第2回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞 への投稿作品
偽物作家
作画に息詰まると、名だたる作品の模写をしていた。
どうにか、絵を売って生活できるようになっていた。
ある日、いつもの画商が買い付けにやって来た。
ナゼだか、いつもより高額で買い取っていった。
高額に文句をつけることもなかったが、だんだん高額になっていったことが気になってきた。
画商は、人気が出てきたからだと言う。
そんなに自分の作品が人気なのか?
ふらっと、久々に画商の構える店に赴いて、びっくり!
自分の作品は、1枚も飾られていなかったが、見覚えのある絵が、たくさん飾られていた。
なんと、息抜きの為の模写が並んでいたのだ。
慌てて画商を問い詰めた。
客は偽物と知っていて、よくできたうりふたつの偽物を本物よりはるかに安価なので、機嫌よく買っている。と。
模写したつもりが、偽物作家と評されて、腑に落ちないが、偽物として売られているなら、文句も無いだろう。
次の模写した際に、小さく、こっそり、自分のサインを記入することにしたのだった。