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8話・カラスは友達

「フィーはどうなの? 結婚したの?」

「俺? 結婚はしてない。周りには急かされているけどな」


 フィーが結婚してないと聞き、良かったと思う自分がいた。自分は既婚者だと言うのに、勝手なものだ。彼が誰かのものになっているなんて知ったなら許せないような気がした。

 フィーは子供の頃から綺麗な顔立ちをしていた。その上、活発で女の子達の目を惹いた。でも彼は全然相手にしてなくてなぜか私の隣にばかりいた。あの頃から彼は、自分の中で特別な存在になっていたようだ。


「しかし、あのお転婆ユーリが、お堅い近衛総隊長さまと結婚してお母さんになるだなんて驚いた」

「らしくないって、言いたいの?」

「いや。残念だと言うかさ……」


 フィーは私に分からないことを呟いた後で、私達の顔を交互に見ていたノアに言った。


「ノアは爺さんに会って行かないのか? 将軍はノアに会いたがっていたぞ」

「おじいさまに? あいにいっていいの?」


 フィーはこの森を抜けたら将軍の屋敷なのに、何故会いに行かないのかと聞いてきた。フィーは近くまで来たのだから、ちょっと祖父に顔見せに行けばいいのに。と、いうつもりで言ったのだろう。

 それに対し、ノアは逆に聞き返していた。ノアの反応を見て、フィーが困ったように私の顔を見てくる。ノアはそれにつられたように私を見て「いい?」と、聞いてきた。


「そうね、フィーのいう事ももっともな事だわ。この後、お爺さまに会いに行きましょうか? でも、急に立ち寄ったりしたら驚かせるかも知れないから、護衛の誰かに知らせに向かわせるわ」

「それなら俺が知らせるよ」

「どうやって?」


 フィーはバルコニーに立ち、ピュッと口笛を吹いた。するとすぐにバサバサと羽音がしてフィーの肩に真っ黒な鳥が止まった。それを見て私も驚いたけど、ノアは目を丸くしていた。


「ネグロ。これを親父の屋敷まで届けてくれ」


 そう言って烏の足に黄色のリボンを結びつけると、烏は飛び去る。ノアは「すごい。すごい」と言ってカラスの去った方を見つめていた。


「あれってカラスよね?」

「カラスは見た目から嫌われやすいけど、結構、賢いんだ」


 すぐにカラスは戻って来た。嘴に筒状の花をつけた植物を加えて。花は赤くて先端だけ反り返っていて黄色に染まっている。


「まあ、マネッティアの花ね。懐かしい」

「将軍の屋敷に生えている。将軍はノアの来訪を歓迎するそうだよ」


 見覚えのある花を見て顔を綻ばせると、フィーが教えてくれた。彼はそれをカラスから受け取るとノアに渡した。カラスは用がなくなるとまたすぐにどこかへと飛び去った。ノアは感心していた。


「さすがおじさん、すごいね。おじさん、まほうでもつかえるの? どうやってカラスにいうことをきかせたの?」

「魔法は使えないな。ただ、カラスとは友達になっただけだよ」


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