女神様の宝石箱33
エドワード王子視点のお話になります。
宜しくお願いします。
私はエドワード・マイナー。
この国の第一王子にして王太子でもある。
父から再三自身に見合う令嬢を婚約者に据えようと言う面倒な命令が下った。
正直言えば女なんて一つの道具としか思えないし、自身の後ろ楯に有益な女なら誰でも同じだと思っていた。
そんな私は15歳の時に、一番自身の後ろ楯に有利になるだろう公爵令嬢と、とある貴族の園遊会でたまたま一緒になった。
そう、たまたまだ。
決して彼女の悪い噂が気になった訳でもないし、相手を観察しやすいように変装していた訳でもない、下手に私が彼女の事を好きだと周りに勘違いが生まれても困るからである。
最後に見たのは確か彼女が3歳の時だっただろうか、それはもう幼いながらに天使を彷彿させる程に可愛らしい姿だった。
しかし、巷の噂では「デブ令嬢」「不細工令嬢」「我儘令嬢」「扱い注意人物」とか言われている。
あの可愛らしかった令嬢がデブで不細工とは想像さえ出来ない。
だから、あの噂は私に興味を持たせない為のデタラメだと思っていたのだ。
しかし、あの時の衝撃と言ったらないだろう。
私とバレないように変装して行って本当に良かったと思う。
その日は取り巻き達と優雅に話をしながら会を楽しんでいた。
勿論取り巻き連中には、今回はお忍びだから変装していると話している。
「お前の妹君はどういった女だい?」
そして、王太子でもある私の取り巻きには、それなりの人材と身分が求められる。
勿論 件の令嬢の兄も私の取り巻きの一人だ。
「はいエドワード殿下。妹は少しポッチャリとした、とても貴族的な気性の女です。見ていてこいつ馬鹿だな~と思うところが可愛いですかね?」
一瞬最後の語尾が疑問符の取り巻きに気付きもせず、私は昔の彼女に更なる妄想を重ねていた。
あの天使のような娘が馬鹿可愛い……。
そう言うのもありかな?
あの妖精のような女の子ならありかも……。
そう思っていると、私の後ろから声がして振り返った私は確実に時間が止まる思いをした。
最後に彼女を見たのは確か3歳の時か……そんな事を考えていた時だったからだ。
「あらお兄様。そちらの方はどなたかしら?」
そう言って現れたのは、私の取り巻きの一人でもあるエリックの妹ジュリア嬢だ。
『妹は少しポッチャリとした』
見たところデブッとしていないか?
少しの域を遥かに越えていると思うが。
そして、私の視界の殆どを遮っているようにさえ思えてしまう。
「わたくしも社交程度にある程度のお家の令息方は把握しておりますが、見たところお見受けしない方がいるようですが、どちらのご令息かしら?」
『とても貴族的な気性の女です』
如何にも上から目線な女だな。
矜持が高いのは良いが、高すぎるのはあまり好みではない。
「まぁ、わたくしに近付く為にお兄様に取り入ろうとかお考えかもしれませんが、それは無駄ですわ。何故ならわたくし将来は王太子妃ですので。オホホホホ………………」
『見ていてこいつ馬鹿だな~と思うところが可愛いですかね?』
高笑いする彼女を見ながら『馬鹿もここまで来るとある意味尊敬するわ』と冷めた目になってしまった。
夢は脆くも消え去った。
そして、この瞬間に私の中の婚約者リストから彼女の名前は削除された。
のにだ、やたらと両陛下は私に彼女を進めて来る。
そんな毎日に辟易した私は帝国への留学を決意。
つい先日まで留学していたのだ。(つまり婚約から逃げたのだ)
単身留学した(取り巻きはノーカン)のに何故か弟も付いて来たが、大方私の代わりに婚約者を勧められたのだろう。
確かジュリア嬢は弟と同じ歳だったはずだからな。
兎に角、見た目は大事だ。
それをモットーに色々な女性と接してみたが、あのトラウマジュリア嬢の事もあり、候補を絞ると変装して素行調査に勤しんだ。
そのかいあってか、親しくなった令嬢方はことごとく却下された。
私によって。
つまり、私は彼女達にしたら『服を着たブランド』なのだそうだ。
私個人を慕っている訳でも何でもない。
愛を囁く裏で打算的な女達の顔がちらつく。
気付けばプレイボーイとか高嶺の花的存在にされ、なかなか婚約者を決めない私に業を煮やした父王に無理矢理留学先から呼び戻されたのだ。
「遊ぶのも大概にして将来の伴侶を選べ、妃教育にも時間が掛かるのだぞ」
そう言われた私は短かった自由を手放した。
そして、何故か再びジュリア嬢を勧められる毎日。
噂に聞けば最近慈善活動に勤しんでいるとの事。
あの高飛車な女が?
もうこれは打算的だろう。
王太子妃狙いもここまで来ると笑えるな。
まぁ、あの馬鹿女をその気にさせてギャフンと言わせるのも一興か。
そう思っていたのに……。
お読み頂きありがとうございます。
エドワード王子視点後2話程続きます。
その後はリリアさんの成人の儀式イベント回収の話になります。
また読んで頂けたら幸いです。




