女神様の宝石箱42
本日私達は、アルとエイミーと何故か晴れた日は馬で行っているはずのお兄様の4人で馬車へと乗り込んだ。
『晴れた日は馬で行くのに何故馬車に乗っているの?』
そう問たいが、何せこの兄は原作の甘々お兄様キャラからはかけ離れた腹黒八方美人兄なのだ。
下手な事を言って変なフラグが立っても困る。
故に静かに兄を見ていた。
そして、席はアルと私。
向かいに兄とエイミー。
何となく二人が並んでいる所を見て初めて気付いた。
エイミーの髪の色が私達兄妹と同じだと言う事に。
今まで色々な人に会ったが同じ色の人にはなかなか会えなかった。結構珍しい色なのだと思っていたのに、案外そうじゃなかったのか?と思う。
それとも本当に珍しい色だけど、偶然同じ色だっただけかもしれないが。
そう思うと、エイミーは我が家の縁者という事にして入学させられるかもしれない。
そんな事を考えていると仄かに手が温かくなる。
自然と視線を下へと向けると、アルの手が私の手に添えられていた。
あぁ……これは例の魔力操作の特訓の一種だろう……。
そう思うと溜め息が出てしまいそうになる。
既に私は本日の拷問が始まっていたのか……と頭痛さえしてくる始末。
これを回避する為には、そう思い私は重い口を開いた。
「お兄様。何故このように座るのですか?普通男同士、女同士とかになるのでわ?」
決してアルの隣が嫌な訳ではない。
ないけど。
「ジュリアとアル殿は婚約者同士なのだから良いだろう?」
当たり前のようにそう言う兄だが
「お兄様とエイミーが隣り合う意味が分かりませんわ」
そう指摘してやる。
兄は思いっきり溜め息を吐いた。
「ジュリアがエイミーも共に学園へ行きたいと我が儘を言うから、今日は父の代わりに私が学園側と編入の話をするのだろう」
「そうね」
「つまり、私は今日はエイミーの保護者と言う事になる」
然も当たり前と言う風にそう言われて見れば目から鱗である。
「成る程。納得ですわ」
それに、エイミーはこんな成りだが13歳だ。
つまり、兄から見たら保護の対象。
お子ちゃまだ。
これで色恋沙汰になったら間違いなく「ロリコン」と兄の事を罵ってしまうかもしれない。
エイミーは見た目を的には全然有りだけどね。
「お兄様。エイミーの事はくれぐれもお願い致しますわね」
真剣にそう言うと兄は心得たとばかりに笑顔を向ける。
何せ私は悪役令嬢。
どんなゲーム補正やら強制力やらが起きるか分からない。
今回エイミーを学園のお供に出来れば私が悪い事をしていないと言う証人にもなるのだ。
間違ってゲーム補正とかで良くある「やってもいないのに悪役令嬢に仕立てあげられた」事件を回避する為だ。
前世のそういう転生物に良くあった話だ。
そこで四六時中王家の間者に監視されていれば、私の濡れ衣だけは晴らせる。
全ては私の死亡フラグ撲滅作戦なのだ。
何せ、死亡フラグ撲滅作戦1号は失敗に終わっている。
つまり、アルだ。
何故か毎日精神的に死にそうな目に合う。
心の平穏も大切だと思うの。
「エイミーの事は心配いらない。私が責任持って入学させるから」
エリックはそう言うと妖しく笑んだ。
あの甘々お兄様はこういう人間だ。
一応今は味方だから大丈夫だろう。
そうして、私の学園生活は思っていたのと違う方向で進んで行く事になる。
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