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39話・アンナはいつからいた?

「俺はただ……」

「分かっている。アンナがどういった経緯でうちの実家で雇われることになったのか知りたいだけよね?」

「その通りだよ。ユーリには何もかもお見通しだな。アンナはどういう女だった?」

「アンナはあんなことがなかったらとても優秀な侍女だったわ」

「いつからユーリの家にいたんだ? 俺は彼女のことは見覚えがないが」

「彼女はフィーがいなくなってしばらくしてから雇う事になったのよ」


 フィーが首を傾げる。実はフィーは子供の頃、ちょくちょく我が家へ遊びに来ていた。その度に乳母のハンナさんが苦笑しながら迎えに来ていた。


「フィーは庭師のハンクスのことは覚えている?」

「ああ。真っ白な顎鬚が特徴のハンクス爺さん?」


 あの爺さんとアンナはどのような関連性がある? と、フィーは訝るように見てきたけど続けた。


「そうよ。そのハンクス。じゃあ、孫のカールのことは?」

「よく覚えてる。にきび面の愛想が良いやつだろう? 確か両親が亡くなっていてハンクス爺さんと二人暮らしをしていたんだったよな?」


 私達はカールとも一緒に遊んでいたのだ。カールは私達よりやや年上だったからお兄さんぶっていて、時々、フィーは嫌な顔をしていたこともあった。


「そのカールのお嫁さんがアンナだったの」

「へえ。あのカールと? 意外だ」

「そうでしょう? 私もはじめ、カールがアンナを連れてきて紹介した時には信じられない思いだったわ。だってアンナは美人だったからカールと並ぶとその……」

「見劣りがして?」

「そこまでは言ってないわ。私も外見についてはあまり他人の事は言えないから。でもちょっとだけ、ちぐはぐな印象を受けたというか……」


 上手く言えないけど、カールはふんわりとした優しい女性を選ぶと思っていたから、見た目からしてどこかのご令嬢といっても遜色なさそうな、雰囲気の女性を連れてくるとは思わなかったので、家族と共にあ然としたものだった。


 カールは嬉しそうだったからそれに水を差すようなことは、家族の誰も言わなかった。


「でもね、それから数日後に彼は帰らぬ人となって落胆するハンクスの隣で彼女、泣き崩れていたの」

「カールはどうして亡くなったんだ?」

「アンナの御両親のもとへ御挨拶に行く予定だったらしいのだけど、カールは暴走する馬車に轢かれそうになった彼女を庇って命を落としたらしくて……」

「カールらしいな」


 カールは子供の頃から面倒見が良かった。それを思い出したようにフィーが言う。


「その後、落ち込んで憔悴しているハンクスに付き添う彼女を見ていたお母さまが、我が家に雇い入れることになったのよ」

「そうか」

「もしも、あれが演技だったとしたら人を信じられなくなるわ。アンナは心の底からカールを亡くして悲しみにくれているようにしかみえなかったから」


 ハンクス爺さんの側にいた彼女は、大事な人を亡くしてお互い寄り添っているようにしか見えなかった。


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