表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/116

25話・俺の中では終わってない

 執事のテオからして、フィーと釣りにいくことを快く送り出してくれたし、屋敷の者には私達母子と、彼が一緒にいるのを容認しているような動きにも見えた。舅になにか言われているのだろうか?


 もしもこれを何も知らない頭の固い貴族連中にでも見られたなら、色々と誤解を受けそうな場面ではある。フィーから距離を置いた方がいいのかな? と、思いつつも突き放せないのは、ノアが彼を頼りにしていることもあり、また私も何かあればフィーをあてにしてしまうせいもあった。


 これではいけないよね? と、思いつつも彼に甘えてきたような気がする。それはきっと頼みとしていた夫を失って、心の均衡を保つ為にフィーを夫の代役として求めてしまったせいに違いなかった。

 この関係にそろそろ幕を引いてもいいのかもしれない。フィーは魅力的な男性だ。私達母子にいつまでも縛っておく訳にはいかないだろう。解放してあげなければ。幼馴染として彼の幸せを────。


「……ごめん。あの日のことは俺が悪かった」

「もう終わったことよ。それでどうして……」

「俺の中では終わってない」

「フィー?」


 ケジメをつけようと思い立った私の表情で、何かを悟ったのだろう。フィーは頭を下げてきた。謝って欲しい訳ではない。いなくなった理由を知りたかっただけ。

 フィーは真剣な表情をして言った。


「俺はあの日、ユーリに告白しようと思っていた。俺はずっと前からおまえの事が好きだった」

「うそ……」

「嘘じゃない」

「それならどうしていきなりいなくなったりしたの? 私、裏切られた気持ちでいっぱいになって……」


 そうだ。どうして忘れていたのだろう? 私はあの日、彼へ抱きつつあった感情を打ち消したのだ。淡く心の中に芽生えそうだった想いを。


「済まない。ユーリ。あの時の俺はある事情を抱えていて……」

「その先は聞きたくない」


 私はフィーを見返した。この先を聞いてしまえばアントンではないけれど、後悔してしまいそうで怖かった。宙ぶらりんの状況で軽々しく聞いてはならないような気がして拒んだ。


「ユーリ?」

「ごめんなさい。今は聞けないわ」

「分かった」


 フィーは諦めたようだった。それ以上、その話題に触れる事はなかった。自分から話を振っておきながら、途中で怖くなるだなんてフィーに失礼なことをしたのに、彼は私を責めることなく、屋敷まで送り届けてくれて、寝入ったノアを部屋まで運んでくれたので助かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ