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覚悟

ちょっとかなり間が空いてしまいました。設定の矛盾があったらごめんなさい

 翌日、俺たちは街を歩き回った。娼館の場所は宮殿からそれほど離れていない。これは、問題があれば兵隊がすぐに駆けつけるためなんだろうな。船乗り……まあ殆ど海賊な訳だが、そいつらの利用する比較的安い店は港の近くに集中しているのに、ここだけはだもんな。

 問題は街の中心部にあるので港までの距離が結構あることだった。娼館から港までは一本道でいけるんだが、道の所々に衛兵の詰め所があるので、先回りされる危険性があった。

 俺たちは港を封鎖されたらそれでおしまいなので、迅速に港へ向かう必要があった。なので裏道を通って港まで行こうとすると、迷路のような細い道は俺たちの行く手をこの上なく上手に遮るのだ。

 一旦バーリの街を抜け出して、適当な場所で船に拾ってもらうことも考えたが、腐っても城塞都市だ。港を封鎖するよりも簡単に閉めることができる城門を開けっ放しにはしてくれないだろう。

 比較的ザルでごちゃごちゃしている海賊の港だからこその活路なのだ。俺たちは海から逃げるしかないのだ。

 しかもバジーリオ達のために適度に時間を稼ぐ必要もある。まったく難しい話だ。

「所でハヤト、金の方はどうなんだ?」

 ラディは質問してきた。

「……無理だった」

「そうか……」

 俺はバジーリオに事のあらましを話した。しかしそれはできないと言われた。まあ、依頼料として払った金を女を買う経費として返せなんて、無茶苦茶な話なのだ。

 しかしバジーリオはあるものを渡してくれた。

「こいつは、バジーリオの紹介状だ」

「そうか! あいつは腐ってもこの国の重臣。保証人としてはうってつけってわけか!」

「所詮は捨てる国の地位だ。活用するだけ活用するってさ!」

 これで娼館には入れる。あとは細かな段取りだ。

 そう細かな……

「うがああああ!」

「ど、どうしたハヤト!?」

「いっくら考えてもできる気がしねー! 燃やそう!! 全部燃えるがいいや! もう街全体を燃やす勢いでやらなきゃ無理だ!」

「ハヤト……」

 ラディは呆れていた。

「娼館ひとつ丸焦げにすると言ってた

くせに、今更だろうが!」

「加減しろバカ!」

「我々が焼け死んでは元も子もない」

 ロボスが言った。

「むう……むう!!!!!」

「ここまで来た以上は我々はあとに引けない。バーリのお家騒動にも関わってしまったしな」

「……今逃げたらマルガリータたちを敵に回すってことか」

 そんなに深く関わるつもりはなかったんだがなぁ。あのぺちゃパイ女、何が奇貨だ! ただ俺たちのために命をかけて助けてくれるだけでいいのに……

 覚悟を決めるしかないのか。

「ふぅ……、フレック、娼館の厨房に入って火をつけろ」

 館を全焼させるには一箇所だけでは足りない。

「……タイミングは?」

 フレックも顔が強張る。もう、おふざけもおしまいなのだ。

「ラディ、お前が騒ぎを起こせ。窓から飛び出して心中するフリでもすりゃ慌ただしくなるだろ。人目も引けるしな。そしたら衛兵に扮した俺とアルフレドがラディをとっ捕まえる。フレックはボヤ騒ぎになるまで娼館のなかでかくれんぼだ!」

「おいらめっちゃ危険じゃんかよぉ……」

「イリア一のこそドロの力を見せてみろよ!」

「見られちゃだめだろ……」

 ラディが茶化すと、笑いに包まれた。

 皆、怖いんだ。

 俺がもっとリーダーの素質があったのなら、そんな恐怖も忘れさせてやれたのに。

「すまないが、明日死ぬかもしれない。」

 こんな俺だが、いつになく神妙な顔をするので皆も顔が引き締まった。

 俺は息を呑んで、話を続けた。

「だが、もしもこの討ち入りが上手く行ったら、俺たちはドーファン海賊団という大きな力を手に入れられる。非常に扱いづらい奴らだが、内陸の領土にこのコネクションは結構大きいと……思う」

「ああ。海から得られるのは利益だけじゃない。情報、技術、いろんなものが手に入る。金はかかるがな」

 ラディは補足するように言った。

「レティエを盗る時にだって、大きな力になるはずだ」

 ロホスも追従するように言った。

「ハヤトの癖に、結構考えてるんだな!」

 フレックの奴はこんな時までお調子者だが、それがこいつの良いところでもある。

「俺はいつもいきあたりばったりだ。目先のことしか頭にない……だからこんなことになってるのさ」

「だが、だからこそ救われる人間も居るのさ。ここに居る連中はそんなのばっかだ」

 皆が俺に目を向ける。俺はそれが怖くてたまらなかった。だけど、受け入れるしかない。それが俺の選択だからだ。

「すまないが、みんなの命を使う」

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