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デウスエクスマギカの先に


 世界を満たす全なる光が解かれていく。

 同時に悠登はある女神の名を唱えた。


調和の女神(アシュティーナ)の名において世界を隔てよ――絶対秩序の白き聖域ハーモニアス・サンクチュアリ!」


 範囲を自分たちの周囲に絞り、形成速度と強度を増した結界。それはまだ光が散る最中でありながら、境界を犯した者を追い払い水飛沫を上げる。


 次第に溶け消えていく光の先へ、エルフェレトが白き炎を撃つ。しかしてそれは、見慣れぬ漆黒に阻まれた。


 再びエーテルの園に戻ってきた悠登たちを出迎えた者は、


「あはは。どうモッ、こンバんハぁ~ぁっあははははっ!」


 病的なまでに白い手足を出し、真っ白な髪を逆立てる、一人の少年。歳は悠登と同じか少し下か。やせ細ってはいるが、特に襤褸を纏っているわけではなく、普通の病弱そうな少年である。


 ただ、彼の全身からおぞましい気配が感じられなければ、だが。


「まだ何か用でもあんのかよ。悪いが母親は返してもらった」


 絶対的な結界のなかでも警戒は怠らない、怠れない。


 睨みつける悠登に対し、少年は両の手をひらひらとさせ瘴気を抑えていく。


「くはっ、そウデすネぇ、コマりまシタぁ~。ツガイでコロしアわせたらぁ、ココはオサえられるとオモったんでスガねェ、ははっ!」


「てめぇ……!」


「わぁ~コワ~ィ、はははっ、はぁ~あ、アナタのせいでケイカクがパーでスぅ。ヤッぱりシんでくだサイよォ、あーはは!」


「そんなんで死ぬ奴なんかいないっつの」


 少年はへらへらと笑う。その漆黒の瞳からは一切の感情がみられず、果たして本心のほどはいかがだろうか。


「マぁ、いイデす。いりすがナニをハカろうト、レビヤタンのフッカツはとめラレない」


 口の両端を吊り上げ、少年は今までで一番おぞましい笑みを浮かべた。


 放たれた言葉に、女神と神獣が身を震わせる。


「なっ! 今、レビヤタンと仰いましたか!?」


「アシュティーナ、それは一体なんだ?」


 ついていけないのは悠登だけ。その問いに答えたのは、アシュティーナではなく、


()()のナですよぉ? く、くくく、くはははっ! ボクたちハもう、ニンゲンをシハイしたンですヨぉ。だからカミのモトに。あは、あははっあははははは!」


「何がおかしい。何言ってんのかわかんねぇんだよ!」


 悠登は少年の甲高い嘲笑をかき消すように、大きく手を振り払う。全く読めない少年の動向を少しでも掴もうと注視した瞳に、どこまでも真っ黒な瞳が向いた。


「ふふ、神の秤に掛けられた勇者。君は人と神、どちらを救いどちらを滅ぼすのか。選択の時を楽しみにしています」


 そう言い残して、少年は一瞬膨れ上がった瘴気の繭に包まれ消えた。


 置き土産のような謎の発言に、悠登たちは一様に顔をしかめたまま。聖域に漂う苦い潮のような空気の中、悠登は念の為に周囲を探り少年が完全に立ち去ったことを確かめた。


「なんだったんだろうな。アシュティーナ?」


 振り返ったところでは、アシュティーナが深刻そうに考え込んでいる。


「いえ、あの者の言葉が気になって……」


「何か心当たりが?」


「邪神の復活が進んでいるなら凶兆が出るのも当然ですが、あとはさっぱりわかりません。でも、人と神、選択とは一体?」


 二人が首を捻っていると、エルフェレトが立ち上がる。そうして、彼は己が妻の許へ赴き、隣に腰を下ろしてその大きな頭を埋めるように、優しく押し付けた。


 悠登とアシュティーナは、彼らの様子にどうしようもなく微笑む。眠る子供を起こさぬように両親の所へ届け、二人も神獣親子に寄り添う。


「わかんねぇことばっかだけど、今は……」


「えぇ。ユウト、私の願いを聞き届けてくれて、本当にありがとう」


 彼女は悠登の腕を取り、寄りかかって肩に頭をのせてきた。


「どういたしまして。……でも、疲れた」


 ドッと疲労が押し寄せてくる。身体がどうにも重く、気が抜けたのか瞼も鉛が入ったかのよう。


 堪らず溢した悠登の横からかかる体温が遠のく。そして、所々半透明の白い腕が悠登の頭をゆっくりと引いた。


「もう大丈夫です。さ、どうぞ」


 彼女の膝の上に誘われ、柔らかく髪を梳かれるとすぐさま睡魔に襲われる。チラと目線を上向けると、微笑む女神と、その背後から神獣の心強い瞳が目に入った。



 そうして、いつの間にか訪れた宵の口、


 天に瞬く星の光を擁する安寧の闇と、まるでそこに向かわんとする霊脈の黄金の昂輝が立ち昇るなかで、


 一人の少年が眠りにつく。


 神精霊に愛されるがために選ばれた少年は、神がこの世界を救うために求めた、



 ――神仕掛けの魔術師。



 闇たちはまだ知らない。


 人の子を選んだ神が、人を見限ってはいないことに。



 悠登が全ての神の名を得たとき、真の永遠なる聖五文字(ペンタグラマトン)は召喚される。



ここまでお読みいただきありがとうございます。

まだ第一章的な感じですが、ここで完結とさせていただきます。


勢いで投稿を始めてしまい、先の収集が付かなくなってしまいました。

純粋に私の力不足です。すみません。。


魔法魔術のお話しはずっと書きたいと思っていたので、悠登のお話しも設定から見直しているところです。性格も変わって泣き虫ではなくなりましたが。


最後のわがままで、今現在出来ているプロローグ部分を載せています。

本投稿になるかわかりませんが、また魔法好きファンタジー好きな皆さまのお目にかかれるよう精進して参ります。


ありがとうございました。

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