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6話・ツリーハウスの住人

「どうしたの?」

「あそこになにかある」

「あそこ?」


 ノアが指差した方向には、末広がりに枝を茂らせた大木の上に、三角形の屋根をしたログハウスのようなものがちょこんと乗せられていた。遠目にみると可愛い積み木の家にしか見えない。その建物の前にはバルコニーがあって、そこから地上へ降りる為の階段が渡してあった。思い出のツリーハウスが頭の中をよぎった。


「なんだろう? 行ってみようよ」

「ノア。ちょっと待って」


 ノアが腕を引っぱって走り出す。ここはガーラント家所有の森。一般の者は立ち入り禁止にしているはずなのに、どうしてここにツリーハウスが? まさか侵入者?


 護衛を呼ぶかどうかで悩んでいるうちに、ノアに腕を引かれてツリーハウスの前まで来てしまっていた。


「待って。ノア。危ないわ」

「大丈夫だよ。おかあさま。あっ、あそこに人がいる。こんにちはっ」


 ノアは、ツリーハウスから出てきた男性を見つけて手を振った。一瞬、上背から夫のアントンかと思ったが、別人だった。


「よっ。誰かと思えば……」

「おじさん? このいえっておじさんがつくったの?」

「そうさ。三日で作った」

「へぇ。すごい。おじさんのいえのなか、みせてもらってもいい?」

「構わないよ。ただ、お母さんの許可をもらったほうがよくないか?」


 ノアは見ず知らずの男性に笑顔で話しかけていた。ふだんから警戒心が強いノアにしては珍しい態度だ。と、思いながら相手の男を見ると、長身で端整な顔立ちをしていた。その男と目があった。


「ユーリ? 久しぶり」

「えっ? あなた……?」


 男はマリーゴールド色の髪にこげ茶色の瞳をしていた。彼の声には聞き覚えは無いが、初めて会った気はしなかった。どこかで会ったような? と思うと同時に、彼から向けられた笑顔に、思い出の中の少年の面影が重なった。


「あなたフィーなの?」

「やっぱりユーリか」

「どうしてここに?」

「ここには将軍の許可をもらって住んでいるよ。ユーリ、元気にしていたか?」


 思い出の中の少年は凛々しい若者になっていた。屈託のない笑みを向けられて時間が巻き戻ったような感じがした。フィーはこのガーラント伯爵家所有の森に、将軍の許可をもらって住んでいると言った。将軍といえば義父のことだ。私は義父と彼の関係が気になった。


「元気よ。フィー、あなたガーラント将軍とは知り合いなの?」

「知り合いっていうか、一応、部下」

「まあ、凄いのねぇ」


 私は感心した。アントンが宮殿内の近衛隊を統率しているのに対して、お義父さまは衛兵の擁立に力を入れている。近衛部隊は見目の良さも考慮にいれて貴族子息から成り立つのもあり、武勇に優れたお義父さまから見れば「近衛とは甘ちゃん集団」らしいのだ。


 義父は衛兵部隊は実力主義で、つわもの揃いと言っていたから、将軍の部下といえば衛兵部隊に所属していることになる。



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