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38話・今頃寝ているんじゃない?

 夜中に目が冴えて仕方なかった。義父達にあてられてしまったのだろうか? ここにいない人のことを考え始めたら、寝れなくなってしまった。何度か寝返りをうっても眠りにつけなくて、寝台に横たわっているのも辛くなってきた。


 ベッドから起き上がると、窓の向こう側に弓なりになった月が見えた。月に誘われるようにしてバルコニーへと出ると、中庭のベンチに誰かが座っているのが見えた。それはフィーだった。


 フィーは寝巻きにガウンを羽織った姿で月を見上げていた。彼もまた何か思い煩うようなことでもあったのだろうか? 彼と話がしてみたくなって、私もベッド脇の椅子に掛けて置いたガウンを手に取り腕を通すと外に出た。


「フィー」

「ユーリか。驚いた」


 呼びかければ、何か考えていたような彼は目を丸くして驚いてみせた。


「ユーリ。どうした? 眠れないのか?」

「まあね。飲みすぎたみたい」

「まあ、座れよ」

「うん」


 屋敷の中は皆、寝静まった頃。こうして起きているのはフィーと私だけ。夜のしじまに包まれたような中、虫の鳴き声だけが足元からしている。ここにはフィーと私の二人しかいない。今なら何でも言えそうな気がしてきた。

 


「フィー、どうして教えてくれなかったの?」

「なにを?」

「あなたがノアの叔父さんだってこと」


 幼馴染である彼が義弟だったなんて知らなかった。もっと早く知っていたなら。と、思わずにはいられなかった。


「言わなくとも、分かっているかと思ってた」

「全然、分からなかったわ。ツリーハウスで再会した時に言ってくれても良かったじゃない」

「ノアが俺の事を、叔父さんと呼んでいたし、当然知っているものかと……」

「確認しなかった私も悪かったけど、なんだか騙されたような気分よ」


 と、責めるように言えば悪かった。と、すぐに謝られた。


「フィーはここで何していたの? フィーも眠れなかったの?」

「ああ。眠れそうになくて起きてた。アントン達は今頃、何しているんだろうって思ってさ」

「寝ているんじゃない?」


 今は深夜だ。就寝しているだろうとぞんざいに言えば、フィーは何か誤解しているようだ。

「まだ怒っているのか?」と、聞いてきた。


「もう怒ってないわよ。じゃあ、聞くけど、こんなに遅い時間にふたりで何をすると言うの?」

「いや。そんな意味で言った訳じゃなんだけどさ。アンナってどんな女だったんだ?」


 なぜここでアンナの名前を? 裏切り者の名前を出されて不愉快に思うとそれが顔に現れていたらしい。フィーの苦笑が返ってきた。


「大丈夫だ。俺はあの女に特別な思いなんかないから」

「気にしてないわよ。別に。あなたが誰を気にしようがね」

「少しは気にしてくれないか?」


 フィーが子供のように拗ねてみせる。それが何だか可笑しかった。


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