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80/116

80話・馬鹿にするのもほどほどにして頂けませんか?

 どのぐらい寝ていたのだろうか? ベッドの急な傾きと、バサバサという羽音で目が覚めた。部屋の中は薄暗かった。いつの間にか夜になっていたらしい。


「うわあっ」

「な、なに?」


 突如上がった男性の悲鳴のようなもの。上半身を起こすと、寝台脇で誰かが鳥に襲われていた。


「ネグロ?」


 ネグロはまだ帰らずに部屋に残っていたらしい。そのネグロが大きく羽を広げて威嚇し、嘴で突いている相手を見て目を見張った。


「アントンさま? ネグロ。止めて」


 なぜ私の寝室に? と、思うよりも、ネグロの取った行動でアントンに被害が及ぶと、のちに面倒だという思いが働いた。ネグロは私の声に従う。


「これは何だ?」


 ネグロからの攻撃が止んで、やれやれと立ち上がったアントンはぼろぼろだった。ネグロは私の足元に来て「ガアガア」鳴いて威嚇を続ける。それを見てアントンは顔を顰めた。


「私の優秀な護衛ですわ。貴方さまはどうしてここに?」

「いや。なに。きみが一人寝が寂しかろうと思ってね」


 その言葉にもしかしてと疑いを持つ。あのシチューを食べた後、急に眠くなったのだから。


「あのシチューには眠り薬でも盛ってらした? 最低ですわ」

「こうでもしないと、きみに触れる事は出来ないだろうと思ってね」


 アントンは認めた。悪びれもしない態度に苛立つ。


「ミールに命じたの?」

「ミールって? ああ、さっきシチューを運ばせた侍女か。いや、薬を入れたのは私だ。彼女がシチューを温め直すと言うから、すでに用意してあった物を温めて渡した」


 用意周到なことだ。普通なら屋敷の主が客人の為に一々、料理を温め直すなんてしない。ミールは、アントンがアンナの前でも私を構っていたのを目撃しているし、私から二人の関係を聞かされて知っている。

 恐らくアントンの行動は、別れた妻への罪滅ぼしもあるのだろうと思ったはずで、主人から手渡されて不審にも思わず、私のもとへ運んできたのだろう。

 道理で彼女の戻りが早かった訳だ。


「きみは私を好きだったはずだろう? それなのに再会してから避けているようだったから」


 私はアントンの子供じみた言い訳に頭が痛くなってきた。こんなに愚かな人だっただろうか? 眠り薬まで使って私を襲おうとしただなんて。


「お目出度いお方ですわね。妻や子を捨てて、他の女と手に手をとって駆け落ちした男のどこを好きになれと? あの時に私の貴方さまへの思いは綺麗さっぱり消え去りました」

「済まなかった。それには訳があったのだ。けしてきみを蔑ろにした訳じゃない。アンナとは何でもないんだ」

「アントンさまは、私が何も知らないとでも? 馬鹿にするのもほどほどにして頂けませんか? それではアンナもいい気がしないと思いますわ」

「ユリカ」

「もう私は貴方さまのことは何とも思っていません。お二人がこの国で一緒になろうが関心はありませんわ」


 私はアントンと復縁する気はない。彼がアンナと結婚するならそれで構わないと思っていた。でも、ノアだけは渡す気はないけど。


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[一言] ネグロさんファインプレー♪
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