女神様の宝石箱32
入学当日の夜。
ウエンズ公爵家の晩餐では、上機嫌の父がアルに今日の感想を聞いていた。
「どうでしたかな、我が国の学舎は」
この父はアルの正体を隠す気があるのかしら?
『我が国の』って聞いたよ。
「学舎事態はとても良い造りになっていると思います」
アルの言葉に父は私の方を見る。
『説明せよ』
そう目で訴えて来る。
私は深い溜め息をつくと今日の出来事を話した。
つまり、ノア王子が一女生徒と盛大に遅刻をして来た事とか。
エドワード王子が私達二人に難癖付けて来た事とか。
話す内に父の顔色が悪くなる。
そして「あの馬鹿王子共めが」と苦々しく呟く。
って、その馬鹿王子の取り巻きをお兄様がしているからね。
兄は乗馬の趣味が高じて晴れた日は馬で通っているからあの場にはいなかった。
それと言うのも学園には馬番付きの厩舎があるのだ。
だから、今日の帰りの時は遭遇しなかったので、今回の事はまったく知らない。
「あぁ。どちらの王子も人当たりは良いからね。その分 素は結構横柄だよ。しかし、何でまたジュリアにそれをばらしちゃうかな~?」
お兄様も大概良い性格しているけどね。
「何でも私が王太子妃か王子妃を狙っていると思われていたようです」
実際父は狙っていた。
「あぁ。あの二人は面食いだからね。女は馬鹿でも愛嬌があれば良いと言っている位だから。留学先でも見目の良い女ばかり侍らせていたな」
兄はエドワード王子の取り巻きの為に留学もついて行ったのだ。
ご苦労な事です。
「アル殿、どうか気を悪くしないで頂きたい。いずれ王子達には後でじっくりとその行いを後悔させて見せますので」
父は笑顔でアルにそう言った。
ひぇ~死亡フラグ的な発言やめてよ。
思いっきりドン引きしてしまうよ。
「私はこんな小さな国のささいな事には気にしませんので」
紳士スマイルでアルがそう言うと、お父様はほっとしたような顔になる。
ってか、こんな小さな国って言っているあたり既に風前の灯火だよこの国。
ってか、ちょっと待て。
こんな小さな国って言ったよね?
アルの国ってどんだけデカいの?
「アル。私もいつだってあんな王子達見限る準備はあるからね」
そう言って兄も微笑む。
貴方も怖いから。
流石悪役令嬢の家族。
本当に怖いわ……。
「その言葉だけで満足ですよ」
にこやかにそう言ったアルの副音声が聞こえて来そうに思えた。
「今はね」と。
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