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71話・好きな人と一緒にいては駄目なの?

「えっ? そうなの? 知らなかったわ」

「おかあさまにはないしょにしてもらっていたんだよ。おどろかそうとおもって」

「もう、ビックリしたわ」

「ふふふっ。だいせいこうだね」


 ノアは機嫌よく言いながら、ここに来るまでのことを沢山、話してくれた。ノアに別れを告げた日はノアに大泣きされるかと思ったのに、彼は大人しく黙って私の言い分を聞いていた。

 非難されるでもなく、どこか大人びたような何か悟ったような様子で、「それでおかあさまがいいなら、ぼくはそれでいいよ」と、どこか突き放したような態度にも思えたから、これでノアには呆れられて嫌われたのだと思っていた。


「ぼくね、あれからたくさん、まいにちおべんきょうしたよ。けんじゅつもフィーおじさんにおしえてもらってがんばっているんだ」

「さすがノアね。お母……」


 つい、うっかり「お母さま自慢の子ね」と、言い掛けて口を噤む。いけない。いつの間にか口癖になっていたらしい。そこにノアが言ってきた。


「ぼくのおかあさまは、どこにいてもおかあさまだけだよ。ぼくはおかあさまのこだよ」

「ノア……!」


 思わず許して。と、言い掛けて、それは自分勝手な言い分だと飲み込んだ。ノアを愛している。たとえ血の繫がりがなくとも、自分には我が子のようにしか思えなかった。慕ってくれていたノアの手を、突き放したのは自分だ。

 責められてもいい立場の私を、ノアは切り捨ててなかったらしい。


「ぼくにはおかあさまたちのじじょうはよくわからない。でも、すきなひとと、いっしょにいてはだめなの?」


 ノアは私の躊躇いを見透かしたように言う。


「ぼくね。おもっていたんだ。かみさまにも、まいばんおねがいしていたよ。おかあさまとおじさんが、いつまでもぼくといっしょにいてくれますようにって。サンタさんにもじつはこっそりおねがいしてた。だからばちがあたったの?」

「ノアは良い子だから罰なんて当たらないわ」

「でもぼくにはまだおとうさまがいるのに、フィーおじさんが、おとうさまになったらいいなっておもったの。おとうさまよりもおじさんのことがすきだから。だからばちがあたったんだよね? くろいサンタクロースが、おかあさまをとおくにやっちゃった」


 ノアは泣きそうになりながら言った。今回、私が離婚して屋敷を出て行ったのは、自分が悪いことを願ったせいではないかと思ったと。


「おかあさまがやしきをでるひに、いかないでっていいたかったの。ぼくもつれていってって、いいたかった。でも、ばつならたえなくちゃいけないとおもっ……」

「ノアっ」


 お別れの日。私と別れたくなかったというノアを見ていたら抱きしめたくなった。ぎゅっと抱きしめると鼻声になりながら、「くるしいよ。おかあさま」と、返事が返ってくる。


「ノア。ごめんね。私が悪いの。あなたは何も悪くないのよ」

「ぼく……、おかあさま……にあいたかっ……た」

「私もよ。ノア」

「おかあさま……!」


 ふたりで両親達が呼びに来るまで、おいおいと泣いてしまった。



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