女神様の宝石箱31
アル視点のお話になります。
宜しくお願い致します。
どうやらキスでなくてもカウントはするらしいと気付いたのは、叔父と再会した夜だった。
どういう原理かは分からないが、体の何処かが接触した状態で甘く囁いたりするとカウントするのだ。
特にダンスの特訓時は理由を付けてはジュリアに触れていた。
お陰で学園入学前に祝・1万回を越えたのだ。
その記念すべき夜にジュリアの部屋へと夜這いをかけに行けば、何故か女神様が笑顔で待っていた。
仁王立ちで。
「案外早く1万回になったのね」
いたずらっ子のような微笑みを称えて女神様は俺を見た。
「こんなに早く呪いが解けるのも少々シャクだから、私と更なる呪いの解除を掛けてみない?」
まさかのギャンブラー的な発言に俺の触手が反応する。
つまり、チップはこれよりも破格なものになるという事だ。
そう解釈した俺は女神様の次の言葉を待った。
「つまり、貴方の子の代から1万回の縛りを無くしても良いと言っているのよ。つまり、女の子しか生まれない呪いも解いても良いと言う事」
案の定女神様の出したチップは何て魅力的な条件なのだろうか?
自身の妹がその呪いのせいで行けず後家になっている現実が、俺の何かに火を着けた。
「その条件で乗ろう。で、更なる呪いの解除に必要な事は?」
多分二度とない好機だと思った。
自分の代でこんな馬鹿げた呪いに終止符が打てるのであれば、と。
「今の10倍」
女神様は得意気にそう断言した。
「ジュリアを10万回ときめかせればお前の代で呪いから解き放とう」
女神様のその言葉に疑問が生じる。
「ときめき?」
キスじゃなく?
「何か勘違いがあるようだが、我は最初からそう言っていた。まぁ、何事にもマンネリ化と言うものはあるからな。多分主の先祖が勝手にキスする事にしてしまったのだろう」
いや、ときめきなんて目に見えないものよりは、キスの方が物理的で分かりやすい。
しかし、話を煮詰めれば心の通ったキスとか、心のこもったキスとか、それに通じているようにさえ思うし、大抵の王族がカウントしなくなった原因がマンネリ化により、それではときめかないと言う事であれば納得だ。
決して心が離れた訳ではなく、キスに慣れてしまったのだ。
何て恐ろしいのだろうかマンネリ化。
つまりはキスをする事が空気と化したと言う事だろうか。
では、今のジュリアはどうだろう。
思わずジュリアを見てしまう。
「今のジュリアはそう言う意味では場馴れしていない上に、ときめきしやすい体質と見た。どうだ、悪い話ではなかろう?」
そう言われると何ともお得な買い物をしたような気分になってしまう。
これが、悪徳商法なら俺は良い鴨なのだろう。
「是非、その条件で」
そして、更なる呪いの解除を上乗せされた。
それも、当事者であるジュリアの許しもないままに。
兎に角、脱マンネリ化だ。
ダンスと同じで強弱をつけつつ飴と飴だ。
そうして、アルのアルによるジュリアキュンキュン作戦が繰り広げられる事になる。
まぁその結果、俺は更にジュリアにハマってしまうのだが。
俗に言うミイラ取りがミイラ……みたいなやつだな。
「ああ、そうそう、勘違いついでにお前の一族の呪いで訂正しておくが、1万回のノルマを果たさなかった者は男の子は持てないだけで、女の子は二人位は持てるからね」
どういう事だろう?
それって……
「はっきり言ってしまえば、男はそう言う生理現象で呪いの縛りを強制しているけど、女も相手に呪いのネックレスをはめれば呪いの解除が可能だ。但し、相手の男はお主の現状と同じになってしまうがな」
そう言ってクスリと笑った。
確かに、一族以外の人間にこの呪いの事実を知られるのはマズイ。
挙げ句呪いの解除に失敗して「自分は王族に不能にされた」などと風潮されるのもマズイ。
大体だ……立たない男をときめかせるって難しくないか?
それに、簡単にときめく男も想像出来ないぞ。
それって本当に男か?
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。




