぶし、息苦しさと頭痛と涙に変わって復讐心を彼に与えた。

 少女の背後で誰かのかすかなため息がこぼれる。

 だがそれは村長の耳には届かず、また少女以外の誰も彼の目には映らなかったため、彼はただ怒りと憎しみの感情のままに斧を振り下ろした。


「結局、あの村で何があったんでしょうね」

 謙虚(けんきょ)な夏のはじめに村を訪れた二人の旅行者のうち、カメラを抱えた方が先に車に乗り込みながら連れに尋ねた。

 それに続くように運転席に乗り込みながらもう一人が応じる。

「物知らずでたちの悪い子供か、冬を乗り切れないと悲観した誰かが村の生命線である給水タンクにありったけの農薬をぶち込み、全滅した」

「それは警察の発表した薄っぺらい上辺(うわべ)だけの事実でしょう? 少なくとも全容を伝える真実じゃない」

「農薬入りの水で死んだ者たちよりも先に、何人もの村人が原因不明の死を()げていたことや、毒水で死んだ者たちより、洞穴に保管されていた彼らの死体の方が『芸術的に』美しかったこととか? 警察がそれらについてあえて言及(げんきゅう)しなかったのは、混乱を招くだけだと判断したからだろう」

 そう言って運転席に座った方は、助手席に向かって少し色褪せた紙の束を振ってみせる。

「それは?」

「村の中で見つけた。警察は特に重要性はないと思って放置したようだ」

「何が書いてあるんですか?」

「村の燃料や食料の備蓄量、日々の気温の記録、あとは燃料代わりにしたもののリストとか」

 紙をめくりながら答える相棒の言葉を聞いて、カメラクルーは「確かに重要ではなさそうだ」と肩をすくめた。

 しかし、好奇心旺盛(おうせい)な友人は真剣な面持ちで書類を見ながら「そんなことはない」と首を振る。

「あの村最後の村長は非常にまめだったようだ。商人だったらしいから、勘定(かんじょう)は得意だったんだろう。村のいろんなことを具体的な数値と共に記録している。その量の多さに頭の弱い田舎の警察はうんざりして、詳しく調査しなかったようだが――記録は未来を読むための大事な情報だ。燃料の備蓄が元々どれだけあり、どれくらいの気温の日が続き、どれだけ燃料を消費したか。その記録を見れば、次に同じような冬が来た時、備蓄がどれだけ必要になるかが読める」

「彼らに『次の冬』は来ませんでしたけどね」

 皮肉っぽくカメラクルーが言うと、探偵気取りの運転手は「その通り」と応えて紙の束を軽く叩いた。

「少なくとも村長はそれを予期していなかったということだ。未来のために記録を残した。『次』が来ると信じて」

「でも燃料不足は深刻だったんでしょう?」

「そう。だから彼らは燃やせるものは燃料にしようと、燃料候補のリストを作った。対策案も複数立てて実行している。状況は確かに深刻だったが、彼は乗り切れると踏んでいたと思う。警察の話では凍死した者も何人かいたようだが、村全体で集団自殺を計画するほどの被害じゃない」

「なるほど、それで最初の質問に戻るわけだ」

 あの村で本当は何があったのか。

「思うに、寒さよりも恐ろしい何かが彼らを襲ったんじゃないだろうか」

 書類をダッシュボードの上に載のせ、ハンドルに手をかけた運転手は真剣な面持ちで言う。

 それを「また始まった」という顔で見ながらも、助手席のカメラクルーは話の続きをうながすように質問を口にした。

「何かって、たとえば?」

「さあ……湖の魔物とか? それとも画家が持ち帰ったという絵にかけられた呪いかも」

「中世じゃあるまいし」

 カメラクルーはそう言って笑い、後部座席の方に身を乗り出して抱えていたカメラを乱暴に置いた。そのレンズがとらえたのは、自然ばかりで退屈な田舎の村の残骸(ざんがい)だけだ。刺激的なショットを望む写真家には到底(とうてい)やりがいのある仕事だったとは言えない。

 しかし、そんな仲間の心中などまったく気にかけていない様子で運転手は「だが」と話を続けた。

「村の全滅前に妙な死に方をしたのは絵を見た者ばかり――それは事実だ。絵を見た者全員がそれで死んだわけではないようだがな。奇妙なことに、検死結果が正しければ、村に残っていた遺体の中に件の画家はいない。彼の妹は村長の家の納屋で、村長の妻と一緒に死んだが、誰も兄である画家の行方(ゆくえ)は知らないんだ。納屋には村で唯一の車があったそうだが、それも発見されなかった」

「警察は彼を探しているようですね」

「一応な。だがおそらく見付からないだろう。町の警察は全滅した小さな村のことになど、あまり興味がないらしい」

 運転手は肩をすくめ、車のエンジンをかける。

 その様子を隣で見ながら、(ひと)り言ごとのようにカメラクルーは「画家が毒をまいて逃げたんでしょうか」と言った。

 それに運転手が振り向かず応える。

「その可能性が一番高いだろうな。警察もそう考えている」

「でも、理由は?」

 不思議そうに尋ねる友に、運転手は前を見据(みす)えたまま淡々(たんたん)と答えを返した。

「理由の一つとして考えられるのは、妹が死んだから。彼女は絵を見た者のリストの中にはなかったのに、何故か村長の家の納屋でひどい死に方をした。他の死体と比較(ひかく)して言えば、『美しくない』死に方だ。もし村の誰かに殺されたのなら、兄は村全体に復讐(ふくしゅう)したのかもしれない」

「妹の命の代償(だいしょう)に村人全員を殺し、滅ぼしたと? しかも自分の故郷の村を?」

「彼は一度村を出たそうじゃないか。もう彼の居場所ではなかったのかもしれない。それか、絵を燃やされて怒ったという可能性もある。燃料のリストの最後に、走り書きのように『絵画』と付け足されていた」

 運転手はそう言ってアクセルをゆっくりと踏み込み、車を走らせ始める。

 舗装(ほそう)されていない道はでこぼこで、タイヤがジャリジャリと石を踏む耳障(みみざわ)りな音がした。

 写真家はそれにわずかに眉をひそめながら、「たかが絵にそこまでしますか?」と不満そうな口調で尋ねる。

「まだ妹の復讐の方が説得力がありますよ」

「彼は画家だ。芸術家というのは時々狂うからな」

「酒と薬をやるからでしょう」

 自分は芸術家ではなく職人だというような顔で写真家が言うと、運転手はわき見することもなく至極(しごく)真面目な口調で応えた。

「それらは逃避手段だよ。彼らを真に狂わせ、逃れたいと思わせるのはそんなものじゃない。彼らの敵は芸術そのものだ」


 その運転手の本職はタクシードライバーではなく新聞記者であり、自然に囲まれ、雪で閉ざされた小さな村での奇妙な悲劇に注目した唯一の人間だった。真実と事実を求める記者でありながら、しばしば小説のような空想めいた推測と主観混じりの娯楽(ごらく)記事を書くことが多く、この事件の報道に興味を持った読者は少なくはなかったものの、真剣に受け取った者は皆無に等しい。

 結局真相は何も明らかにならないまま、この事件は迷宮入りとなった。

 村の跡には墓地が作られ、不可思議な死に方をした者たちや毒で死んだ者たちと一緒にあの小さな少女も今や静かな眠りについている。

 この地の夏は短くはかない。あとひと月もすれば秋の気配が押し寄せ、じきに冬が来る。村はもうないが、いつものように雪が降り、冷たい石の庭園に雪化粧をほどこして少女の愛した白一色の美しい世界を再建することだろう。それを誰かが呪われた村と呼んだとしても、彼女はあの夜の月明かりのように輝かしい笑顔を浮かべ、最後までそこを楽園と呼んだ。

画家が描いた最後の絵の名前は「最も恐ろしき美」といい、白いドレスの者の名前も「最も恐ろしき美」という。

その者の姿は真に芸術を理解する目を持つ者にしか見えない。

しかし、中には「最も恐ろしき美」の絵を見ることで本当の世界を見る目が開く者もいる。

そういった者たちに真なる芸術を見せるのが「最も恐ろしき美」。

ただし、それを見た者の大半は狂い、芸術的に美しい死を迎える。


画家は芸術に取り憑かれ、狂気と恐怖の狭間で最後の絵を仕上げた。

その絵と共に生まれ故郷で静かに生を終えるつもりだったが、妹が村長によって殺されたため、彼は自分の中に最後まで持っていた何かを失って、村に復讐し絵と共に村を去っている。

絵の処分を、酒場で偶然知り合った退魔師に頼んだが、一時は「最も恐ろしき美」は美術館に飾られていたこともあり、幾人もの犠牲者を出したのは言うまでもない。

画家との約束通り退魔師は絵を破壊したが、それにより「最も恐ろしき美」は絵から解放され、真の幽霊のようになって今もどこかを彷徨い歩いている。


という内容の「最も恐ろしき美」という小説を昔書いており、これはその過去譚のようなものにあたる。

「最も恐ろしき美」という絵を描いた時の画家(少女の兄)の心境は、「最も恐ろしき美」という小説を書いていた時の私とほぼ同じ心境だと思う。

あの時ほど自分の命を削ってその先に血のインクを付け、恐怖の中で幻覚(気配)に震えながら書いた小説はなかった。

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