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ゴブリノイドの誓約書

私の名前はテリウス・アッガッサー。


 「ゴブリンもの」というジャンルで有名な小説家である。


 特に、ゴブリンに一般民衆が襲われる描写に定評がある。


 賞だっていくつか貰っている。筆一つで生活できている。


 私は、まごうことなき専業作家であった。



 ある休日の夜、町はずれの私の家に来客が一人訪れた。


 こんな時間に誰だろうと思い、扉を開けてみるとそこには三人のゴブリンがいた。


 そういえば聞いたことがある。


 最近、ゴブリンが自らの風評被害をなくすべく法的に動いているということを。


 私は内心焦りながらも、彼らをもてなす用意をした。


 ゴブリンたちは、丁寧に丁寧を上塗りしたかのような態度で、私の家に上がった。



 彼らが本題を話し始めたのは、私が茶を半分ほど飲んだ頃であった。


「テリウスさん、私たちがあなたを訪ねてきたのは茶を飲むためではありません。直球に言うならば『ゴブリンもの』を書くのを今すぐやめてほしいからなんです」


 やはりそうか。だが、それがなかったら私の生活が成り立たなくなる。


 私は反論することにした。


「あなたたちの言い分はわかります。しかし、私はちゃんと本の最初に{これはフィクションであって実際の種族、人物、地名などには関係しません}と書いています。それで風評被害対策はできているのでは」


「いいや、できていません。『ゴブリン』という単語そのものが私たちの蔑称に当たると大魔道辞典362ページに書かれています」


 私はゴブリンをなめていたようだ。ゴブリン否ゴブリノイドは私たち人間が思っている以上に理性があったのだ。



「とにかく、この誓約書にハンコを押して下さい」


 そういわれて出された書類は、私にもうゴブリンものを書かせないようにするための誓約書であった。


「もしこれにサインをしなければ『ゴブリノイド権侵害』で訴えますよ」


 万事休すか。だが、私も最後の反撃に出る。


「あなたたちは私の生活を考えていないようですね。これにハンコを押したらお先真っ暗になってしまうのですよ」


「ゴブリノイド権侵害で食った飯はうまかったか」


 言い返せなかった。



 結局、俺は食い扶持を失う書類にハンコをした。


 これから起こる不幸はすべてゴブリノイド権侵害の罰として受け入れよう。


 そして、帰り際にあるゴブリノイドがこう言った。


「今度は、俺たちの代わりに架空の生物を使ったらどうだね」


 その一言で、俺は救われた。



 その後、俺は「ケンタウロスもの」という新ジャンルを切り開くことに成功した。


 ケンタウロスなら実在しないしいいだろう。


 そう思っていた。



 だがある日、ケンタウロスが実在することが明らかになった。


 しかも、相当に知能が高かった。



 そして、誓約書を持ったケンタウロス否ケンタウロイド数名が俺の家を訪れた。

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