女神様の宝石箱43
本来の悪役令嬢はこのクラスでの派閥をノア王子と二分していた。
元々父や母と交流がある貴族の子息令嬢方や対王政派の貴族を上手い事自身の派閥に取り込んでいたのだ。
しかし、今現在それはない。
このクラスに派閥がないからだ。
その代わりに、一番身分の高いノア王子の言葉にクラスはある程度影響されている。
その最もたるや、ヒロイン事リリア・ヒロリンだろう。
彼女はあの日の洗礼で癒しの力がある事が分かった。
それからと言うもの、ノア王子が何時も傍らに居る。
身分は伯爵令嬢。
ノア王子は王太子でなく第二王子。
伯爵令嬢なら王子妃になってもなんら遜色はない。
だから皆リリアがそのうちノア王子と婚約して次期王子妃になるものと思っている。
そんなリリアは事あるごとに私達をチラチラと見ている。
何か物言いたげなその視線は、最初の頃は『まさか彼女も転生者で悪役令嬢仕事しろよ』とか言いたいのかとも思っていたが、どうやら違うらしい。
現在魔力の特訓の為に握られたアルの手。
乱れそうになる私の気を優しく包んでくれる。
「どうかしたの?」
そう訪ねて来るアルに
「いえ……何でも……エイミー大丈夫かな?と思って」
差し障りない返事をしておく。
「エイミーなら大丈夫だろう。そんなに心配する事はないよ」
アルはそう言って握られた手の指を絡めて来る。
ドキリとしてアルを見れば
「それよりジュリアが何時もノアを見ている事の方が気になるな」
不適な笑みでそう言って来た。
って、「ノア」と呼び捨てですか?
一応この国の王子ですが。
「やっぱり王子妃に未練があるとか?」
声も凄く不穏。
これって何特?
滅茶苦茶なる胸がキュンキキュンしちゃう。
冷ややかな眼差しで罵られる。
それも眼鏡男子、尚且つ私好みのイケメンに。
それも嫉妬してます的な台詞で真っ直ぐに見つめられて……。
あぁ、同人誌描きたい。
そんなスイッチが入る位萌える。
「ジュリアの気持ちが知りたい。本当に私が好きなのか……ジュリアからキスして証明して欲しい」
そう言って見つめられても……。
気付けば皆が注目している。
ノア王子もリリアも見ている。
まるで違う意味での公開処刑だよね。
「皆が見ているわ」
滅茶苦茶恥ずかしい。
本当に精神的に死にそう。
「俺は気にならない」
そう言って私を見つめていたアルは少し困ったように微笑んだ。
「そんな風に可愛い反応されると、困ってしまうな」
私の唇を撫でたアルの親指を呆然と見ていた。
その手は私の腰へと回り、そっと私を抱き寄せる。
アルに包まれた私はトクトクと早鐘のようになる心音を聞いていた。
重なりあうように響く心音。
もう片方の鼓動がアルの物だと分かると、アルもドキドキしているんだと言う事に気付く。
まるで「愛しているよ」と言われているような感覚になり不思議と幸福感に包まれていた。
「私も……」そっとアルの胸の中で呟く。
そんな私達とは対照的に、教室の中はシーンと静まりかえっていた。
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