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22話・まるで親子みたい

「やったわ!」

「すごい、おかあさま」

「さすがだな。ユーリには敵わない」

「何言っているの? あなただってすでに七匹釣っていたじゃない」


 私は山魚を釣り上げ、それを魚籠の中に放した。私はこれで五匹。ノアと同じ数だ。フィーは自分が言いたい事はそうじゃない。と、言いたげだったが、軽く睨む事でその先を言わせなかった。フィーは短時間で、それだけ釣れた私の腕前のことを褒めたのだ。

 しかも、ノアに合わせたな。と、その目が呆れたように見ていた。


 実は子供の頃、彼に釣りを教えたのは私だったりする。なぜならその頃、私は侍女の嫌がらせによって(いまはその侍女は退職させられていないけど)まともな食事にありつけない時もあり、育ち盛りで食欲旺盛なお腹を満たす為だけに魚を釣っていた。

 その腕前は落ちていなかったらしい。面白いように魚が釣れるのをノアが隣で感心してみていた。


「おなかすいた~」

「じゃあ、この魚を焼いて食べよう」

「えっ? これってたべられるの?」


 六歳児の素朴な疑問だった。ノアの中では釣った魚を食べるなんて考えてもいなかったようだ。ノアは屋敷では調理人に用意された食事しか口にした事はない。でも、それはノアだけではなくて他の貴族の子女らにも言える事だ。直接魚を取るなんて発想すらない。


 フィーは、優しく諭すように言った。


「ノア。おまえが今まで口にしてきた料理は、こうして生きていた魚を、屋敷の料理人が仕入れて美味しく調理したものが食卓に上がってきたんだ。食べれない事はないよ」

「わかった。でもどうやってやくの? ここにはかまどもなにもないのに」

「石で丸く円を組んでその中で火を起こすんだよ。その周辺に串を刺した魚を並べて焼くのさ」

「へぇ」

「さあ、その為の石を探そう」

「うん」


 ノアはフィーの言うことに素直に従って石を探し始めた。私も手伝おうとすると、フィーから木の枝を探して欲しいと頼まれた。ノアは川原から自分の両手でやっとつかめるほどの大きな石を探し出すと、同じ作業をしていたフィーと一緒に集めた石で円陣を組む様に石を並べ始める。

 それを遠目に見ながら木の枝を拾っていた私は、まるで親子みたい。と、思っていた。



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