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かがみ

作者: 井伊紀文

 かがみよかがみ

 世界で一番美しいのは誰

 それはあなたでございます

 

 その答えを聞きたくて

 目を広げたり 

 まつげを伸ばしたり

 うさぎの耳をつけたりしたがる

 不細工な自分を隠すために

 二重三重の厚化粧をしたがる


 友よ

 しばし素のままの自分を鏡に映せ

 見えるのは不細工なすっぴん

 見えるのはヘンテコな顔

 たったそれだけ

 とは言えないじゃないか


 何年も離れぬ付き合いをしてきた

 醜い顔への温かい何か

 生まれるひとさじの愛情

 それを隠して

 上品な仮面に頼るのは

 なんとも情けない

 

 顔を変えることは

 それまでの自分と

 これからの自分が

 離れ離れになってしまうことだ


 かがみよかがみ

 世界で一番美しいのはだれ

 やっぱりいいや

 世界で一番でなくても

 いちばん人間らしい

 自然のままの顔があれば

 

 

 

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