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【近未来】塔境: DESTINATION 始

この作品は『pixivノベル大賞〜2022 Autumn〜』イラストC部門に参加するため創作したものです。

https://www.pixiv.net/novel/contest/https://www.pixiv.net/novel/contest/novel22autumn


ある日崩壊した世界。

そこに残った数少ない町の一つ、「塔境」にはその名の通り、巨大な塔が建っている。

塔には亡霊が住み、地上に零と呼ばれる化け物を送り込んでいると噂されていた。

零は闇に潜む。だから地上に生きる人々は夜を恐れた。

もはや生存者はいないとされている塔の足元にあるスラムで生きるハジメも、仲間と共に零の気配におびえながら生活している。

そんなハジメの人生が変わった日の話。


元はゲーム用に考えていた世界と話で、それを企画用に多少いじって書いた短編です。

おそらく現状唯一のエンタメ小説だと思います。

 まだこの街が東京と呼ばれていた頃、ここは日本の中心で、世界には四季があり、光があふれていたという。しかし今や季節の半分は失われて久しく、夏は永遠に来ないまま、厚い灰色の雲が昼間も天を覆って人類に空の色を忘れさせた。

 街はかつての面影をすっかり失い、瓦礫だらけの廃墟と化した中心地には、黒々とした巨大な塔がたたずむばかりだ。

 『塔境』という新たな呼び名の由来となったその塔の足下には、もはや人類は住んでいないと政府は公表している。だが、世界から見捨てられた寄る辺なき人々がまだそこにいることを知らない者はなかった。


「ハジメ、聞いたか? 塔の亡霊の一人が落ちたって」

 日が暮れる頃、いつも仲間がたむろしている空き地のキャンプに行くと、先に来ていた仲間の一人が縁の少し欠けたカップを彼に差し出しながら物憂げに言った。

 カップには紅茶のような色の液体が入っているが、温かな湯気にはほのかにコーヒーの香りが混じっている。物資が限られたここでは、紅茶のように薄いコーヒーでも飲めるだけ贅沢だ。

「運良く配給物資を手に入れてな」

 友人はそう言ってカップを手渡し、ハジメのそばに腰を下ろした。

 その横顔を一瞥し、カップの中へ視線を落としたハジメは、独り言のように「どうせただの噂だろ」と呟く。その言葉は配給物資のことではなく、先の亡霊の話に対するものだ。

「そもそも塔から落ちて死ぬなんて、『亡霊』が聞いてあきれる」

 ひびだらけの崩れかけたコンクリート壁に背を預け、希望など持つだけ無駄だというようにハジメはカップを傾けた。そのまま目線を少し上にあげれば、嫌でも黒い塔が視界に飛び込んでくる。

 いつ見ても気が滅入る、と思いながらハジメは口の中のコーヒーを飲み込んだ。

 塔の足下に広がるこの廃墟と化した街では、希望も未来も水っぽいコーヒーより薄い存在だ。それらを冷ややかな現実が飲み干すのはあまりにも容易い。

 しかし、ハジメの発したあきらめとため息混じりの言葉に別の声が反論した。

「塔の亡霊は塔でしか生きられない。本当の死因は塔から落ちたことじゃなく、塔から一定以上離れたことだ」

「ラット」

 背を丸め、薄汚れたズボンのポケットに両手を突っ込んで足早にキャンプにやってきた小柄な青年の名を、誰かが驚愕混じりの声音で呼ぶ。

 ハジメも少し驚いた表情を浮かべ、「生きてたのか」と言った。

「この数日見かけなかったから、零にやられたかと思ったぜ」

「兄貴に見つかって、説教を食らってた」

 そう言ってどっかと瓦礫の上に腰を下ろしたラットに顔を向け、ハジメは少し不機嫌そうに目を細める。

「そういえばお前の兄貴、狩人だったな」

「ああ。その兄貴から亡霊が落ちたって話を聞いた、一人欠けたのは間違いないだろう。何でも、壱の座が空いたって話だ」

「主席が落ちたのか?」

 ハジメにカップを渡した友人が、他の仲間が持ってきたラットの分のコーヒーカップをバケツリレーのようにして渡しながら意外そうに尋ねる。ラットはそれを受け取り、「らしいぜ」と小さく頷いた。

「だから亡霊たちの間で壱の座をめぐって、内輪もめが起きるんじゃないかって言われてる」

 それを聞いてキャンプに集まっていた他の者たちも彼らのそばにやって来ると、興奮した様子で口々に話を始めた。

「だとしたらチャンスじゃないか? やつらが壱の座を取り合っているすきに、狩人たちが塔に攻め込めるかもしれない」

「地上に零を送り込んでくる亡霊どもを倒せば、この塔境どころか世界が変わるぞ」

「塔の力の解放だって夢じゃなくなる」

「どうだかな」

 そう言って会話に水を差したのは、どこか冷めた面持ちでカップを傾けているハジメだった。

 そんな彼に不満そうな様子で仲間の一人が言葉を返す。

「何だよ、お前だってこんなボロボロの世界にはうんざりだろ。夜になったらどこからともなく化け物がわいてくるんだ、安心して休める場所もない」

「それはそうだが、狩人なんて今や零退治より、金持ち連中の機嫌取りに夢中じゃないか。護衛だとか言ってしっぽを振ってついてまわるばかりで、夜の街にわいて出てくる零を倒してる連中は少数だ。そんなやつらが塔に乗り込むなんて危険をおかすと思うか?」

 ハジメの言葉にラットは鼻を鳴らし、「確かにな。俺の兄貴も今は腰巾着の仕事が忙しいみたいだし」と呟くように言った。

 狩人は、夜になると闇の中から現れる『零』と呼ばれる怪物を退治してまわる戦闘員だ。超能力のような強大な力を持ち、普通の人間の兵士が複数人で戦ってようやく倒せるような零をたった一人で圧倒する。

 その対零専門の狩人を育成し、世に送り出しているのは『救済の灯火』と呼ばれる組織だ。

 複数の高名な医学者と科学者により結成された、政府からの支援も受けている組織だが、現在、富裕層が高額の給与を支払うことで狩人を私兵として所有し、狩人の本来の仕事である零討伐をする人員が減少していることが問題視されており、狩人たちと救済の灯火の間でも亀裂を生む事態になっている。

 狩人となった者は零討伐に尽力する契約を結ぶ決まりではあるが、傭兵稼業をしてはならないという制約はない。救済の灯火は零討伐を最優先事項としているが、廃墟となった夜の街で怪物と戦うより、富裕層の者たちのそばでボディガードをすることを望む者の方が圧倒的に多いというのが現状なのだ。中には強大な力をひけらかし、マフィアのように成り上がろうとする者さえいる。

 そんな狩人たちが、零ばかりか塔の守護者たる九人の亡霊が住む敵の本拠地へ行きたがるとは、ハジメには到底思えなかった。

 救済の灯火は、塔境の足下に眠る未知の新エネルギーを独占するために魔女が建てたと言われる塔の奪取を最終目標に掲げている。しかし、狩人が生まれてから未だかつて塔に登った者は誰一人としていない。塔が封印している力を解放すれば、この荒廃した今の塔境ばかりか、同じような状況の世界をまるごと再興できるとさえ言われているのに。

「狩人の中には今こそ塔に登るべきだと主張するやつもいるらしいが、あまり賛同は得られていないみたいだぜ。兄貴は狩人の過半数が参加するなら自分も加わると言ったそうだが、三分の一も集まらないんじゃないかって話だ。しかも壱の座の亡霊が使っていた日本刀が地上に落ちたらしく、救済の灯火も今回はそれを探すのに必死で、塔への侵攻は二の次になっていると聞いた。刀が見つかるまでは、救済の灯火からの強い侵攻要請もないだろうな」

 そのラットの言葉を聞いて、ハジメは「やっぱりな」という表情を浮かべてみせる。

「金か力のあるやつは仮初の平穏に満足し、自分たちの利益のことだけ考えてる。わざわざ危険をおかしてまで、根本的な問題を解決しようとは思わないのさ」

 ハジメの苦々しい言葉に、その場にいた全員が気落ちしたようにうなだれた。

「せめて俺たちが狩人になれればいいけど、そもそも狩人になるには住民IDが必要だしな」

 誰かがそう呟くと、ハジメは「零のことを一番知り、一番恐れ、一番憎んでいる俺たちには、狩人を志す権利すらないんだ」と吐き捨てるように言う。

「だから夢みたいな希望なんて持つだけ無駄さ。そんな話に花を咲かせる暇があったら、いつ零が来てもいいように警戒しておくべきだ。もう日も暮れる。火をたいて闇を減らし、ここに目を付けられないよう静かにしておかないと」

 そんなハジメに面と向かって反論する者はなかった。

 だが、明らかに仲間の内の何人かは「少しくらい明るい話をしてもいいじゃないか」というように不満そうな表情を浮かべてみせる。中には舌打ちをしてぼやいたりする者もいた。

 そんな者たちも含め、ここにいる彼らは全員、今の日本という国には存在すらしていないことになっている人々だ。

 ハジメも両親がいた頃は塔から少し離れた場所に住んでいたが、珍しく遠方に出現した零に両親が襲われて死に、気が付けば住む場所も何もかもを失って逃げ込むように塔の足下に広がる廃墟に住み着くしかなかった。両親以外の唯一の肉親である姉は、ハジメが産まれるより先に病死したと聞く。彼を引き取ってくれる親戚もなく、公的には『誰も住んでいない廃墟』で彼はたった一人、亡霊のように生き抜かなければならなかった。

 この小さなキャンプに集まっている者たちも、みんな似たような境遇だ。当然ながら、そんな彼らの身分を証明する住民IDというものは存在しない。

 ラットだけは家族がきちんとした場所に住み、自身の住民IDも持っているが、父親の前妻の連れ子である彼は一家のはみ出し者で、狩人となって今は富裕層の護衛をしている兄だけが家族から愛され、求められている。兄はラットを真っ当な職に就かせたいようだが、両親がもともとそれに否定的であったことに加え、ラットが家に寄るたびに金を盗んだことから、今では勘当同然の状態だ。

 それでも彼が盗みをやめず、いつものように今回も兄から金をせびり取ってきたのは、ここが彼の居場所であり、求められている場所だからだった。

「まあ、そう暗い顔をするなよ。兄貴から金を巻き上げてきたからさ、明日街に行って必要なものを買ってきてやる。いつも通り、必需品は今優先度の高いものから、個人的に欲しいものは一人一つまで、残りの額で買えるものだけだからな」

 ラットがそう言うと、キャンプにいた仲間たちは歓声をあげて必要な物資の確認や、欲しいものの相談をし始めた。

 それを少しほっとした様子で眺めるラットに、仲間の一人が声をかける。

「本当にいつもいいのか? むしり取ってきたなんて言うけど、お前の兄さんがお前のためにくれた金だろ? お前の親は勝手なやつらだけど、兄さんはお前のこと気にかけてくれてるみたいなのに」

「俺が自分のために使ったって、何も良いことなんてねえよ。せいぜい酒とたばこに消えるだけだ。それならお前たちのために使う方がいいだろ」

 自嘲気味にそう言って立ち上がり、この話は終わりだとばかりにラットは手を振ると、物資の相談をしている仲間たちの輪の中へ入って行った。

 ハジメは一人で火を起こす準備をしながらそのやり取りを聞くとはなしに聞き、知らず知らず眉根を寄せる。

 ラットにはいつも感謝はしているが、狩人の財布から出る金に感謝する必要があるとはどうしても彼には思えなかった。

 両親が死んだのも、狩人の人員不足で一部地域の巡回が不充分となり、遠方まで零が移動したことが原因だ。当時は今ほど狩人たちが富裕層の私兵として引き抜かれることはなかったが、零の数は増える一方だと言われる中、狩人の人員不足はすでに何度も指摘されていた。

 それにもかかわらず、限られた人手で必要なだけの仕事をこなせるよう指揮を執れる人材が狩人の中に現れず、救済の灯火もこの頃から、強い力を手に入れて増長する狩人たちの扱いに手を焼き始めていたことは不運と言える。

 誰かが現状に合った最適な巡回路を考え、狩人たちが零狩りをきちんとしてくれていれば、ハジメの両親は死なずにすんだだろう。

 もちろんそれはラットの兄のせいではないのだが、狩人に対してハジメが良い感情を持てないのも仕方のないことだった。

「お前が零と狩人を誰よりも恨んでいるのは知ってるが、あまりみんなの希望を奪うようなことは言うなよ。たとえ幻想でも希望を持つのは大事だし、仲間にも嫌われるぞ」

 一人ぽつりと輪の外にいて自分の仕事をするハジメにそう声をかけたのは、最初にコーヒーカップを持ってきてくれた友人だった。彼は臆病だが、まるで母親か父親であるかのように面倒見がいい。仲間思いで、みんなのことをよく見ている。

 だから、仲間たちから少なからずひんしゅくを買った自分のことを気にかけたのだろうということは、ハジメにもすぐに判った。

「俺はみんなが変な希望を持つことで失望したり、浮かれて必要な注意を怠ることがないようにしたいだけだ」

 そう言ってハジメは小さく肩をすくめる。

 そんな彼を見て、もう失いたくないからか、とは友人は尋ねなかった。そんなことは訊くまでもないだろう。

「……忠告は覚えておくよ」

 ハジメが呟くように言い、友人は声もなく笑ってハジメと手を打ち合わせた。


 その晩は、ハジメにとって人生で二度目の『最悪の夜』であったと言える。

 結局、仲間たちは物資の相談を終えたあとも、塔の亡霊が一人いなくなったことで今後どうなるか、世界が変わったらどうしたいかなどを語り合うのに夢中で、火の番以外の者が眠りについたのは、いつもより二時間以上遅い時間だった。

 それが良くなかったのだろう。次の火の番が寝過ごし、先の火の番も交代の者を起こす前にうたた寝を始めてしまったらしく、ハジメが肌寒さを覚えて目を覚ました時には、キャンプの火はもうほとんど消えかけていた。

 ハジメはあわてて飛び起き、火をたいているドラム缶に駆け寄ったが、火を大きくしようとしたところでふと手を止める。

 彼はこの状況とよく似た経験をかつてした記憶があった。

 零は光や火を嫌う――それは事実だ。だから彼らは決まって夜にしか現れない。

 塔を伝って地上に降り、陰に潜んで闇をまとうことで強くなる。

 つまり明かりが弱点だと言われているが、一定以上の力を持った零は光や火を恐れないことをハジメは知っていた。はじめから灯っている明かりにはほとんどの零が近付かないが、闇の中に突然灯る明かりに彼らは敏感だ。不快な感覚を刺激されるのか、充分な力を持った零は明かりを消そうと襲ってくる。

 ハジメの両親が死んだ時は、突然の停電がきっかけだった。彼らが住んでいた郊外の小さな住宅地は一時的に光を失い、そのまま夜が訪れ、ようやく電力が復旧したのは、零が闇に溶け込むのに充分な時間が経った頃だ。

 夜の停電時には家の明かりを消した状態のまま朝を迎えることが推奨されていたが、夜の闇に慣れていない人々は電気が戻ると一斉に明かりをつけた。それはまるで暗い海の上にぽつりと浮かぶ離れ小島に、突然光が灯ったように見えたことだろう。

 そこから零による急襲まで一時間もなく、郊外とはいえ街にほど近い場所に零が現れたのはこの時が初めてであり、零は闇の中の突然の光源に襲いかかる習性があるという説を実証した例の一つとなった。

 現れた零は一体だけで標的も小さな住宅地だったため、大きな被害はなかったとされている。しかし狩人は一度も現れず、零が闇の中に消えたあとに残されたものといえば、破壊された家屋と何人もの怪我人、ハジメの両親を含む数名の死者、そして母親に押し込まれた小さなクローゼットの中から両親の死を目の当たりにした幼いハジメだけだった。

 闇の中で強い明かりをつけてはいけない――そのことを思い出し、ハジメは今にも消えそうなキャンプの火を絶やさないように、しかし突然火が大きくならないよう慎重に燃料を足そうと思い、居眠りをしている火の番の方へ目を向ける。そのそばには乾いた木片や紙の束、少量の灯油などが置かれていた。

 ハジメがそちらの方へ手を伸ばそうとすると、火の番が目を覚まし動転した様子で「あ!」と声をあげる。

「まずい、火をつけなきゃ!」

 そう叫んで彼は灯油の入ったボトルをひっつかんでふたを開けると、ハジメが制止する間もなくドラム缶の中に注ぎ込んだ。

 ハジメはとっさにその仲間の腕をつかみ、力いっぱい引き寄せる。

 その瞬間ドラム缶から炎が吹き上がり、さっきまで火の番の顔があったあたりまで赤い光が広がった。

「火に直接油を注ぐやつがあるか!」

 声をひそめながらもハジメは声を荒らげる。

 その声と先ほどの火の番の叫びで仲間たちも目を覚まし、何事かと眠たそうにぼやきながら体を起こした。

 そんな彼らにハジメは「火を消せ!」と言って周囲を見回す。どこかにドラム缶のふたがあるはずだ。

 しかし、仲間たちはハジメの意図が判らず、「火を消す? 何を言ってるんだ?」といぶかし気に首をひねる――と、次の瞬間にその首の内の二つか三つが漆黒の影に飲まれ、ハジメはすでにすべてが手遅れであることを悟った。

 突風と共に大きな闇が降り注ぎ、どおんという音と地響きをたててドラム缶をいとも容易く踏みつぶす。

 ハジメは火の番をしていた仲間と一緒に後方へ吹っ飛ばされ、崩れかけのコンクリート壁に激しくぶつかった。

「零だ!」

 誰かがそう叫ぶ声と複数の悲鳴が重なり、気を失いかけたハジメの鼓膜を叩く。くらくらする頭を支えながらハジメは身を起こし、肺から押し出された酸素を求めて息を吸おうとしたところで咳き込んだ。一瞬、呼吸の仕方を忘れてしまったような錯覚に陥る。

 痛みと驚きと焦りが自分を支配しようとわき上がってくるのを必死に理性で抑えながら、ハジメは何とか顔を上げた。

 その視界の先に見慣れた友人の姿を見た気がする。紅茶のように薄いコーヒーを持ってきてくれた彼だ。

 ハジメはとっさにその名前を呼ぼうとし、腕を伸ばす。

 だが、次の瞬間に友人はハジメの腕の先ごと闇に飲まれた。

 ドラム缶はつぶされ、火もほとんど消えてしまっている。それなのに、黒い影が友人を取り込んだのははっきりと見えた気がした。

 迫りくる闇。満ちることのない虚無。恐怖そのもの。零と呼ばれるそれがすぐそばにあるのを感じる。

 食われた腕の痛みは不思議と感じなかった。ならば彼も食われたことにすら気付かず死んだことだろう。

 ハジメは静かにゆっくりと息を吐きだし、じりじりとあとずさりをしたが、何かにつまづいて尻もちをついた。ふり返ると、ひしゃげたドラム缶のふたの向こうに気を失っているらしい火の番をしていた仲間の姿が映る。

 ハジメはそれを自分の背に隠すようにしてさらにあとずさりしながら思った。ここにクローゼットがあれば良かったのに、と。

 しかし、闇はそれ以上彼を追い詰めることはなく、まるで神の手がまったく違う場面の本のページをめくったかのようにその場からかき消えた。

 代わりに暗い色の長いコートを着た男がまばたきの隙間をぬって現れる。

「これで終わりかな?」

 そう言った男の声は意外にも若かった。

 それに「たぶんね」と幼い少女の声が応える。

「こっちも終わり。三体だけだったみたい」

 ハジメがもう一つの声がした方へ顔を向けると、黒髪の少女がぬいぐるみを抱えてとことこと歩いてくるのが見えた。その人型のぬいぐるみの目からは、ぼんやりとした緑色の光が放たれている。それは決して強い明かりではないのに、周囲の様子がよく見えた。

「ああ、彼女の明かりは零を刺激しないから大丈夫だよ」

 コートの男がそう言ってハジメの方へ歩み寄り、手を差し出す。夜だというのにサングラスをかけているのでその表情は見えないが、声音は穏やかで同情的だった。

「これでも急いで駆けつけたつもりなんだけど、悪いことをしたね」

 その言葉を聞いてハジメは反射的に伸ばした自分の腕の手首から先がないことに気付き、反対の腕を出そうとしたが、コートの青年はハジメの二の腕をつかんで軽々と引き起こした。

 ハジメは決して大柄な方ではないが、それでもこれほど簡単に助け起こすにはかなりの力が必要だろう。だが、零を倒せる狩人には何も難しいことではない。

「子供連れの狩人……?」

 ハジメのそんな呟きに、コートの青年は少し心外そうに「僕の子じゃないよ」と言った。

「妹みたいなものさ」

「妹……」

 おうむ返しに言ってハジメは再び少女の方へ視線を向ける。すると彼女もまた、じっと彼のことを見つめていた。

「私は九十九(つくも)。この子はビビ」

 おもむろに少女が口を開き、ぬいぐるみを持ち上げてみせる。

 そんな彼女の言葉を聞いて、ハジメとコートの青年が同時に少し驚いた顔をした。

「珍しいな、恥ずかしがり屋の君が自分から先に名乗るなんて」

 そう言った青年は禄と名乗ったあと、「僕のはあだ名みたいなものだけどね」と付け足して笑う。

 ハジメは禄と九十九、二人からの視線を受け、わずかにためらったあと呟くように言った。

「……ハジメ」

 特に珍しくもないはずのその名を耳にした途端、禄が「まさか」と、はっとした様子で九十九を見やる。

 そんな禄の方を振り向くこともなく、ハジメのことを見つめながら彼女は独り言のように言葉を紡いだ。

「詞が私も一緒に行った方がいいって言った意味が判った」

「この未来を視たのか」

「どうかな……確証はなさそうだったから、勘かも」

 そんなことを言い合う二人に、ハジメは戸惑いながら尋ねる。

「な、何の話だ?」

 しかし、その問いに答える前に禄が逆にハジメに問い返した。

「ハジメ、君には姉さんがいなかったかい?」

「いた……らしいが、俺は知らない。俺が生まれる前に病気で死んだと聞いた」

「名前は?」

 さらに尋ねられ、ハジメも「まさか」と心の中で思いながら答えを返した。

「確か九十九……だが、ありえない。生きていたなら俺より年上のはずだ」

「私はもう、年を取らないの」

 そう言って九十九はビビと呼んだ人形をぎゅっと抱きしめ、口を閉ざした。

 そんな彼女に代わり、禄が言葉を継ぐ。

「彼女は生まれつき重い病気だったから、どうせ死ぬなら子供の狩人覚醒実験に参加させて一縷の望みにかけたい、という両親の願いで救済の灯火に送られたんだ。そして彼女は唯一の成功者となった」

「そんな……そうだとしても、狩人も年を取るはず」

 突然突きつけられた信じがたい存在を何とか現実で振り払おうとハジメは言葉を返したが、禄が軽い口調でやすやすとそれを打ち砕いた。

「言っただろ、九十九は成功者だって。彼女だけ、塔の亡霊同様に年を取らない不滅の存在になったんだ。まあ、そのせいで不老不死の研究や実験に利用されそうだったんだけどね」

「禄が私を研究所から連れ出してくれたの」

 そう言って九十九は隣に立つ禄を見上げた。その背はすらりと高く、細身だがスポーツ選手のように体格がいい。しかし、ただの人間に零を倒せるはずがないし、そもそもハジメには禄がどうやって零を倒したのかさえ判らなかった。

 零を前にした時に似たある種の恐怖に近い思いを抱きながらハジメは呟く。

「あんたは……」

 それに九十九が淡々とした口調で「禄は塔の亡霊」と応えた。

「バカな、塔の亡霊は地上に降りられないはず」

「僕は特別さ。亡霊の中で僕だけが地上で活動できる。だから地上での情報収集や情報操作が僕の主な仕事。九十九が地上に降りられるのは、彼女が狩人だからだよ」

 そう言う禄と九十九の顔をハジメは交互に見るが、二人とも冗談を言っているようには見えない。

 ハジメは混乱する頭を必死に働かせ、話を整理しようと努めて冷静な語調で疑問を口にした。

「その子供が本当に姉貴で、本当に狩人なら……何故塔の亡霊に荷担してる? 実験されそうになっていたところを助けられたとは言っても、塔の亡霊とその亡霊どもを作ったとされる魔女は、世界をこんな風にした張本人だとも聞く。しかも今なお、塔の下に眠る力を独占しようとして零を地上に送り込み、人類を滅ぼそうとしてるってのに」

「地上ではそう伝えられているらしいね」

 ハジメの言葉に禄はため息混じりにそう言って肩をすくめる。

「何度も正しい情報を伝えようとしたが、救済の灯火が必死に否定して回っているようで、うまくいっていないんだよね」

「無理もないよ。実際、零は塔から降りてくるんだもの。塔の亡霊がけしかけてるって思うのも当然だと思う」

 九十九が仕方なさそうに言うと、録は「僕らだけで地上を目指す零すべてを狩るのも難しいのに、溜まって地上に直接わく奴らまで倒して回るのは無理なんだよね。地上に降りられるのは僕だけだし」と苦々しげに応じる。

「だから地上の零を倒してくれる狩人の存在を僕らは歓迎していたんだが、彼らは最近、零狩りはおろそかにしているようだし、狩人を生み出している救済の灯火自体は僕らを目の敵にしている面倒な連中でもあるんだよなあ」

 禄はそう言うと、もう一度肩をすくめて大きなため息をついた。

 しかし、ため息をつきたいのはこっちの方だとハジメは思う。

「待て……待ってくれ。何の話をしているのか、いや、あんたらが何を言っているのか判らなくなってきた」

 突然零に襲われ、当然の事実だと思っていたことが次々に覆された上に姉を名乗る幼い少女まで現れて、何を信じればいいのかハジメには判らなくなってしまった。

 そんな彼の肩を軽く叩き、禄が「あまり深く気にしなくていいよ」と励ます。

「ただの人間である君の日常には何も関係ないことさ」

「でも……姉貴なんだろう……?」

 おそるおそる確認するように言ってハジメは九十九に目を向ける。

 世界の真相がどうであれ、このことだけはハジメ自身にも関わることだ。ならばそこだけははっきりさせたいと彼は思った。

 ハジメのその思いを汲み取ったのか、九十九は自分よりもずっと背の高い弟を見上げ、至極真面目な面持ちで「そうだよ」と頷いてみせる。

「会えて良かった。弟がいるのは禄が調べてくれたから知っていたけど、両親もいなくなって廃墟の街に住んでるらしいと聞いたから、あきらめていたの。つまり……会う機会はないと思ってた。だから、こうして立派に生きているところを見られて良かったよ」

 そう言って九十九はハジメの方へ歩み寄り、零に手首から先を食われた方の腕を取ると、ぬいぐるみを抱えたまま腕の先を包むようにハンカチを器用に巻きつけた。

 それをどこか呆然とした様子で見ながら、ハジメがうめくように応える。

「別に立派じゃねえよ……似たような境遇の奴らとつるんで、一日一日をただ生きてるだけだ。姉貴の方がよっぽど……」

 ハジメの言葉を途中でさえぎるように九十九は首を振り、弟の方へ両腕を伸ばして言った。

「今日まで生きててくれて嬉しい。よく頑張ったね」

 九十九は精いっぱい背伸びをしてハジメを一度ぎゅっと抱きしめ、そして幽霊のように音もなくそっと彼から離れた。

「……そろそろ行こう。壱の遺品を探さなきゃ」

 呟くように言うと、九十九はきびすを返して禄を見上げる。彼もそれに頷き返した。

 そんな彼らにハジメがはっとした様子で尋ねる。

「遺品って、刀か? 壱の座の亡霊が死んで、地上に落ちたっていう……」

 しかし、ハジメの言葉に九十九は振り返り、「壱の座?」と怪訝そうに尋ね返した。

 それに答えたのはハジメではなく禄だ。

「地上の人たちはそう呼んでいるようだが、塔の亡霊に座なんていう役職みたいなものはないよ。壱はただ、壱という名前を持っていた亡霊で――元は人間だ。僕も仁も、桟も詞も、悟、無、初もみんな名前で、誰も誰かの代わりにはなれない。君に代わりがいないようにね」

「じゃあ……壱の座を争って亡霊たちが内輪もめをするって話は……」

「地上ではそんな風に言われてるの? あり得ないよ。僕らはみんな、壱を失って悲しんでいる。親しかった悟は特にね。だから遺品はどうしても見つけて持ち帰りたいんだ。彼がいた証はそれしかないから」

 禄のその言葉にハジメは何も返すことができなかった。実の姉だという少女を引き留めたいのかも、引き留めていいのかも判らない。いや、引き留めたところで何をすればいいのかさえ判らない今の自分には、何を望む資格もないと彼は思った。

「行こう、九十九。それとも地上に残るかい?」

 禄が九十九に手を伸ばし、兄のように尋ねる。少女はそれに首を振って「いいえ」と応え、彼の手を取った。

 その後ろ姿にハジメが静かに言葉を投げる。

「救済の灯火が必死に刀を探してるって聞いた。奴らのところに行けば見つかるかも」

「なるほど……厄介だが可能性は高そうだ。行ってみるよ」

 禄が礼を言って手を振ると、次の瞬間にはもう二人の姿はどこにもなく、小さな空き地にはキャンプの名残りのがらくたと廃墟、そしてハジメと彼の後ろで気を失っている火の番をしていた仲間一人が残されるばかりだった。

 零に食われたらあとには何も残らない。街の住人ですら、住民IDを失って幽霊のようにデータの世界からもいなくなる。そういう意味では零のもたらす死はとても平等だ。痛みもなく、安らかな闇だけがそこにある。

 だが、それでもそれを歓迎したいと思えないうちは少なくとも自分は生きているのだろうとハジメは思った。

 ラットもきっと生き延びただろう。小柄で逃げ足が速く、情報通であることからついたラットの呼び名は伊達ではない。他にも逃げた仲間をまた集めて、面倒をみてくれるはずだ。

 ならば自分は自分のやるべきことをやろうとハジメは思った。


 救済の灯火は対零戦闘員たる狩人を育成する組織だから、もっと物々しくて剣呑なやつらばかりがいるのかと思っていたら、神父のように穏やかそうな老人がでてきてがっかりだ、とハジメは心の中で不満げにぼやく。

 しかも彼が部屋に入ってきて一言あいさつをしてから、もう五分は優に過ぎていた。その間老人は書類を読みふけり、会議室のような広い部屋に一人ぽつんとパイプ椅子に座らされているハジメは、上着のポケットに手を入れ、足を組んでただ待つばかりだ。この部屋に来るまでにも、すでに半日以上は経過している。

 いいかげん文句の一つでも言ってやろうとかハジメが思い始めた頃、ようやく老人が手に持った書類から顔を上げて言った。

「よく来てくれたね、始君。九十九君の弟がこんなに立派になっているとは……会えて嬉しいよ。二十年前、君のお姉さんの九十九君が不慮の事故で亡くなった時、ご両親は生まればかりの君を育てなければいけないし、もう自分たちのことはそっとしておいて欲しいと言ったのでね、その後の消息を知らなかったんだ。零に襲われてご両親が亡くなっていたと知っていれば、すぐにでも君を保護したのに……君にもご両親にも気の毒なことをした」

「うちの親が放っておいてくれと言って、それに従ったならあんたらに否はないだろう。それについては俺は別に恨んでないし、そんな昔話を聞きたくてここへ来たわけでもない」

 そう言ってハジメはパイプ椅子から立ち上がり、長いテーブルをはさんだ向かい側にいる老人の方へ身を乗り出して尋ねた。

「俺を狩人にする気があるのかないのか、いいかげん答えをくれないか」

 口調こそ冷静だが、そこにはわずかにいら立ちの色が見て取れる。

 しかし老人はそんなハジメに臆することなく、微笑んで彼に言葉を返した。

「狩人になるための申請には住民IDが必要だが、それを持っていないと言う君は検査の結果、確かに九十九君と血のつながった弟であることが判った。住民IDの再発行もこの検査結果があればすぐにすむだろうし、狩人申請の年齢制限も問題ない。ならばもちろん、君には狩人を志す資格がある」

「だが、実際に狩人になれるかどうかは手術や訓練をしてからじゃないと判らないんだろう?」

 ハジメが慎重に尋ねると、老人はこれまでのもったいぶった態度からは打って変わってあっさりと「君なら間違いなく狩人になれるよ」と言った。

「狩人の素質は遺伝によるところが大きいと言われている。君のお姉さんの九十九君は非の打ち所のない狩人だった。君もそうなるだろう」

 それを聞いてハジメが気に入らないといった様子で鼻を鳴らす。

「非の打ち所がない、か。『不慮の事故』で死んだのに」

「不慮の事故とはそういうものだ。どんなに才があり、恵まれていても悲劇が起きることはある」

 そう応える老人をじろりと睨み下ろし、ハジメはしばらく黙っていたが、やがて「まあいい」と言って背を伸ばすと独り言のように呟いた。

「俺を狩人にしてくれるなら、文句はないさ」

「では私からも一つ訊かせてくれないか。君が何故狩人を志すのか。最近、君がいたキャンプが零に襲われたという話はこの報告書を書いた者から聞かせてもらったが、それだけがきっかけではないだろう?」

 書類を振りながら穏やかに老人は問う。

 それにハジメは小さく肩をすくめ、「別に」と皮肉っぽく言った。

「我慢ならなくなっただけさ。今いる狩人は腑抜けたやつらばかりだし、姉貴が狩人だったって話は親から聞いてたから、俺もなれるんじゃないかと思った――それだけだ」

「……本当に九十九君が狩人だったことをご両親が君に話したのか? もう我々と関わりたくないと願っていたのに?」

「親父は酔っぱらうと口が軽かったからな」

 こんなでまかせを平然と真顔で言えるのは元からの性格のせいなのか、塔の下の廃墟で培った図太さゆえなのかは、ハジメ自身にもよく判らない。ただ、九十九本人や塔の亡霊の禄から聞いたということは言わない方がいいと彼は判断した。

 それに、彼が今したい話はそんなことではない。

「絶望に倦むのも、奇跡が起きることをただ祈るのももうやめた。力があるなら、それで自ら零を倒せばいい。あんたらが今一番欲している零討伐への意欲を俺は塔の下から持ってきた。やる気のない狩人たちへの怒りと一緒にな。だから俺がやる――いや、俺にやらせろ」

 そう言ってハジメは老人の静かな目を真っ直ぐに見据える。

 狩人の中には相手の目を見れば考えていることが読める能力を持つ者もいると聞くが、ハジメには眼前の老人の考えも、救済の灯火全体の思惑も読むことはできない。

 だが、禄の話を信じるなら地上で語られていることのすべてが真実ではなく、救済の灯火は意図的に事実を曲げたり隠したりしている。それを暴きたいと思うわけではないが、真実を知りたいとハジメは思った。狩人になればそれも不可能ではないだろう。少なくとも今のままよりは判ることも多いはず。

 そして真実が判れば、姉の敵が誰で、誰が本当の味方であるかが判る。

 だから彼はここに来たのだ。ここからすべてを始めるために。

「納得したか?」

 ハジメが問うと、老人は「いいだろう」と一つ頷いてゆっくりその場に立ち上がると、ハジメの方へ手を伸ばした。

 それをハジメは零に食われていない方の手で握り返す。

 共に始めよう、と老人が言った。

零は虚無。何もないから命≒魔力を欲している。だから人を食う。

塔の亡霊は九人いると言われていて、壱、仁、桟、詞、悟、禄、無、初に、現在は元狩人の九十九がいる。

名前が数字なのは、作者にネーミングセンスがなさすぎて数字を順に付けたから。それ以外の意味は特になく、作中でも亡霊たちがコードネームのような数字っぽい名前であるのはただの偶然ということになっている。

とはいえそれが彼らの本名ではなく、本名の一部から採ったあだ名のようなものではある。


救済の灯火は、塔の下に眠る魔力を得るために、塔を制圧しようとしている。

そのための戦力である狩人で地上にわく零退治を行い、地上の人々の人気取りをしているが、最近は狩人たちの横暴ぶりに手を焼き気味。


塔の亡霊たちは魔女によって能力を得た元人間で、塔の守護者。塔の下の魔力を狙って空から降りてくる零たちを退治し、塔を守っている。

世界が滅びかけたのは、吹き出た魔力のせい。

魔女はその被害を抑えるために塔で魔力の間欠泉をふさいだ。

その塔が失われることは、魔力が再びあふれ世界が危機に瀕することを意味する。


零たちの大半は地上に降りる前に亡霊たちに狩られているが、時折彼らの目から逃れて地上にたどり着いたり、地上に直接わく零もいる。それらは塔の上部に出現する零よりはるかに弱い(強い零なら、索敵能力を持つ桟が見逃すはずがないから。彼女のセンサーに引っかからないほど弱い零がまれに地上に降りる)。

つまり、塔の上部で零を狩っている亡霊たちは、地上の零を倒す程度の狩人とは比べ物にならないくらい強い。


なのになぜ亡霊の一人である壱が死んだのか、というのがゲーム本編の話だったが、いろいろあって日の目は見ていない。

この短編は壱が死んだ直後の地上での話。


ちなみに、舞台が元東京(日本)なので、亡霊のほとんどが日本人だが、一人だけフランス人がいる。

それが禄。本名はRochロック。唯一、地上に降りられる亡霊。能力が空間転移や空間を操るものであるためだと思われる。

零を空間の狭間に落として消す、というエグイ戦い方をしてはいるが、戦闘要員というよりは地上の情報収集や情報操作が主な仕事。地上ではプロのスポーツ選手としての顔を持っている人気者。


禄の相方とでも言うべき詞は塔の一部からほぼ動けないかわりに、千里眼と未来視の能力を持っている。

禄は動けない彼のかわりに方々へ出かける足であり、目。

本名は詞人ノリトで、日本人だが北欧人の祖父の血を濃く継いで、日本人離れした容姿をしている。

禄が仲間の亡霊と流暢に日本語で話せるようになるまで英語で通訳をしていたこともあり、お互いへの信頼は篤め。

亡霊になる前の詞の本業は詩人。拙作「逢魔ガ時ノ幽霊」に出てくる詩人と同一人物。

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