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女神様の宝石箱38

「あの……お嬢様」

「エイミー。私のことは名前で呼んでくれて良いわ」

これからエイミーを懐柔(かいじゅう)するのに名前呼びは大切だからね。

「……ジュリア様」

エイミーは言いにくそうに私の名前を呼ぶ。

まぁ最初はこんなものかしら。


「先程、淑女のいろはと申されましたが……」

何処となくモジモジしながらそう言うエイミー。

「そうよ。私自慢じゃないけど友達いないから社交界とか、そういった場所でのマナーとか分からないの。エイミーー真面目そうだから私に色々教えてくれない?」

秘技、上目遣いを発動してお願いしてみる。

「あっ……その……淑女のいろはとは、つまり社交の方で宜しいのでしょうか?」

エイミー、 未だに淑女のいろはにこだわっていたのか……。

「勿論そうですが。他に何か淑女のいろはと言うものがあるのかしら?」

私は再びお願いポーズをとってみる。

だって、一応私は馬鹿な公爵令嬢なのだから、分からなくっても平気。

「いえ……間違いないでございます。淑女のいろはとはつまり社交です。その一歩は間違いなくデビュタントの成功ですわ」

エイミーは何かを誤魔化すように私に同意する。

そのせいか言葉もエイミーらしくない。

これってはぐらかされていない?

まぁ、いいけど。

「来週行われる王家主催の夜会は盛大なデビュタント披露の場です。それと言いますのも、自家で夜会を開くのが大変な貴族が多く。王家主催の夜会はその救済措置のようなものですので。正直お嬢……コホン。ジュリア様でしたらご自宅でデビュタントしても大丈夫だと思いますが、今回は留学していた王子様方も出席されるとの事。是非出席されてお嬢……コホン。ジュリア様の晴れ姿をお見せになる事をお奨めしますわ」

確かにね。

公爵家主催で私の御披露目をするのは良いけど、アルも居るからあまり大々的にしたくないし、あの王子達の動向も気になるし。


でも、一番はヒロインの動向よね。


それに、間違って我が家で夜会なんて開いたら、アルの正体について他の貴族からのかっこうのネタにされかねない。

そのせいで変なフラグも立てなくないし、ここは我が家の夜会回避の為にも頑張らねば。

「良家の令嬢の場合、王家でデビュタントした後で再度御披露目する事もありますが」

「それはいらない。私、静かに暮らしたいの」

エイミーは怪訝そうに私を見る。

「王子様方とも出来ればあまり仲良くしたくないわ」

記憶が戻る前の私なら決して言わないだろう言葉。

だって、私の相手は王子くらいしか相手にならないと思っていたくらいなのだが。

「それに……ね。もう私の伴侶は決まっているし」

つまり、アルと結婚するからとはっきり宣言してやる。

それによってエイミーとの距離を近付けようと思うんだ。

だって、エイミーは王家の間者なのだから、王太子妃や王子妃狙いしているなんて思われたくない。

「ジュ……ジュリア様は本気であの者と一緒になられるおつもりですか?」

これ、本来の私なら絶対解雇されるだろう言葉だ。

でも、敢えてその言葉を出したと思う。

「そうよ。だって、私のような者には王子の伴侶などと大それた役が勤まるはずございませんわ」

そう言って私は苦笑いしてみせる。

「それに、先日お会いしましたが、どちらの王子も私とはお近づきになりたくない様子」

そうなのだ。

エドワード王子はクラスが違うから仕方がないけど、ノア王子は同じクラスなのに私達のことをまるっと無視している。

まぁ、学園と言っても社交の為の場所だから殆どの時間を座学に当てているし、王子達は一番の前の端っこを占拠している。

対して私は教室の一番後ろを占拠している。

故に接触しないと言えばそれまでだが。


まぁ、もう少しすると、ヒロインのイベント回収のような授業とか行事があるけど。

それは来月以降の話だ。

「ねぇ、エイミー。もし良ければ途中編入で私と一緒に学園へ通ってはくれない?女だけの授業もあるし……私、気のせいかハブられているようなのよ」

気のせいではない。

それと言うのもノア王子ルートに入った為に、ノア王子がクラスの生徒達に変な威圧をかけているのだ。

故に私とアルは浮いている。

勿論アルは全然気にする風もないので、いいかもだけど。

私はちょっと気になる。

何で転生した先でクラス皆から総スカンされねばならぬのか?


「分かりましたわ。では、私もジュリア様と同じ学園へ通います」

エイミーはニコリと微笑む。

でも、その瞳に冷めた温度を感じたのは気のせいだろうか……。


お読み頂きありがとうございます。

また読んで頂けたら幸いです。

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