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女神様の宝石箱34

引き続きエドワード視点です。

入学式の最中イチャイチャしているカップルがいた。

お互いの左薬指にペアリングを着けた二人に思わず目が行く。


「あれは……」

ボソリと呟けば

「エドワード殿下どうかされましたか?」

取り巻きの一人のエリックが私に耳打ちする。

「あそこの二人なのだが」

大女にイケメン風男子が何故か入学式でイチャイチャしているのだ。

そんな二人に目をやればエリックが申し訳なさそうな顔をする。

「殿下すみません。あれは私の妹とその婚約者です」

妹……つまり、両陛下が縁談を勧めて来ているジュリア嬢か?

あの時も大概に太いと思ったものだが、数年であんなに年輪が増すものか?

正直人体の神秘に繋がるものを感じた。

其ほどにジュリア嬢は横に育っているのだ。

それにしても、婚約者?

「エリックの妹に婚約者がいるとは初耳だな」

そう言えば間者から一月前に「ジュリア嬢、婚約者候補から離脱」「愛に生きた模様」「ナイチンゲール現象かと」「禁断の恋です」と言う意味不明な報告が上がっていたな。

「一月程前に、怪我をした彼を妹が助けたのですが、どうやら(アルが看病していたジュリアに)一目惚れをしたらしく……誠に申し訳ない次第で……」

エリックは歯切れ悪くそう言うとバツが悪いように下を向いた。

「両陛下からジュリア嬢との縁談を勧められているんだ。折角エリックと兄弟になれると楽しみにしていたのにな」

嘘です。

全然そんな事思ってもいない。

しかし、私のその言葉にエリックは複雑な顔になる。

「妹は婚約者と既に床を共にしているので……殿下……申し訳ございません」

一瞬息が詰まった。

何を言われたのか理解するのに大分時間を(よう)した。

不安そうに見つめるエリックに気付き

「何、気にするな。正直私はエリックの妹は好みではなかったのだから、何も思う所はないよ。それに看病していたのなら(変な母性愛で高慢ちきなジュリアが)恋に落ちるのは致し方ないだろう」

そう言ってやればどこか安堵したような顔になるエリックに私も溜飲(りゅういん)が下がる。


大体私よりもその甲斐性なしな優男の方が良いと思う所が馬鹿だな。

私なら左団扇な生活が約束されるし、女の幸せだって十分に味わわせてやれるものを……。

そんな自分の思考に戸惑いが生まれる。

何を考えているのだ?

あんな大女の相手を自分がするとでも?

取り敢えず、あの大樽のような女を相手にギャフン作戦を遂行せずにすんだ事に安堵する事にした。


どうせギャフンと言わせて捨てるだけの女だったのだし、ギャフンと言わせる為だけにあの不出来な娘に愛を囁くのも耐え難い。


その時はそう思った。



が、帰りの馬車待ち部屋へと向かう途中例の二人に遭遇。

道端でイチャイチャする二人。

あの大女の図太い指を一本だけ握りしめ、あの優男が憂い気にジュリアを見つめていた。

まぁ、あの太さなのだから指も太いのだろう。

故の指一本だけ繋ぎか?バカップル丸出しのその光景に何故かイラっと来てしまい軽く咳払いをする。


何故か目の合ったジュリアに冷めた目を向けられ、更に私はカチンと来た。


だから、今まで決して誰にも見せた事のないような辛辣な態度と言葉を二人に投げ付けていたのだ。


『もうお前の狙っている王太子妃の席はないんだぞ』と言う意味合いを込めて嫌みを言ってみるが、ジュリアは何処吹く風宜しく嫌みで返して来る始末。


つまり何か?

彼氏が出来たから強気になっているのか?

馬鹿かこの女。

お前は私に捨てられるだけの女のくせに……。


そう思い嫌みの応酬(おうしゅう)をしていればあの甲斐性なし(あくまでもエドワード視点で)の優男が間に入って来た。


「二人だけの世界に入らないでくれる?」

確実に威圧を掛けた顔で。

お読み頂きありがとうございます。

少し長かったので一旦切りますが、続きは本日中に投稿致します。

また読んで頂けたら幸いです。

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