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31話・蔓屋敷の住人だった!?

 ノアが遊び疲れると、ツリーハウスで休憩することにした。フィーの許可をもらってドーラと、キランも一緒に中へ入ると驚いていた。見た目同様に中もしっかり作られていて、生活空間として成り立っているのが信じられない様子だった。

 そこにフィーが人数分の紅茶を淹れて戻って来た。ノアにはミルクと砂糖たっぷりのミルクティーだ。


「フィーさま。お見事ですな。これを御一人で?」

「まあな」


 キランは元は舅のもとで働いていたとかで、フィーとも顔なじみのようだった。ドーラはあちらこちらと目線を動かしていた。


「凄いです。家が作れてしまうだなんて」

「おじさんはすごいんだよ。なんでもつくっちゃうんだ」


 感心するキランとドーラの脇で、お行儀良く椅子に腰掛けるノアは自分のことのように得意顔をしていた。フィーはノアの中で自慢のおじさんになりつつあるようだ。

 しばらく他愛もない会話を皆でしていた時だった。ノアがいきなり言い出した。


「ねぇ。おじさん。どうしてここにひとりですんでいるの?」


 キランが危うくカップの中のものを噴出そうとしたのを飲み込んだ。その反応が気になったけれど、それとは反対にドーラがノアの隣で身を乗り出してきて、そちらに目を取られた。


「その方が気楽だからかな」

「さみしくないの?」


 ノアの問いにフィーが苦笑する。私も気になるところだ。どうも彼は義父の覚え目出度い存在のようだし、わざわざ森に住まなくとも王都、もしくはその外れにでも家を持つくらいは出来るはず。


「ぼくならいやだな。さみしいよ」

「そうだな。ノアくらいのころはそう思っていた時もあったよ」

「そうなの?」

「ああ。いつも周りに沢山の大人たちがいて守られて暮らしていて、毎日が幸せで明日も同じような日が続いていくと思っていた」


 私はフィーの身の上話など初めて聞いたような気がした。子供の頃、彼とは森の中でしか会わなかったし、彼がどこから来ているのかとか、どこに住んでいるのとか一切気にしていなかった。


 でも村人にしては綺麗な顔立ちをしていたし、立ち振る舞いも洗練されていたからどこかの貴族のお坊ちゃんなんだろうなとは思っていたけど、フィーは私にとって楽しい遊び友達で仲間だったから、それ以上の情報なんて必要なかった気がする。それだけフィーを絶対の信頼で見ていたのだと思う。


 大人となった今は、見知らぬ他人が近づいてきたなら警戒してどこから来たのか? どこに住んでいるのかと、まずは詮索しそうなものなのに、子どもの頃は自然に彼のことを受け入れていた。

そう考えると、フィーが少しだけ疑わしく思えてくる。


「フィーは私と出会った頃、どこに住んでいたの?」

「あの森の近くの村の外れだよ。蔓屋敷と言って有名なところがあっただろう? レンガの建物で蔓がいっぱい生えていたお屋敷。そこに母さんと、乳母のハンナと三人で暮らしてたんだ」

「蔓屋敷? ああ、あの蔓屋敷。たしかあそこって古い建物で、雑草が生い茂っていて誰も近付かなかった?」


 フィーの告白に驚いた。確かそのお屋敷は大きかったけど蔓にびっしり覆われていた。庭も手入れがされておらず、草木はぼうぼう生え放題。時々、その屋敷に人相の悪い男が出入りしているのを目撃した子供がいて、あそこのお屋敷はきっと強盗の隠れ家に違いない。と、恐れて近付かなかった場所だ。

 あそこに人が住んでいるなんて思ってもみなかった。


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