カケル。(片9。)
宙と君との真ん中で
帚星にまたがった魔女の彗星が
暗くて静かな夜空に翔て
赤い欠片残して割れた
ルルラルヒルルラルテ
呪文を唱えた流れ星が瞬きして
目を回して墜落する
この惑星には数えきれないほどの生命が蠢いていて
流れ星の隣にひっそりと浮かんでいるのを見つめて
マイナス180℃の永久影と呼ばれた月面クレーターの世界を見上げていた
その月の傍でカケタ、
赤い彗星ヲトモニ。
すべての生きものたちの目に赤い魔女がまたがった帚星がウツル。
ルルラルヒルルラルテ
星の声を聴いた
夜空にカケル赤い流れ星の
呪文のような声のような呻きが
夜空の大気圏の振動とともに
ごおっと鳴って
日常の時間と空間を歪ませていたこの惑星のチュウシンブへと堕ちた。
ルルラルヒルルラルテ
小さなブラックホールが生まれて
時間さえも黒く沈み込ませた
大地の心臓部から赤いマグマが噴き出る
宙と君との真ん中で
どうやら肉体から解き放たれた星々のカケラたちが
夏の夜に見た蛍のようにこの漆黒に満ちた月の夜空にカケテゆく
まるで燈籠の明かりが
金魚掬いのホイが水に溶けるようにして破けたみたいに
夏の日の記憶が
冬の夜空に溶ける
ルルラルヒルルラルテ
宙と君との真ん中で
空と君とがカケル。