女神様の宝石箱41
よく遠足などの前の晩、興奮して眠れなかったって聞くけど。
「ジュリア。起きて朝だよ」
何故か抱き起こされる私。
外からは爽やかな光と鳥の鳴き声。
そう。
私は完全に寝坊した。
それも、アルが寝ている隣で。
それと言うのもアルのあまりにもの近距離に私の心臓が飛び跳ね眠れなかったのが原因だ。
挙げ句の寝坊。
だって、暗闇にアルの体温を感じながら寝息を聞くなんて、もう私の中の妄想が止まらないよね。
寝坊より、萌え死にそうだったよ。
マジに。
「少しは俺の魔力を感じられたかな?」
悪戯っ子のようなアルの言葉に大人の余裕を感じてしまう。
何て罪深い人なのだろうか?
全ては貴方のせいなのに……。
「か……感じる……なんて……」
感じるとのフレーズに私の乙女オタクスイッチが再びオンになる。
何せ昨夜からの萌えスイッチ全開モードの余韻のせいか、萌えスイッチのハードルが下がってしまったのは決して私だけのせいではない。
これって所謂『朝チュンシーン』?
恋人同士が禁断の夜を共にして朝を迎える……。
これはもう萌えだよね。
コミケ辺りで二次創作作れるレベルだよね。
題して『あの日の夜』とか『あの時の二人』とか。
一瞬別次元へ移行しそうになる自身の頭にブレーキをかける。
……って、ないから。
大体ほら、アルはアレがアレだから……って何私は言っているの。
恥ずかしいから……。
一人悶えていると、隣から笑い声が聞こえて現実に引き戻されてしまった。
「ジュリアの百面相は面白いね。何を想像していたんだい?」
アルは私の方へと顔を寄せて来る。
「目覚めのキスは頬へ」
そう言ってチュッと頬にアルの唇が触れる。
朝っぱらからイケメンボイスで悩殺ですか?
それに何故いちいち宣言してからするのか?
変な期待で心臓がドキドキ言うよ。
「うん。少しは俺の魔力の匂いが移ったようだね。ジュリアの魔力とも相性が良いようだから嬉しいな」
そう言ってぺろりと首筋を舐めて来る。
「なっなななな……」
アルの予想外な行動に思わず思考が現実から逃避行する。
『魔力の相性』それって良く聞く言葉だよね。
まるで王道恋愛ファンタジーのような台詞に再び私の頭はトリップしてしまう。
魔力の相性が良いからお互いに意識したりして、それでヒロインが滅茶苦茶ハイスペックなヒーローと結ばれたりしてさ……乙女漫画の王道だよね。
思わず妄想してしまい『ご馳走さまです』と心の中で拝んでしまう。
そんな私の鼻をアルが軽くちょんと人差し指で触る。
何がおきた?
そう思いアルを凝視していると
「やっと此方を見たね。今日からは俺がジュリアに魔力操作を教えるからそのつもりで」
そう言いながらこの上なく楽しそうに笑うアル。
そして、昨夜の事を反芻してしまう。
まさか……まさかダンスの時の再来のようにベッタリとかないよね。
あまりにもの事実に現実逃避したくなってしまった。
お読み頂きありがとうございます。
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