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7話・あなたは全然変わっていない

 他国と戦いが起これば、お義父さまが真っ先に兵を率いて戦いに出る。過酷な戦いを勝ち抜いてきたお義父さまは、衛兵は出身や、身分関係なく実力主義で雇い入れてきたという話だから、その部隊に所属しているというフィーは、かなりの実力者といってもいいかもしれなかった。


「おかあさま。おじさんしっているの?」

「ええ。私の小さい頃の遊び友達だったの」

「へぇ。じゃあ、このなかにはいってもいい?」

「いいわよ。お行儀よくね。こちらのおじさまは、あなたのお爺様のお知りあいでもあるから失礼のないようにね」

「うん。わかってる」



 ノアがツリーハウスの階段を登っていく。ノアの背を見送って下で待っている気でいたのだけど、ツリーハウスの手すりからフィーが手招く。


「ユーリも入ってきなよ。よくきたな。ノア」


 フィーの側までやってきたノアの頭を、フィーが撫でる。ノアはくすぐったそうにしながらも嬉しそうにしていた。二人は初対面であるはずなのに、はたからみると、親しそうな間柄に見えた。


「おかあさまもおいでよ。ながめがいいよ」

「本当?」


 幼馴染のフィーに出会って、私の好奇心が刺激されたようだ。ドレスの裾を持ち上げながら階段を登り始めると、上段で待っていたフィーに腕を引かれた。フィーは私の顔をじっと見つめる。


「なに? 何かついていた?」

「綺麗になったなぁと思ってさ。ユーリは子供の頃から可愛かったけど、美人になったよな」


 フィーの言葉を反芻して恥かしくなる。


「フィーは口が上手くなったわね。フィーこそこんなに素敵な男性になってるなんて思わなかったから驚いたわ」

「俺は、お世辞は言わないよ」

「わあっ。みずうみがみえる」


 ツリーハウスの部屋の中から興奮ぎみの声がした。ノアが窓辺の椅子に腰掛け外の景色を眺めていた。ツリーハウスの中にはベッドがあり、テーブルや、椅子まであった。奥にはキッチンらしきものも見える。


「これ全部、あなたが作ったの?」

「ああ」

「おじさん、すごいね。またきてもいい?」

「おかあさまが許可を出してくれたらな。ただ、俺も昼間は仕事でここに帰ってくるのは遅くなるから、前もって連絡くれるとありがたいな」

「ほんと? いい? おかあさま」


 ノアはすっかりこのツリーハウスが気に入ったようで、また来る気になっていた。


「仕方ないわね。でもノア。お勉強もしっかりやらないと駄目よ」

「うん」

「お茶を入れるよ。座って」

「ありがとう」


 フィーが慣れた手つきでお茶を入れる。ノアに入れてくれたのはホットミルクで、私にはミルクいっぱいのミルクティーだった。それと一緒に木の編み籠に入った干した果実を切った物や、ナッツが出された。


「どうぞ」

「わーい。ありがとう。おじさん」


 ノアは「おいしい」と、言いながらナッツや、干し果実を口にする。


「フィー。あなたは全然変わってないわね」

「俺ってそんなに成長してないか?」

「そういう意味じゃなくて、ぶれてないってこと」

「そっか」


 笑うと整った顔がくしゃりと綻ぶ。幼馴染との再会で私の強張っていた心がほぐれていくような気がした。


「フィーとは何年ぶりかしら?」

「そうだな。九年ぶりくらいか? ユーリは三年前にノアの父親と結婚したんだよな」

「どうしてそれを? お義父さまにでも聞いたの?」

「まあな」


 私達が再会で盛り上がっている脇で、大人しくノアはホットミルクを飲んでいた。フィーは私のことに詳しかった。これが他の人なら警戒しただろうけど、彼が義父の部下であることからすっかり私は気を許していた。


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