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縁結びの副神の微笑み10

——数年後——


 結婚は家と家の結びつき。その結果双方の家が栄える結婚は幸せなもの。そこに家族仲も夫婦仲も良いので俺は世間から羨望の目を向けられるのではないだろうか。そう、たまに自慢したくなる程幸福な生活を送っている。

 日々の生活で細々気になる事はあるけど、義父は失明のみで元気で業績はジワジワ右肩上がり。

 俺の人生は順風満帆だけど多少の悩みはある。

 妻のメルは初恋を忘れられないようで、初恋の男が地区兵官になったから地区兵官が近くを通ると目で追う。

 最近ふとそう感じてちょこちょこ気になるようになるも彼女の心は俺に向いているのでわりと平気。

 しかし夢を見て、メルを迎えにきたと告げた浅黒男の手を取った妻が家を出て行く夢だったので先週から少々イライラしている。

 自分に真っ直ぐ気持ちを向けられているけど、この間地区兵官に切なげな表情を向けていたなと思い出したから不愉快さが増している。

 来月三日は結婚記念日。彼女はあれからずっと彼を忘れられないのかと思ってしまったので余計に苛立つ。

 違うのは知っている。理解している。俺は彼女の隣で変化を見てきたし彼の話題なんてない。

 だから自信がなくて情けないとか、メルの想いを疑うみみっちい男だな、と自分に腹が立つ。なぜ急にこうなったのだろう。多分欲求不満だ。

 初夏から俺とメルはご無沙汰。やんわり拒否され続けて、拒否が続くことなんてこれまでなかったから戸惑って誘わなくなりそれきり。


 今夜は友人ハインに頼まれて遠路はるばる一区花街へやってきた。

 宴席に人数が欲しいという。その日来る者と商談、花街で営業、ツテコネ獲得になるかもしれないからと誘われた。

 一区に販路を求めていない。遊楼で接待はしない主義。そう断ったら拝み倒された。

 ハインが狙っている気まぐれ花魁が前回、自分の遊楽女(ゆうらくじょ)やお気に入りの遊女と客の話が合わないとヘソを曲げたらしい。

 流行を知らないとか、有名文学の話題なのに分からないなど。

 自分抜きのそれなりの額の宴席を三回。それがその花魁が新規客と会う条件だったので前回は従業員に労いも兼ねて行ったけど結果が悪かったから雲行きが怪しいという。

 醤油を買ったら限定浮絵を買えるという商法はどうだと言われて、売れ行きの良い六番地で人気のサ組の火消しの限定浮絵を作って破格値で売る。そう交渉された。

 それは欲しいと思ってメルの許可を得た。妬いて嫌だと言うと思ったのにあっさり了承。それにも若干イラつき気味。


 浮気するぞ! と思ったけど俺は何人もの他人が沢山触れた女性を抱きたくない。

 花街教育の時に遊女の冷めた瞳の妖しい笑みから逃げてあの感じは嫌だと記憶したのもある。

 色欲大旺盛ではないから花街で色春遊びはしない主義。そのお金で他のことをしたい。

 しかしご無沙汰が長くなると少し怪しい気配。花街で花芸妓や遊女は嫌だ、だと身近な女性を気にしそうで怖い。

 メルが嫉妬しなかったのは信頼信用の積み重ねの結果だから嬉しいのに嬉しくないのはご無沙汰で気持ちが離れたと疑っているからなのか何なのか。

 だからとっくの昔に終わった妻の初恋を引き合いに出してまだ忘れられないのか、と蒸し返したのだろう。

 地区兵官に切なげな表情は俺の幻惑で、見かけたら笑顔で手を振りたい、という昔言っていた事のはず。

 初恋を叶えて幸せな日々を過ごしていたのに結婚後初めての壁疑惑。

 話し合いが必要なので分析、調査、相談相手の見極め中。下手な言動で崩壊、離縁なんて心底嫌だ。

 なので色欲に負けてちょっと遊ぶ、という浮気でさえ絶対にしてはいけない。許す女性はいるだろうけどメルは俺と同じく色系に潔癖気味だ。

 しかし大花街の花魁を無料(ただ)で見られるのと特別浮絵制作につられてここへ来てしまった。


「花魁に手を出そうなんて羽振りが良いことで。しかも三区ならともかく一区花街とは」

「いやあ、人気絵師が現れたからな。我慢強く育てたというか待った甲斐があった。それに気まぐれ花魁の噂通り夕霧花魁は若い見た目良しの客は安くするって言ってくれた」


 他の者達は現地集合。俺はハインと彼の店で限定浮絵の打ち合わせをしたから今一緒にいる。

 一区花街には初めて来た。上地区、もしくは南地区最大の花街なのでチラッと寄ったら小物屋で珍しいものを発見。買うか迷ってメルと二人で選んで買いたいからやめた。

 二人で祭りの出店を眺めるのが楽しいようにこの街をメルと歩くのは面白そうな予感。

 花街外周りも観光地だから立ち乗り馬車を降りた後に歩くのも散歩という名の観光になる。

 こうやって見て考えてみて、大きな花街は有名観光地でもあったと思い出した。


「シエルさん。どうせ奥さんに何を買おうとか、むしろ一緒に来て何か買おうとか、ついでに夫婦に人気の洒落た連れ込み茶屋とか考えただろう」

「まあ。その通り」


 夫婦に人気の洒落た連れ込み茶屋。俺は結婚して何年だ!

 家以外でたまに、と近くの安宿ではなくてそういう考えは大事そうなのになぜ今知る。


「相変わらず仲良し夫婦だこと。俺の嫁さんなんて子どもを産んだら全然触らせてくれなくて」


 俺もほぼ触らせてもらえていない。この感じだとハインは役に立たなそうだから相談相手から除外。


「一年くらい我慢して二人目が欲しいって言うのはどうだ?」

「その予定。あと花街で散財して金遣いが荒いと怒られる。相手してくれないからと文句を言う作戦」


 その案は……却下。ハインの妻は知らないけどメルだと火に油疑惑。

 喧嘩になるから先にそう言うべきだと思うとハインに告げたら「はいはい」という返事で聞く耳もたなそう。

 ハインは売る浮絵のネタ探しでここに定期的に来るそうだ。まあ、そうだろう。商品も売っているだろうし。

 有名遊女や花芸妓はお洒落の最先端だったり憧れの的で浮絵が売れる。この街の住人向けの浮絵や春画もある。春画は花街外で販売禁止。

 ハインはお披露目広場で菊屋の夕霧花魁に見惚れて一生に一度の花魁は彼女だと思ったらしい。


(花魁行列はメルさんも見てみたいって言っていたな。この間の背くらべの陽舞伎(よぶき)の後に。あっ、そうだった)

 

 母に頼まれた役者の浮絵をハインから回収。母に影響されて陽舞伎(よぶき)や演劇の観劇が趣味になったメルが役者好きになっていないのは安堵。

 彼女は作品が目の前に現れて音楽までついているのが楽しいらしい。付き合わされた結果俺も同じような意見に変化した。

 俺は観劇後に喜怒哀楽を顔に出して感想を語って家で鼻歌や知っている曲を琴で演奏してくれるメルを見るのが楽しい。それが趣味は観劇の理由の大半を占めている。

 食事、味付け、色彩、曲、文学作品、犬好きなど俺とメルはあれこれとても気が合う。だから喧嘩をほとんどしない。お互い怒りをぶつけ合わないのもある。


(イライラしていても仕事ではない時の俺の頭の中はメルさん中心だな)


 始まりは単にそこらで見かけただけなのに、こんなに夢中とは実に不思議な縁。

 宴席は二十一時からで一時間。俺はそれで帰宅する。この街を出て歩いて家方面へ帰れる立ち乗り馬車の停留所まで行って帰路につく。日が変わる前には帰れる予定だ。

 ハインを合わせて七名で菊屋に入ることになった。他の六人は絵師の支援者とその知人だそうだ。つまり金持ち達。


(この店構えは高級店だよな。そこの花魁。夕霧花魁って有名人? ええ……。ハインはいつ大豪家になったんだ。いやそんな話は聞いてないぞ。支払えるのか? まさか借金していないよな)


 ハインの話とは違って夕霧花魁目当てなのは絵師の支援者だった。彼は馴染み客だそうだ。

 無料(ただ)でこの街の大店の花魁が見られるぞとハインを誘ってくれたという。

 宴席でお金を落として新規客を増やすと夕霧花魁の機嫌が良いそうで、それでハインが誘われて俺を追加。快くどうぞと言ってくれたという。

 つまり俺は来る必要はなかった。なぜ俺を呼んだとコソッと聞いたら「おしどり夫婦でムカつくから喧嘩しろと思って」と笑われた。

 多分本音だこいつ、と俺は若干呆れた。確かに喧嘩するかもしれない。なにせ俺はメルが嫌がらなかったから不貞腐れ気味。

 メルに拗ね顔で行くなと言われたかった。俺に気持ちがあると分かるような事をされたいし言われたい。


 宴席会場に通されると馴染み客のカイド以外には二人につき一人遊女がついて用意されている席に案内された。

 俺は末席でハインの隣。案内してくれたり上着を預かってくれたのは撫子という名前の遊女。


(大花街でも小さい店だろうと思っていたのに大店疑惑。美女揃いだな。夕霧花魁も当然美女。落ち着かない。これは帰りたい)


 俺はかなり場違いなところへ来た。ハインの為の接待と思おう。あと朝日屋の商談を紛れさせたい。

 子ども二人と遊女とは服装が異なる女性一名が琴を弾いている。

 今の季節には似合わない曲の木枯らしだ。木枯らし?


(定番曲で何回も聴いたことがあるのに違う……)


 室内で窓が閉まっているから風なんて吹かないのに風が吹き抜けた気がする。

 瞬きをすると紅葉や銀杏の葉が舞い踊るような景色が見えた気がした。

 秋を感じて懐かしんでいたのに瞬きをするたびに冬の火樹銀花の眺めがまぶたの裏に浮かぶようになりそこに今度は梅園。同じ曲なのに別の曲のような感覚。これはどういうことだ。


(あっ、曲が変わった。知らない曲だけど……)


「たな()らひ」


 おお。美女の夕霧花魁を中央にして他の遊女達が美しい舞を披露。


「雪も降らぬか梅の花咲かぬが(しろ)にそへてだに見む」


 夕霧花魁が綺麗な声で龍歌を歌ったのでこれは観劇みたいだと思った。

 読んだり聞いた事のない龍歌だから創作かもしれない。

 一面に霧が立ち、雪でも降ってくれないだろうか。梅の花が咲かない代わりにそれを梅の花と見たてます。

 夕霧花魁だから霧は自分のことだ。雪もそうかもしれない。今年は寒くて梅の咲きが遅い。私がまだ満開にならない梅の花です。そんなところだろうか。


(そうか。大店とか花魁になるとこういう世界なのか。メルさんと見たかったな)


 無料(ただ)で高級遊女と話せるなんて二度とないだろう。考えたら色話を気軽に女性と出来る好機なのでご無沙汰相談をするかと普通に会話しようと思ったけどハインが撫子に夢中。

 なので俺は相槌係。途中でそれとなくハインのご無沙汰話を振って撫子に意見を聞いて自分に使えそうなら使おう。

 撫子は香の匂い、見えている触り心地の良さそうな白い肌、艶っぽい笑顔と実に誘惑的。

 

(でも俺は素朴めな派手ではないメルさんが好みだな。改めて思う。美人過ぎるのは怖い)


 客商売なので撫子はニコニコ笑いながらハインと話していて会話は面白いし、酒もつまみも美味いし、追加で運ばれてきた天ぷらも良し。


(米はそんなにだな。それで味噌汁はイマイチ。我が家の味噌はやはり美味いよな。まあ、規模を大きくして量産して売り込むより堅実にいきたい)


「シエルさん聞いていました?」

「ソイス様は上の空ですね」


 自己紹介で苗字を口にしたのでハインが俺の名前を呼んでも撫子は俺をきちんと苗字呼び。会ったばかりの他人にシエル様とかシエルさんと呼ばれたくない。


「ええ。そちらの友人が気を利かせて連れてきてくれたけど自分には場違いなところで……。天泣土潤(てんきゅうどじゅん)満華幸(まんげこう)……」


 これは思い出もあるしとても気に入っている旋律の曲でメルは簡単な楽譜でないと弾けない。

 正楽譜は難曲で義姉ミレイも無理。二人の通う教室の師匠が演奏会で披露して俺は感激した。

 今は三人で連奏だからかミレイが弾いてくれるの楽譜と同じだと思う。充分美しい曲で三人の演奏も良い。

 演奏の中心は当然のように成人に見える女性。桔梗柄の訪問着姿で髪型も地味で髪飾りもこの位置からは見えないという質素さ。

 白めに肌を塗って右目に紅の花の模様を描いている化粧でなければ遊女とは思わない格好だ。


(遊女? 着物も着方も帯結びも違うけど……。でもここは遊楼(ゆうろう)だ。子どもは遊楽女(ゆうらくじょ)だろう)


 まだ色春売りで働かないで下働きやこうして演奏などをしたり芸事教養などの勉強をして高級遊女になる予定の子どもを実際に見て、貧しくて売られたならここまでなら悪くない人生だよなと思った。遊女側になると落差が激しいし性格によるだろう。


「おお。遊霞(ゆうがすみ)。聴きたいと言ったのを覚えてくれていたのか」

「ええカイド様。それでふぅ子とみぃ子がうんと練習しました」


 答えたのは夕霧花魁だった。遊霞(ゆうがすみ)と呼ばれた遊女は軽く会釈をして微笑んでいる。それで目線は下だ。

 右目周りの化粧が派手だけど左目の感じや目鼻立ちからして多分素顔は地味顔。

 特別美人ではないけど癒し系という印象なので似た系統のメルに会いたくなった。

 目の光がなんだか他の遊女と異なる。落ち着く感じの遊女もいるんだな。


「そうだった。夕霧の大事な楽達にお土産を持ってきた」

「お土産ですか? まあ、ありがとうございます」


 手招きされた遊楽女(ゆうらくじょ)二人がカイドと夕霧花魁の方へ移動してお礼を告げた。

 遊霞(ゆうがすみ)が再び演奏を開始。全身にゾワっと鳥肌が立った。

 先程まで弾いていたのは満華幸(まんげこう)部分で今は天泣(てんきゅう)部分。これはおそらく正楽譜。以前聴いた旋律と同じように感じる。


(それでこの演奏の方が凄いというかなんだこれ。ずっと鳥肌……)


「一区花街の大店になると遊女の琴はこんなにも素晴らしいのですね。落ち着かないと思っていたけど得しました。妻にも聴かせたいです」

「ソイス様。彼女は……」

「ん? あれはなんですか?」


 今撫子が何か言いかけたな。まあ良いや。この素晴らしい演奏を聴きながら飲む酒は美味い。これは美味すぎる。来て良かった。

 きゃあきゃあ楽しそうな声が聞こえてきたので何かと思ったら遊楽女(ゆうらくじょ)が見たいと言っていたハムスターという小動物をお披露目中。

 

「欲しいなら置いていくし、見るだけで満足なら持ち帰って姪っ子に贈る」

「夕霧姉さん、可愛いです。飼えますか?」

「姉さん、飼えるなら飼いたいです。可愛いです。ああ、愛くるしいでした」

「あらあらみぃ子、言い直さないで次の時に使いなさい。カイド様、飼い方は難しいですか?」

「大喜びで嬉しいな。難しくなさそうだ。説明書がある」

「読ませていただきます」

 

 ふぅ子とみぃ子が嬉しそうに四角いカゴに入っているハムスターを俺達客と接客する遊女に見せて回る。

 俺にも見せてくれた。十歳前後ともう少し幼そうな子ども二人が楽しそうだから微笑ましい。

 ハムスターはたまごより少し大きいくらいの薄灰色のネズミ。背中に一筋濃い灰色で尻尾が丸い。これは確かに可愛い。


(メルさんも好きそう。絵に描いて見せてあげよう。この珍しいネズミはどこで売っているんだろう。高いんだろうな)


遊霞(ゆうがすみ)姉さん。噂のハムスターです」

「かわ……。愛くるしいですよ」


 ふぅ子とみぃ子は俺達のところから遊霞(ゆうがすみ)の方へ移動した。演奏が止まってしまったので俺としては残念。


「まあ、こちらがハムスターさんですか。愛くるしいです。ネズミさんなのに尻尾が丸くて毛並みがふわふわしています」


 ……。

 とても心地良い声だな。この場にいる女性達と話し方が異なる。とてもおっとりしているけど遅い訳でもない。ああ、義姉ミレイに似ている。


遊霞(ゆうがすみ)、こう手ですくうように持つみたいだから二人の見本で持ってみせて」

「分かりました夕霧さん」

遊霞(ゆうがすみ)姉さん、お手本をお願いします」

「ええ。このようにでしょうか」


 遊霞(ゆうがすみ)は畳に置かれたカゴに両手を入れて少ししてからその手を持ち上げた。


(動きがとても上品だな。やはりミレイさんのようだ。嫁ぐ前の今よりもちゃきちゃきしていなかったミレイさんに雰囲気が似てる)


 シオンは我が家の格からは無理めな格上の家から華族のお嬢様嫁を情熱と運で獲得したけど彼女一人だけそのミレイに似ているのはなぜなのか。


「あら、まあ、動き回ります。おち、落ちてしまいます。落ちますよ。落ちないでください。危ないです」


 遊霞(ゆうがすみ)はオロオロしながら手を動かして逃げようとするハムスターが落下しないようにしている。


(なんか動きが可愛いな。声が心地良いのもあるけど)


 低い位置でハムスターが彼女の手から落下。ハムスターは彼女の太腿の上に落下した。


「猫のようにお顔を洗っていますね」

「か、愛くるしいです」

「そうですね」


 遊楼(ゆうろう)ではなくて実家みたいな空気になった。メルと義姉ミレイと姪っ子達が遊ぶような感じの微笑ましい光景で和む。畳に着地したハムスターが走り出した。


「お待ちになって!」


 品良く立ち上がった遊霞(ゆうがすみ)は小さく叫ぶとハムスターを追い始めた。


(これもなんか可愛いな)


「ハムスターさんが逃げました!」

「足が速いです」

「ハムスターさん。怖くないので戻ってきて下さい」


(子どもも増えたからなお良し。うん。これは微笑ましい)


 遊霞ゆうがすみとみぃ子とふぅ子が部屋の隅へ行くとハムスターはまた走り出した。


「お待ちになって。ハムスターさん」

遊霞ゆうがすみ姉さん。はさみうちします」

「私は遊霞ゆうがすみ姉さんと一緒にこちら側からです」


 接客してくれている遊女の指が俺の顔を動かした。メルではないから触られたくないのもあるし面白い可愛いところなのに邪魔だな、とその手をペシっと払う。


「ソイス様。遊霞ゆうがすみに熱視線を投げても無駄です」


 無駄ですって特に何もする気がないから別に。近寄らないで欲しいので撫子を軽く押して距離を保ってもらった。

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