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◇保留で良いですよね?

作者より懺悔です。


ノアの妹の名前を変更しました。

今までクラーラとしておりましたが、侍女頭の名前も「クラーラ」になっておりました。

紛らわしいと思うので、妹の名前を「ラウラ」に変更致します。



「ただ今、帰りました。お母さま」

「お帰りなさい。ノア」


 久しぶりに寄宿学校から帰って来たノアは十三歳となり、すっかりお兄さんになっていた。ノアが八歳になった頃、王都に陛下念願の王立の寄宿学校が出来た。王族や貴族の子らの教育の為に建てられた学校だ。


 その寄宿学校は六歳から入学で一年生となる。ノアはすでに八歳となっていたので三年生からの入学となった。可愛いノアの親元離れての寄宿学校入り。


 色々不安はあったけれど、入学して三年ほどは週末ごとに屋敷に帰ってくるのも許可されていたし、本人の視野を広げる為にも送り出した。ノアも通い出して一年ほどは毎週末、屋敷に帰って来ていたのに段々と帰って来なくなった。心配していたら生徒会に入って仲の良い友人達ができて、楽しい寄宿生活を送っているらしかった。


今では長期休暇以外は帰って来なくなっていたので寂しい限りだ。寄宿学校に行くのはあんなに嫌だって泣いていた子がこんなにも立派になって……。


 月日の経つのは早いものだと思う。感慨深く思っているとノアに聞かれた。


「お母さま。ラウラは?」

「いま侍女に部屋に迎えに行かせているわ。あの子ったらノアの帰りが待ち遠しくて昨日からそわそわしていたのよ」


 ラウラとはノアが八歳になった時に、夫のフィオンと私の間に生まれた女の子だ。フィオンに似た赤みがかった髪に、焦げ茶色した瞳の子でフィオンによく似ている。ノアはラウラの誕生を大変喜んでくれた。


「ぼくのいもうとにうまれてきてくれてありがとう。ラウラ」


 そう言ってノアは泣いて喜んでくれた。生まれたばかりの子にラウラと名付けたのはノアだ。愛称はララ。ノアはララのいつも側にいた。


「ぼくがきみのおにいちゃんだよ」


と、まだ話せない赤子のラウラに話しかけていた。ラウラもノアに機嫌良く笑いかけていた。ノアはラウラが心配だと寄宿学校から毎週末に、妹の顔を見に帰って来ているようなものだった。


ラウラがそんな兄を好きになるのは当然で、初めて言葉を話したのは「パパ」でも「ママ」でもなくて「ニーニ」で、歩けるようになるとノアの後をついて回り、五歳になった今では「ララはね、おにいしゃまのおよめしゃんになる」と、言ってフィオンにショックを与えていた。


フィオンとしては愛娘に「おおきくなったらパパのおよめさんになる」と、言わせたかったみたいだ。

そのラウラは、今日は大好きな兄のノアが帰って来たと言うのに玄関に顔を見せない。迎えに行かせた侍女も戻って来ないし、どうしたのかしら? と、思っていると「わあああっ」と、火が付いたように大きな泣き声が上がった。庭の方からだ。ラウラの声に違いなかった。


「ララ?!」

「ララ!」


 ノアと顔を見合わせ声のした方に向かうと、大きなマテバシイ木の下でルチアを迎えに行かせた侍女が、「奥さま」と、声をかけてきた。


「ラウラさまが……」


木の上でラウラが泣きながら木にしがみついている。見たところラウラはどうやら木登りをしていて下りられなくなったようだ。側にはカラスの巣があって親ガラスがガーガーがなり立てている。


「おかあしゃ……ま……。おに……いしゃ……」

「ララ。待っていなさい。今、お母さまが助けてあげる」


 泣いているラウラに声をかけ枝に手を掛けたら、一匹のカラスが飛んできて目の前を遮る。どうもカラス達は子育て中でこちらを警戒しているようだ。


「どうしましょう。ララが……」

「お母さま。僕が行きます」

「ノア?」

「お母さま。ここは僕に任せて下さい」


 私と並んだノアは、身長が伸びて私と肩の位置が同じだった。彼が木登りを始めるとカラスはガーガー鳴いて追い払おうとする。ノアがラウラに近づくのを妨害するかのように手や肩を突っついて来ようとした。


「ノア……!」


 危ない! 心の中で呟き、目を瞑りかけた時だった。黒い物体が飛んできたと思ったらノアを攻撃していたカラスに体当たりした。


「ネグロ三世っ」


 ネグロとは、以前、夫のフィオンが手なずけたカラスのことだ。ネグロは寿命が尽きて亡くなっていた。今はネグロの孫が後を継いでいる。

 ネグロ三世は、仲間のカラスにカアカアと語りかけた。するとノアを攻撃していたカラスは大人しくなった。そのおかげでノアはラウラの側に近づくことに成功した。ネグロ三世は、私達がカラス達の巣に手をかけるような者ではないと、仲間に伝えてくれたような気がした。


「ララ。もう大丈夫だからね。そこで大人しく待っていてね。いま助けてあげる」

「……おにいしゃ……ま」


 ノアはラウラに言い聞かせるように言うと、慎重に枝を渡った。木の枝は堅いのでそう簡単に折れる事は無いと思うが、ラウラが腰掛けている枝は細かった。ノアが登っていく姿を見ているだけでもハラハラする。


「ララ。こちらにおいで。しっかり僕に捕まって」

「うん」


 無事にノアはラウラの側までたどり着き、手を伸ばした彼女を抱える。枝は二人分の重みがかかって震えたけれど、ノアは慎重に枝に足を乗せ、ゆっくりと木を下り始めた。

 私は両手を組んで二人を見守り続けた。思わず目を瞑りたくなるような部分もあったけれど、ノアを信じ続けた。

 長くも感じられる時間が過ぎて、二人がマテバシイの木から下りてきた。その後を見守るかのようにネグロ三世が付いてきた。


「ララ」

「おかあしゃまぁ」


 ラウラは真っ直ぐに私の元へ駆けてきて飛びついてくる。彼女のお転婆な所は私に似たのは間違いなかった。その娘の頭を撫でてやりながら「お礼を言ったのかしら?」と、促すと、ラウラはノアの方を振り返って言った。


「おにいちゃま、ありがとう」


「ララ。もう一人であんなに高いところに登っては駄目だよ」

「おにいしゃま、おこってるの?」


 普段はラウラに甘い顔をするノアも、この時ばかりはきつい言い方になっていた。


「怒ってないよ。心配しているんだよ」

「ごめんなしゃい。おにいしゃま。ララのこと、きらいにならないで」

「謝るのは僕ではないでしょう? きみは誰に迷惑をかけた?」


 身を屈めてラウラを促すノアは、彼女の良き兄の顔をしていた。ラウラはしばらく考えていたが、自分を心配そうに見守っていた侍女や、私と目が合い、謝ってきた。


「ごめんなしゃーい。エレン。ごめんなしゃい。おかあしゃま」


 泣きそうになりながらラウラが謝る。エレンとは侍女の名前だ。ノアはそんな妹の頭をよしよしと撫でていた。


「良い子だ。よく出来ました。ララ」

「おにいしゃま」


 私にしがみついていたラウラは、「おにいしゃま、しゅき」と、私から離れてノアに抱きつく。それにはちょっと寂しいような気もしたけど、娘が母親よりも兄の方が好きなのは分かっている。仕方ないよね。


「おにいしゃま、おかえりなしゃーい」

「ただいま、ララ」


 私の二人の天使達が抱擁し合う。ノアはどんどん大人へと近づいていく。年の離れた妹を可愛がるだけではなくて諭すことまでやってのけた。彼の成長が著しい。彼の成長にはもの寂しい感じはするが、私もそろそろ子離れする時期を迎えたのかも知れない。

子供達の仲の良さを羨みながら、そのような事を考えていた。


「ララはどうしてあんな高い所にいたの?」


 ノアの問いに、ラウラは悲しそうな顔をした。それは私も思った。ラウラはお転婆だけど、意味も無く一人で木登りなんかはしない。カラスが子育て中の木に近寄るなんて危ないとラウラは知っているはずなのだ。何か理由があったとしか思えなかった。


「ララのね、たからものをカラスさんもっていってしまったの。それをかえしてもらいたかったの」

「宝物って?」

「おにいしゃまにもらったビーズのブローチよ」

「そうだったの」


 ノアもそうかと言った。ラウラは昨年の誕生日に、ノアからビーズで作ったブローチをプレゼントにもらっていた。そのブローチは、ノアがお小遣いを貯めて彼女に買ったものだ。がっかりした様子のラウラに、皆が言葉も出ないでいると、「くわっ」と、ネグロ三世が鳴いてひょこひょこ歩いてラウラの前に出た。


「三世?」


 ネグロが嘴に何か咥えていた。


「あ、ララのブローチ」

「さすがだな。ネグロ三世」

「凄いわ。いつの間に?」


 ラウラが掌を差し出すと、その中にネグロ三世はブローチを落とした。それを見てノアや私は感心した。


「ネグロ、だあーいしゅき」


 ラウラはネグロを抱き上げて頬ずりする。ネグロ三世はされるがままになっていた。何だか嬉しそうだ。それを見てノアがふて腐れたように言う。


「酷いや、三世。一番、美味しいところを持って行かれた」

「ノア?」

「だって、ララが大好きって言った……」


 ぼやくノアを抱きしめてあげたら「お母さま」と、甘えてきた。まだ可愛いノアは健在のようだ。ガーラント家では子離れと、親離れはしばらく延期、いや、保留の模様です。



3/27(金)18時から転生恋愛ジャンルで新作投稿予定です。

「摂政姫の転生~転生したら政敵だった義弟が夫になりました!~」宜しくお願い致します。


 中身をざっとご紹介すると、ヒロインのレナータは前世の記憶持ち。前世で摂政姫と呼ばれていた彼女は、政敵に負けて命を落とした。記憶を取り戻してびっくり。その政敵が現在国王陛下。

 その陛下との謁見の場でお気に入りとなってしまった彼女は、王太子の許婚に指名され、それからずっと王太子妃教育受けてきたのに婚約破棄。特に好きでもない相手だったから、どうでも良いけどと開き直っていたら「責任を取る」と、陛下が求婚してきた。


 王太子妃から王妃へ。これは復讐物語ではないのだけれど、前世の記憶を持つだけに陛下を信用しきれないヒロインと、構いたがりの陛下のお語。二人の年の差26歳。


 でも陛下には何か秘密がありそうで?


   興味が引かれたらどうぞご覧下さい。

  

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― 新着の感想 ―
[一言] なんだか、可愛かったノア君がすっかりお兄ちゃんになってー。あっという間に大きくなった。。。( ̄ー ̄)すっかりこのお話の中にのめりこんでました。とてもほっこりして良かったです。
[一言] 天使なノアに癒される話でしたねー。 ララがノアの事を好きなまま成長しない事を祈りつつ…(笑) ほら、それこそ血が繋がってませんし…ね?(笑) 良作有り難う御座いました!
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